【6ー5】
【6ー5】
本来なら軽くあしらわれる筈の私の提案は思わぬ形に進展した。
狭山の元に呼ばれて私は事情を話した。そして、私はこよりを止めたいと言った。
狭山は私が魔法使いであることと、私の魔法に興味をもった。のちに5ナンバーであると発覚して、狭山は陸自の試験的な運用をしている連隊に来ないかと誘った。魔法使いのみで構成された特殊部隊に。
「狭山の口添えもあって私は特別に陸自の訓練校に入学しそこを卒業して陸自の魔法使い連隊に入隊する予定だった。だけど、こよりと接触したい私の希望と公安上層部が5ナンバーを欲しがったことで私は嘱託扱いで六課に来たわけ」
ここで私は一息ついた。
「それが私が六課に来るまでの話だ」
「……鷺ノ宮こよりと美樹さんの関係は分かりました。それで、美樹さんはどうしたいんですか」
璃瑠の問いに私は答える。
こよりとあの時接触して分かった。璃瑠と交戦しているのを見て強く確信した。
私は決意は揺らがない。いや揺らいではいけない。
「こよりを止めたい。あいつが踏み入れた道から引っ張りあげたい」
「だから、鷺ノ宮こよりと戦うな、ですか」
「協力して欲しい、璃瑠。あいつは間違ってる、だから止めたいんだ」
声が届くなら、話が出来るなら説得出来る筈だ。そう思った。
私の言葉に璃瑠はため息を吐いた。
「……自分が何を言っているのか分かっているんですか。目の前にテロリストが居て銃口を向けられてるときにあなたはノコノコ出て来て私に戦うなと言ったんですよ。
あの人は私の大切な人だ。だから撃ちたくない。協力してくれ。
そんなの馬鹿げてる」
「馬鹿げてるってなんだよ、私は真剣にーー」
「コンビを組むということはどういうことが分かっているんですか!?
特に近接特化の前衛の私と、射撃特化の後衛の美樹さんの場合、私は背中を預けて戦ってるんです! それなのに、美樹さんは戦いたくない、恋人なんて撃てるわけないなんて言ってるんですよ!?
それで信頼なんて出来るわけないじゃないですか! いつ私が美樹さんに背中を撃たれてもおかしくないんですよ!?
死ねとでも言いたいんですか!? 死んで、説得する時間でも作れとでも!?」
「そんなこと言ってない!」
「村山の時だって、どれだけ危険な事をしてるのか自覚はあるんですか!? あの時、どれだけ危険だったか分かっているんですか!?
私が引き倒さなかったら死んでたんですよ!? それをまるで、私が殺したとでも言いたそうにする!
説得、えぇ結構です。不殺、えぇ立派です。友情、感動的でしょうとも。そして、そんな寝ぼけたこと言ってあなたは死んで、私にもそれを要求するんですか!?」
「村山は止められた筈だ!」
「あなたのその勝手な判断でどれだけの危険を生んだか分かっているんですか!? 村山を私が殺した? そうですよ! それが私達の仕事です! それが出来なくては意味が無いんです!
絵空事を綺麗事で謳ったところでなに一つ解決しない! 自分の弱さを着飾らないでください!」
璃瑠は叫び終わると俯いた。布団に顔を押し付け啜りを上げる。
白い布に、シミが出来ていく。
先ほどまでの強い語調は何処かに消えて、璃瑠は泣きながら言った。
「……もっと大人になってください」