【6ー10】
【6ー10】
「遅かったじゃないのぉ」
「ちょっと野暮用だったの、野暮用」
隠れ家に着くと入間沙織の処置を任せている研究員の通称おネェがこよりを出迎えた。本名はもちろんあるのだが、喋り方がそれらしいので皆おネェと呼ぶ。ちなみに女性である。
隠れ家は、とあるオフィスビルの一フロアを借りているのだが、案外ばれないものだな、とこよりは思った。
「入間沙織は?」
「まだ起きているわよぉ」
備え付けてある広い防音室にこよりは入った。オフィスビルの一室であるが、防音室がついていた。どういった目的で設計したかは知らないが、役に立っているので良しとする。
防音室に機材とベットを持ち込んで、ここに入間沙織を軟禁していた。
「こんばんはー、沙織ちゃん」
こよりの挨拶には答えず、入間沙織は頭を下げた。一緒に入ってきていたおネェが入間沙織を叱る。
「こよりちゃんに挨拶しないとダメじゃないのぉ!」
「別にあたしは構わないよ、どうでもいいし、うんどうでもいい」
ベットに腰掛けている入間沙織を見上げるように床にこよりは座った。沙織はこよりに鋭い視線を向ける。怒った顔をしてても、美人は美人だなとこよりは惚けた。
「何か生活に不満は? そう不満」
「家に帰して」
「あー、それ以外でね、それ以外」
「実験動物扱いはやめて」
「えーと、それ以外で、もっとこう生活面で。生活面」
「歯磨き粉の種類を変えて」
「なんでまた」
少し恥ずかしそうに沙織は声を小さくした。
「辛いから」
「分かった、おネェ明日買ってきておいて。あたしも甘い方が良いし、甘いのが」
「二人ともお子ちゃまねぇ」
「まだ、子供だもーん、子供子供」