【5ー12】
【5ー12】
鎖が撃ち抜かれた。璃瑠とこよりが上を仰ぐと黒蛇を構えた美樹が居た。空中で三人は視線を交差し合う。
「美樹ちゃん……」
美樹と二人の間の距離は数メートルしかない。だが、飛行制御を行ったまま正確に目標を撃ちぬくのは決して簡単な事ではない。
こよりは美樹に悲しそうな瞳を向ける。
もう、そんな所まで来てしまったのか、と。
高度を調整して美樹は二人の間に舞い降りる。空中で静止した璃瑠とこよりの間で美樹が黒蛇を下ろした。
「……なんで戦わなきゃいけないんだよ。なんでお前らが戦うんだよ」
「何を言ってるんですか」
美樹が言うとこよりは悲しそうな顔をした。
「美樹ちゃんは、なんでそんな、ねぇなんで」
「こより、私はお前と戦いたくなんかない」
「なら退いてよ。退いて。美樹ちゃんが、こんなところにいちゃいけない」
「でも私は……。お前がテロリストになるのなんて私は嫌だ!」
美樹の叫びにこよりは悲しそうに首を振る。
こんな歪んだ世界が変わらないのなら、自分で変える。こんな歪んだ世界を形成する要素を駆逐する。
もう二度とあんな悲しみは生み出さない。
人が変わる時が来た。
こよりはそう思っていた。だからこそ、美樹が立ちふさがることに、こよりは酷く傷付いた。
美樹も、それを望むはずなのに。
「人が謳い人が望み人が求めた進化の為だよ。あたしは決めたの、そう決めた。こんな世界なんていらない。あたしが変える」