3
弟の一日
上機嫌な兄を見送って弟は深く椅子に座り、息を吐いた。
「…………」
なにか言葉に吐き出して、この胸のもやもやを吐き捨てたい。だがいざとなると言葉が出ない。
デカイ身体に似合わず、案外自分は気が小さい。そしてくよくよしがち。決断も遅い。カッコ悪い所だらけだ。
一人己を省みて、ロルフは落ち込んだ。
くらい。
くらすぎる。
が、まあ分かっていてもすぐには変えられないのが己、性格、個性というものか。そんなあっさり変えられたら苦労はしない。
人前で取り繕う事には慣れたが、結局変わりはしない。
己は根暗で、くよくよしがちで、決断も遅い。
颯爽と駆けていく兄とは大違いだ。
「さて……」
一人呟く。
今日は一日空いた。他に抱えている仕事もない。兄が言った通り寝ていようか。金を使わないのが一番だから、寝ているというのはあながちまずい選択ではない。退屈で、非生産的なこの上ないが。
さて。
声には出さず、考える。
行ってみようか、な。
行きたくても中々行きづらくて今まで行かなかった、あの場所へ。
図書館。
市民ならば誰でも利用できる場所であるがロルフは今まで行った事は無い。場所だけは知っていたが、入った事は無かった。
入りづらかった所為だ。ロルフの一方的な偏見でしかないのだが、何故かロルフは入りづらいと感じる。あの入り口を見る度に。
古びた大きな建物。何かの役所のようにも見える、あの大きな入り口。
ロルフの知っている図書館は旧市街の方にある。新市街の方にもあるにはあるらしいが、ここからは遠い。だから、行くとしたらあの旧市街の図書館なのだが……。
「よし、行くぞ」
誰も聞いてる者はいないのに、ロルフは言い出さずにはいられなかった。むしろ自分自身に言い聞かせているのか。もう一度行くぞと口にして、ロルフは椅子から立ち上がった。
そしてうろうろと部屋を意味もなく歩き回り、出かける準備をしているつもりになる。出かける準備など、財布をポッケに突っ込んで事務所に鍵を閉めて終わりなのに。まあ図書館に行くなら借りた本を入れる袋を用意した方がいいか。
そんな事を考えながら、ロルフは部屋を歩き回った。
うじうじと、結局行くのか行かないのか、決めれないまま。