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清楚系生徒会長の秘密の講師になりました。~ミステリーを楽しむためのラブコメ小説~  作者: 夜野舞斗
1時限目 ミステリーのジャンルを知っていこう!

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Ep.6 ミステリーに犠牲は何人あればいいですか?

「最初に死体って転がせればいいとはよく言うわよね」


 いつもの生徒会室で。突如として、彼女から話しかけられた。頷きながらお茶を飲もうとする僕。


「40人位死体必要かしら」


 一気に噴き出した。そのお茶は彼女の顔や胸へと降りかかる。


「ちょ、ちょっと!? 何するのよ!? あーあー、いろんなところに飛んじゃってるじゃない……」

「いや……悪いの僕!? これ、僕が悪い判定になるの!? それだと納得いかないんですけども!」


 彼女は顔や胸をもぎゅんと拭きながら、「まぁ、いいわ」と言って。話の続きを催促し始めた。


「で、やっぱそれって効果あるの?」

「ううん。冒頭の死体とはよく言われるよ。確かに殺人ミステリーだったら、如何にして不思議な謎を、遺体を出すかは重要だね。でも、いきなり40人って言われたら、風村さんが刑事だったら、どう思う?」

「……とんでもない殺人鬼がいるわね……ヤバいわね。ピンチじゃない」

「その時点で犯人をトリックとかを繊細に扱う野郎だとは誰も思わないんだよね。それにその動機がもし、誰かの復讐だったとしたら……。何でそれ以外の人は狙わなかった? 40人ならどうして探偵の推理を大人しく聞いていた? 捕まらないつもりなら、探偵の推理ショー無視して攻撃するでしょ……? みたいな」

「確かにたくさんツッコミどころが出て……完璧じゃなくなっちゃう。ミステリーが穴だらけになっちゃうわね」

「そっ。だからいきなり40人クラスを始末しようとかっていうのは、お勧めはしないかな。まぁ、40人分トリックを考えられたっていうのなら話は別かもだけど」


 話したところで喉が渇いていく。今回こそ、しっかり水分を取らせてもらおうか。


「じゃあ、犠牲ってそこまで多くなくてもいいのよね」

「さっきから何? 僕の水分を奪ってカピカピにしようとでもしてる?」

「別に面白いことなんて言ってないわよ?」

「本当かなぁ……?」

「で、バランスはどれくらいの方がいいのかしら?」


 場合場合によるだろう。できれば自分のやりたいようにやってもいいと思うのだけれども。それでも迷うのであれば。


「……だいたい青春ミステリーだったら、人が死なないを銘打っているのなら一人かな」

「あれ、人死なないのに死ぬの!?」

「まぁ、殺人事件を捜査する訳じゃないってことだよ。謎として多いのは亡くなったおじいちゃんの遺産関係とか。後はまぁ、人探しとかそういうので真実に辿り着いた時、誰かがああもう事故や病死で亡くなっていたんだって辿り着くこともあるかな」

「なるほどなるほど。じゃあ、普通の殺人事件が起きるミステリーだと……」


 だいたい何人がいいか。


「五人位かな。よく言われてるんだ。殺さなければ青春作家。一人殺せば恋愛作家。五人殺せば、ミステリー作家。ちなみに十人がホラーで……百人、千人がファンタジー。一万人とかだとSF、一億だとディストピアだったかな……間違ってたら、ごめん」

「五人もやるの!?」

「まぁ、一人は確実に被害者でしょう。で、まぁ、残り二人……巻き込まれてやられるみたいな感じかな。で、もう二人は動機ってところがバランスいいかな。両親が殺されたからって動機とかは聞いたことあるでしょ?」

「な、なるほど……」

「まぁ、これは中編や長編ミステリーの場合かな。短編だったら、人の死が関係ない動機で一人だけ死ぬとか結構あるから。まぁ、殺人事件の謎に集中させるためだね」


 まぁ、謎をどれだけ魅力的にできるか、だ。もし、自信のある謎であれば、そこまで大勢犠牲者を出す必要はないと思う。

 逆に謎より探偵の活躍劇を見せたい場合。探偵のキャラ性、世界観の特有性を出したい場合。


「例えば、戦争小説では結構人の命が奪われてるだろ?」

「まぁ、百や千の犠牲はあるかしら」

「うん。探偵が戦地に赴くような感じだったら、まぁ、それ位の犠牲があっても不思議じゃないんだ。ちな、よく名探偵が死神とか言われて……年に二千人位亡くなってるからヤバいって話があるけど……。普通にそれ超えてる探偵いるんだよね」

「な、なるほど……。もうあの探偵くんのこと、死神って呼べなくなっちゃったな」

「今まで呼んでたんだ……」


 取り敢えず、ミステリーの犠牲者の数というのは解説できただろうか。この辺りさえしっかり分かっていれば、ミステリーがどういうジャンル。どんな話が存在しているのか、というのは少なからず分かっているはず。

 やっと、やっとだ。

 僕は彼女を見つめていた。


「風村さん」

「どうしたの?」

「次からは実際にプロットを作っていこう。ミステリー特有の展開を説明するから」

「ぷ、プロット……を……ついに作れるの!?」


 僕は首を縦に振る。彼女のワクワクする感じが伝わってきて、僕も心が踊らされる。

 やっと説明できる。やっと彼女の力に直接的に役立てられるのではないか、と思うのだ。


「テーマとしては、殺人事件に探偵が挑むって短編だね。青春や学園ミステリーもいいけれども。人の死なないミステリーは謎を作るのが難しいってこともあるからね。あっ、もちろん殺人事件の方を書いてから、そういうミステリーのことも解説してくから、さ」

「……ついに、ついに、やったぁ! って言っても、本当に書けるの!? ミステリーのトリックなんて、まだ思い付いてないんだけど!」

「確かにトリックも一部だけど、でもそれだけじゃないんだ。無く立って、意外と考えられるものなんだよ……犯罪者の気持ちになれば、ね」

「なれば……!?」

「ち、ちなみに実際にやらないでね? 気持ちを考えるだけだよ? 犯人の視点に立てって言ってるの……! 詳しいことは後で教えるよ……!」


 さて、と。

 ここまでは良かったものの。あまりに殺す殺す言っていたからか。一つの噂が立っていた。

 あの生徒会室、夜中になると殺人犯が会議をしているらしいよ、と。殺人鬼が次のターゲットを探しているらしいよ、と。知ってる、あたしこの前殺人鬼が「殺す」って言ってたの聞いて逃げ帰って来ちゃったのよ、と。「次は誰が死ぬ」とか言ってなかった!? やられるのはお前だぁ、なんて言ってる。

 ついつい調子に乗って叫び過ぎてしまったのかもしれない。

 僕と風村さんはそんな会話を遠目で見て、「……アハハ」と静かに笑うしかなかったのであった。

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