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第11話 薬草

 俺と咲奈は冒険者ギルドへとやってきた。もうすっかり慣れてしまったルーティン行動で、依頼書が貼り付けてある掲示板へと向う。


「どんなクエストをやってみる? パラメーターを好きにいじれるから、いきなりSランククエストとかもできるわよ」


「え、パラメーターって……ステータスを操作できるの?」


「ええ。ただ、魔物に倒されるとそのまま実験終了して強制シャットダウンされちゃうけど」


 いや、それって……


「この表示されてる日数前に死ぬってこと?」


「リアリティ出すためにね。その制限も解除はできると思うけど……許可が通れば」


 つまりやり直せるようにもできるってことか……でも、それだと本当の人生を生きているとは言い難いだろう。

 普通、人間は一度死んだら終わりだ。だからこそ、1日1日を必死に生きようとするんだ。


「いや……今のままでいい。ランクもFからコツコツやっていこう。チート(ズル)するのは好きじゃない」


 そう言うと、咲奈は納得したようで、少し微笑んで頷いてくれた。


「なら今度こそ、魔物も出る薬草採取の依頼をやりましょうか?」


「ああ。今度は不意打ちはやめてくれよ」


「もうしないわよ」


 そんな軽口を叩けるようになったのが、なんだか夢のようだ。


 俺たちは薬草採取のクエストを受注して、近くの森へと向う。

 その道すがら、気になったことを尋ねる。


「パラメーターいじれるってことは、スキルとかも変更できるのか?」


「できるわよ。ビルドみたいなもので、いつでも好きに変更できるわ」


 咲奈は少し立ち止まって動かなくなると、俺の方を向いた。


「これてステータス画面からいつでも変更できるようになったわよ」


「ありがとう。咲奈はどんなビルドにしてるんだ?」


「エルフだから遠距離ビルドにしようと思ったけど……なんとなく近接系にしちゃった。スキルも剣関係のものね」


「そっか、エルフと言えば弓だもんな」


 咲奈が最初に会った時から剣を持っていたので、違和感がなかったが、言われてみればエルフと言えば弓だ。


「俺は……スキルは鑑定のままでいこう。これのおかげで、俺は俺だと気付けたんだから」


 俺はステータス画面を見つめて噛み締めるように言う。戦闘向きでないので、戦いは苦戦するかもしれない。でも、それでいい。

 俺がやりたいことは戦闘じゃなくて、死ぬまで生きることなんだから。


「なるほど、いい選択ね」


 咲奈も頷いてくれている。


「よし、なんとなくで振り分けた。行ける」


「ええ。でも別に強い魔物はまだ出てこないから、あまり身構えなくていいわよ」


 と言う咲奈の言う通り、薬草採取は簡単なクエストだった。ゲームでいうサブクエで、小遣い稼ぎのクエストなのだろう。

 薬草はあっさりと手に入り、道中出てきた魔物も、大した強さではなかったため、あっさりと退けることができた。


 俺たちは薬草をギルドに持って帰り、依頼を達成することができた。


「どう? 初めての共同作業は」


 咲奈は少しお茶目に言った。


「悪くなかった。簡単だったけど、やりがいがあったよ。……これが誰かの役に立てるとかだったら、もっとよかったかもしれないけど……」


 所詮これはゲーム――仮想現実だ。俺が薬草を渡したからと言って、誰かが救われるわけじゃない。

 それがあれば、俺も誰かの役に立てて、“生きていた”という実感が得られたかもしれないけど。


 それを察してか、咲奈も少し暗い顔をする。


「そうね……これでなにか世界が変わるわけじゃない。でもね。こっちにおいで」


 咲奈は俺を連れて道具屋に行った。

 そこで彼女は、薬草を購入した。


「これ、あなたがクエストで取ってきてくれたものだって思って使うわ。……どうかしら」


 少し恥ずかしそうに言う咲奈の意図を察し、俺は嬉しくなる。


「いいな! じゃあ……それは君への俺からのプレゼントってことで」


 ほんの小さな取るに足らない出来事だつたかもしれない。

 でも今日が今までで一番楽しいと感じられた1日だった。

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