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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【8章・正義は遺した】
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【8ー13】

【8ー13】


「この国は平等なんかじゃなく、力こそ全てな国になっちまってる。力にも色々ありまして、金、権力、地位、諸々。裁かれるべきものが裁かれなくなってるんでさぁ」


上井は続ける。


「立川総一郎が大手マスコミのスポンサー企業の株主であることも手伝って彼自身はメディアのバッシングさえ受けなかった。それどころか娘の立川裕子が国会議員にすらなっているんでさぁ。

悔しいことにね、マスコミの匙加減一つで国民はコロッと意見を変えちまう。そのマスコミの匙加減を左右するのは金、結局、金か権力か地位か何か。

それは時に法律でさえ届かぬ領域を作ってしまうんですよ」


ならそこに届くものは何だ。


「だからって暴力に走るのは違う」

「そうでしょうか。そりゃ何度も立川総一郎を批判する声を上げやした。けれどそれは捻り潰されちまう。

弱いもんは死ぬ気で喉仏に食らいつくしかないのがこの国の真実と申しましょうか」


現代日本の社会構造に批判の声を上げたなら、それを聞くものがいるだろうか。

それを受け止めるものがいるだろうか。


「誰もが批判的な眼を持ち自分自身で考えていれば当時の報道に疑問を持った筈で。立川裕子が当選するのもあり得ない筈で。でもね、誰もがそれをしないものなんです」

「それでも日本の法は、選挙制度はそうなっているんだよ」


民主主義は、多数決でしかない。絶対的な多数決だ。

少数意見は排除され、それはいつしか前倣え、右倣えの精神を生み出す。

けれど、その構造を選んだのも多数の誰かなのだ。

それを許容できないことを、それを恨むのを正しいのかどうか私には分からない。


「法が捌けないのなら自分で裁くしかないんでさ。おそらくこの事件も立川総一郎に同情的に報道されるでしょうよ。自分が正義だとは思いません、悪でしょうとも。けれどね、世間には比べ物にならない位の悪が蠢いているんです。その毒牙には毒牙でなければ敵わないんでさぁ」

「それは哀しみの連鎖を呼ぶだけだ」

「えぇ、その鎖は断ち切れません。腐り切ったこの世界じゃ救いなんてないんです。それだからこそ、自分で裁く。

だから行かせてくだせぇ」

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