【5ー4】
【5ー4】
「なんだ、村山。暗い顔して」
「ま、前にふ、伏見は言ったよね。いじめっていうのは、い、異質に対する、し、集団の、ぼ、防衛だって」
「言ったな」
「美樹ちゃん、あたしの言葉丸々パクったでしょ、パクったー」
「私が使った方が輝いてたよ」
「うるさいハゲー、ハゲー」
「フッサフサだよ!」
非常用階段の踊り場の窓を開けながらこよりは口を尖らせた。窓から季節に似合わない冷たい風が流れ込んでくる。カビ臭いのも嫌だが、寒いのも受け入れたくない。
「な、なら同質に、なれば、いじめられなくなるの?」
「難しい問いだな」
「か、変わりたいんだ。こ、こ、んな自分、い、嫌だから」
「良いね! 人は進化すべきだよ、そう進化」
「ま、周りをな、詰ってても、し、仕方ないんだ。す、進まなきゃ」
村山から思いもよらぬ前向きな言葉が出てきて私は少し驚いた。
「な、何を変えれば、い、いいかな。ふ、伏見」
「へ? 私?」
少し考えてみる。改めて上から下まで村山を眺め回してみた。
「別に変えなくても良いと思うけどなー、私は」
「いいや、駄目だね、駄目ね」
こよりが指を鳴らした。なんのポーズなんだよ。
髪から持ってる物までこよりは村山に指摘し始めた。次々と村山に口を出していく。村山は真剣にメモを取り始めた。
ただ、最終的にこよりの言う事を全部聞くと大変な事になるぞ。こいつ、私服がゴシックロリータだぞ。いや似合ってるけど。村山までそんな格好にする気ではないだろうな。いやこよりは似合ってるけど。
「まぁ、村山がそう言うなら頑張れよ」
「う、うん」
「でも私は今のままのお前が好きだけどな」