【5ー6】
【5ー6】
「ねぇ、なんでかな、なんで」
夕陽が窓の端に少しばかりのオレンジを置いて時の推移を教えていた。非常用階段に腰を下ろし、私の膝に縋るようにしてこよりは泣いていた。
遠くから学生の声が聞こえる。それに負けそうな位か細い声でこよりは訴える。
「なんで? あたしは美樹ちゃんが好きなだけなのに、好きなだけ」
「気にすることなんてないよ」
夕陽が差し込まないのでLEDの余所余所しい光だけが私達を照らしていた。
「こんなのおかしいよ、おかしい」
こよりはいつだって自分に言い聞かせるように言葉を吐き出す。こよりの髪を指先で丁寧に撫でる。触れた側から絡む事なく指はすらりと走った。
スカートの布越しに熱い物を感じる。こよりは泣きじゃくり、その証拠が私のスカートを汚した。
「気にする事なんてない。私とこより以外関係ない」
「でも……あたしはこんなの耐えきれない、無理だよ」
「こよりは誰の言葉も聞く必要なんてない」
こよりは顔を上げた。泣き腫らした目から更に絞り出すように涙が零れ落ちた。
「あたしはこんな世界嫌だよ……嫌」
もう逃げるのも、立ち向かうのも、もがくのも疲れた。そうこよりは呟いた。
私達の生きる世界はどうしてこんなに狭くて息苦しい。
どうして私達が苦しまなくてはならないのだ。
私達はこんな事すら許されないのか。
こよりは手を延ばし私の上着の肩の辺りを掴む。身を起こしてこよりと私は向かい合う。そっと引き寄せられる。こよりの睫毛が涙で濡れて涙の結晶で飾っていた。瞳の向こうに私の姿が見えてその私の瞳にこよりが見えて。吸い込まれるように私はこよりの唇に口付けをした。甘い香りが鼻腔を満たして、唇に触れた柔らかい感触からこよりの鼓動が伝わってきた。
「こんな世界間違ってるよ、うん間違ってる」