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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【7章・女帝は残された】
134/282

【7ー5】

【7ー5】


「んで、これを押したら戦績が保存出来るから」

「おー、すごーい」


梨花の携帯電話にオセロを入れてあげて、私は一息ついた。


「ってだから何でだよ!」

「うわぁ!」

「なんで私はお前とキャッキャッウフフな感じになってるんだよ!」


そういう相手じゃないだろ、と私は私を叱る。

なんか調子狂うなぁ。

私は自分の中の決心を固めて梨花に向き直る。


「あのなぁ……?」


梨花の顔色が悪いことに気付いた。蒼白に変わり呼吸が荒い。瞳孔が開き視点が定まっていない。

力なく唇を開き息が上手く吸えないのか胸ではなく口の中だけで呼吸をしているように見えた。


「おい、どうした!?」


私の声に梨花は反応しなかった。

癲癇か何かかと思ったが、私は気づく。梨花は魔法使いだ。ならこの症状は。


「魔法中毒か。おい聞こえてるか!? 薬は何処だ!?」


反応が無い。梨花の目が白黒し、口から泡を吹く。椅子から力なく崩れた。

私は制服の胸ポケットに入れていた手のひらサイズの緊急セットを取り出す。

中から小型の注射器を出すと梨花の腕を持ち上げて薬を投与した。

そうしてから、梨花の身体をなんとか持ち上げてソファまで運び寝かせた。


応急的に緩和剤を投与したから大丈夫だとは思うのだが。


「どうかしました?」


立川が顔を出した。私の大声に驚いたらしい。

少し悩んで私は答える。


「ああ、いえ。大丈夫です、なんでもありません」


ソファに寝ている梨花をちらっと見て立川は言う。


「先ほど言ったお客様が参りましたので」

「そうですか。分かりました」


立川がリビングを出ていくと遠くで来客者の声が聞こえた。こっそり陰から覗き込む。

背の高い男性だった。頬に何かの跡がある、火傷か何かだろうか。携帯電話のカメラで顔を撮影しておく。

見つかりそうになったので、私は思い切って顔を出した。


「ん? 立川さん、彼女は?」


男性が私に気付いた。

こうオブラートに包んで言って欲しいなぁ。


「親戚の子ですよ」

「どうも」


男性が軽く頭を下げて立川に連れられ二階に上がっていった。それを見送って私はリビングに引っ込んだ。

八坂に男性の写真をメールで送る。前科か何かがあれば公安のデータベースと合致する筈である。


梨花の容態は落ち着いており、今は寝息に変わって居た。寝顔を見てもただの中学生にしか見えない。

この子にはどんな事情があるのだろうか。


とにかく、と気持ちを切り替える。梨花は寝ているし立川は来客者と部屋に行った。好機と思いリビングのデスクトップPCの電源をいれた。

最新とまではいかないがそれなりに新しい機種であった。


「やっぱりロックされてるか」


PCの周りを探してみたがパスワードのメモなどは見当たらなかった。立川裕子の情報を携帯電話で検索して、生年月日などをいれてみるがどれもハズレだった。

私のタブレットPCを接続してクラックソフトを起動する。時計を見ると15時10分になる頃だった。

立川の客がどれくらい居るのか分からないが、10分かそこらで帰るとも思えない。

クラックソフトが解析するのを待っていると携帯電話が鳴った。


「もしもし」

『伏見さん。先ほどの写真ですが、公安のデータとは合致しませんでした』

「そっか、じゃあただの知り合いかな」

『ただ、一つ気になることが』

「?」

『課長がこの顔を何処かで見た事があるって言うんですよ』

「何処で見たんすか?」

『今、思い出してもらってます』

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