【8ー5】
【8ー5】
何かが引っかかった。何だろう。大切な事を忘れている気がする。
「何か出かかってるのに出ない」
「そういう時は初心に帰れ、ですよ」
今朝送ってもらった捜査資料を開いてみる。
私が立川を発見したのは4時を10分位過ぎたころ。自室にうつ伏せに倒れており紐状の物による絞殺。身体には痣が幾つかあった。発見時には顔面が青紫に変色しており、心拍停止していた。
部屋に入る前まで大きな物音がし、犯人と争っていた可能性が高い。
だから瞬間移動を持っている梨花が犯人の可能性が高い。
「……違う、あれは死亡直後の状態じゃない」
「え?」
「窒息死の死亡直後はまだ心臓はかすかに動いてる」
「見落としたのでは」
「血色もあそこまで悪くはならない」
そうだよ、基本じゃないか。直前まで物音がしてたから勘違いしていたが、窒息死直後の状態にしては血色が悪過ぎる。
「なら、部屋の物音は何なんですか。立川裕子が生き返ったとでも?」
「絞殺した後に部屋を荒らすのなら、何かを探していた……いや、それにしては荒れ方がおかしい」
「となると、第三者と梨花が争った、でしょうか」
「第三者?」
立川の部屋に第三者がいた。しかも梨花と争うような人物が。
「いや、そうじゃない。私と梨花は直前までリビングで上井と話していた。私が梨花から目を離したのは数分だ」
その数分で殺害したにしては状態が古過ぎる。
梨花が部屋に瞬間移動した時には既に立川は殺害されており、その犯人と鉢合わせて争うことになった。
だが、その第三者は誰だ。何処から侵入した。
それに何故、梨花は助けを呼ばなかったのだ。呼べなかったのか。瞬間移動がバレるから。
もし犯人が……。
「梨花に会ってくる」