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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【8章・正義は遺した】
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【8ー15】

【8ー15】


工事現場を突っ切ろうとする上井の行く手に闇に紛れて一人の少女が立っていた。

それが美樹だと気付いて上井は足を止めた。


「なぜ」

「スタンガンの有効範囲は電極から数センチだ」

「確かに押し当てた筈ですが」

「微妙にずらしたんだよ。あれは気絶したフリだ」


美樹の行動の意図が読み取れず、上井は怪訝に思う。


「ちょっと悩んだ。あんたは確かに犯罪者だけど、あんたの言葉は少し……そのなんて言うか、響いた」


けれど、それは違法行為を肯定する理由にはならない。誰かを殺した罪を帳消しに出来るものを美樹は知らない。

だから上井は撃たなければならない存在だというのも分かっている。


その正義(上井は否定したが)を語る言葉をこよりと重ねてしまう。

もしこの社会が孕んだ構造が、その構造の生んだ歪が、作り出してしまった罪に立ち向かうなら。その社会構造に基づいた正義では不可能なのだろうか。

社会はパーソナルな存在ではありえない。個人の何かを犠牲として社会は成り立つ。

だからその犠牲を受容できないのなら、犠牲を強いる社会に立ち向かうなら、社会構造から外れた、いやむしろ弾かれるものでしか立ち向かうしかない。


けれども、と美樹は否定する。


それはエゴイストの言い分でしかない。こよりの言葉はエゴでしかない。

こよりの言う人類の進化を人類が望み求めない限り、こよりのしている事はエゴだ。


けれども、と美樹は混迷する。


「……でもやっぱり、私はあんたを止めなきゃ」


美樹が動いた。

室内での接近戦は美樹にとっては不利だ。だが、近接格闘術に不安が残り銃撃戦か狙撃を得意とする美樹にとって屋外は好条件だった。


上井が積んであった資材に手を伸ばす。鉄パイプが数本宙に舞い上がった。上井の念動力の支配下に置かれた鉄パイプは糸に引かれたようにその身を漂わせる。

上井が手を振り下ろした。その動きに引かれるようにして、鉄パイプが美樹に向かって飛ぶ。縦に回転しながら勢いよく飛ぶ鉄パイプを美樹は撃ち抜いた。

弾かれたように撃ち抜かれた鉄パイプは軌道を変え地面に叩きつけられる。

美樹がそれを飛び越えてハンドガンを構え直す。引き金を引こうとした瞬間、美樹の手のハンドガンは大きく暴れた。

向けようとして居る方向とは違う方向に何か見えない力で引っ張られるように銃口が向けられる。


「テレキネシスか!」


鉄パイプが二本飛んできた。空を切るような音を立てて勢いよく向かってくるそれを美樹はギリギリで避ける。

上井が次々と鉄パイプを舞いあげ勢いよく飛ばしていく。

無数の飛び交う鉄パイプを撃ち落そうとするもハンドガンの向ける先は定まらない。


「止めろ上井!」

「この憎しみが誰かに理解できるものか!?」


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