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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【5章・死刑囚は変わり果てた】
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【5ー8】

【5ー8】


璃瑠に追い付いて血痕の跡を共に追う。リノウムの床の上に零れた血液は空気に触れて、役割を果たしていた頃の姿はもうなかった。

空気の色なんて見える筈がないのに、薄汚れているように見える。

いつだってこの廊下は好きになれなかった。

廊下も教室も、どこだって学校は窮屈過ぎて私達はその世界の境目をを意識してしまう。


前を行く璃瑠は何も言わず、私はそれを追いかける。

どうすればいい、私は。


非常用階段まで血痕は続いていた。記憶の隅にあったこの場所は寸分違わず、血の匂いだけが新しく上書きされた。

呻きが聞こえて璃瑠がハンドガンを構えたまま、階段を駆け登る。


「村山!?」


踊り場の窓の下に背中を預けるように、村山が床にへたり込んでいた。先程までの姿からは想像も出来ない。


「ふ、……伏見」


村山が掠れた声を出した。

私は銃を構えた璃瑠を手で制す。


「動くな、喋るな、応急手当をするから。璃瑠、回収班を呼べ!」

「……。」

「早く!」


出血が酷い。撃たれたのは腹か。制服のシャツのボタンを外す。

止血が先だ。

撃たれてから何分経った。

ウエストポーチから応急セットをぶちまける。そこから即時性無痛薬と塗布性止血パッドを引っつかむ。六課のハンドガンは45ACP弾だ。非常にまずい。

即時性無痛薬を投与すると、村山の表情が少し緩んだ。


「……ぼ、ぼ、ぼくは……ふ、……伏見の言う……と……お……た、立ち向かったんだ」


塗布性止血パッドを使う。半透明のジェルを腹に塗りたくる。数秒の内にジェルは凝固し、半透明のジェルの下に血が滲んで行くのが見えた。


「立ち向かうという意味を履き違えるなって言ったじゃねぇか」

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