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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【6章・月は繋げた】
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【6ー2】

【6ー2】


八坂が部屋から出てきた。私が質問しようとすると八坂は黙って私の手首を掴んだ。

そして私の背中を乱暴に押して病室に入れる。私の背中で八坂が乱暴にドアを閉めたのが分かった。


璃瑠が私に背を向けてベッドに寝ているのが分かる。ベッドの脇に置いてある座椅子に座る。

無言の時間が幾ばくか流れた。


「ちょっと話しても良いかな?」

「私は寝てますからご勝手にどうぞ」

「なら、それに甘えて」


何処から話せば良いのだろうか。


「私と鷺ノ宮こよりは同じ高校のクラスメイトで友達で親友で。……恋人だった」


出会ったのは高校の入学式の日だった。こよりは私を見た時、運命を感じたとクサい事を言っていた。


「美樹さん、男だったんですか」

「違うよ、馬鹿。まぁいわゆる同性愛だよ。でも、私達はそんな事どうでも良かったし、性別なんて意識もしなかった。なんて言うのかな、性別とか関係なしに好きになったんだよ」

「それで?」

「高校生がそんなこと言うの笑われるかもしれないけど、私もこよりは本当に愛し合ってた。それなら、なんの問題も無いと思ってた。でも世間はそうじゃなかった。学校で私達は奇異の目で見られたし、それでハブられもした。両親にもめっちゃ怒られた。

でも私は気にしなかった。周りが認めなくても、私はこよりが好き、それで良いと思ってた」


世界の中で私達は小さな世界を創ってそこに居ようとした。けれどそれでは駄目だった。

村山に親しみを覚えたのは、彼もまた自分の世界に閉じこもろうとしていたからかもしれない。

けれど、小さな世界は脆くいつだってヒビが入り続けていた。


「でも、こよりはそれに耐えられなかった。しょっちゅう泣いていた。こんな世界はおかしいと言ってた」

「2013年に宣言された同性愛者の人権に関する国連宣言を日本は許諾し批准しています」

「だけどそれで個人レベルの意識が変わるわけじゃない。それで解決したら人種問題が今でも続いてるはずがないよ」


異質性に気付いた時、それを受容出来なければ差別は生まれる。決して形にしなくとも、それは確かに何処かに潜む。

人類の歴史のうちに差別というものが登場しなかった時など存在しない。


「どんな目で見られようと、どんな言葉を浴びようと私は負けないって思ってた。こよりが耐えられないなら私が守ろうと思ってた」


けれどそうすれば、そうするほど。私達は世界から拒絶されていく。


「そんな時だった。私達を決定的に変えた出来事が起きた。

新宿大規模爆発事故。私とこよりは、あれの被害者だよ」

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