マッチョが参加したかったのは硬派VRMMOなのに、なぜか少女趣味な世界に転生ログインしてしまった件
この物語は、とあるVRの世界を舞台としている。
この世界には、3つの種族が存在していて―――
1.男性:肉体労働が主な仕事だそうで、体格の良い人が多いとのこと。
2.女性:医療関係の仕事が多く、特に看護士さんなんかだと白衣の天使などと呼ばれているらしい。
3.子供:女の子のみで構成されているみたいです。見た目は完全に子供のようですが、性別はないとの事なので、名前は不明......なのかな?
そんな世界でプレイヤーは、「男」と呼ばれることになるようです。
そしてその主人公の名前は――――
「ぼくは、おとこ!
なんにもできなくて、かっこわるいけど・・・
がんばって、いっぱいおよぐからね!!」
ある日のことです。
突然、謎の人物に襲われます。
(なんだあれ)
襲われたのは、巨大な人型ロボットみたいなものでした。
何言ってるのかよくわからないし、話しかけても何も反応してくれません。
それに何かおかしいと思いませんか!?
そうです。彼らは、僕にこう言ったんです。
『おまえたちは人間とは違う存在だ』
僕はびっくりしました。だってこんな巨体の持ち主なんて見たことなかったからですよ。
でも僕のことを見下しているわけではなくて、ただの言葉だったようです。
そして彼は言いました。
『このゲームのプレイヤーもおまえたちと同じように、身体が小さく、頭脳明晰だが体が弱い存在である。だから、俺達が力を合わせて戦うのだ』
僕は驚きました。まさか、自分が戦わされるとは思っていなかったからです。
すると男は言いました。
『ここは、お前達の世界であると同時に、俺たちの戦いの場でもある。戦いたくないなら、ここに来なければいいだけだ』
そう言われてしまったら、行くしかありませんよね。
僕は覚悟を決め、言われた通り、そこに行きました。
そこは何というか、異世界っていう感じの場所ですね。
とても美しい建物や街並がありました。
しかしどうやって戦ったらいいんでしょうかね??
とりあえず武器とか持っていないし、素手で戦うしかないと思います。
そこで、ふと気づきました。
(そうだ!この武器を持っていこう!)
そう思い、手に取ったそれは、剣だったのです!!!
僕はさっそく、それを使って戦い始めました。
だけど、やっぱり勝てるわけないんですよね。
敵が強いから仕方ないのでしょうが、それでも頑張って攻撃していたんです。そしたらいつの間にか、敵がいなくなっていました。
(え?あんなところにいたはずなのに???)
不思議に思っていると、後ろの方から声をかけられました。
振り向くとそこには、大きな機械のようなものがあったので、それを手にとってみると、ボタンが表示されていました。
『これを押したら戦闘が始まるぞ。しっかり押せよ』
そう言われると、僕は思わずボタンを押してしまいました。すると、どこからともなく強い光が現れました。
そうです。あの怪物が現れた瞬間だったんです。
僕はビックリしてその場から逃げ出そうとしたのですが、動けませんでした。なぜなら足元にいたはずのあいつがいないんですから!!
(なぜだよーーーー!!)
いくら探してもあいつはいないし、どこにいるかも分からない。もうダメだと思ったその時。
「ねぇ・・・あなた一体誰?」
そう聞こえた気がしました。振り返るとそこには、小さな女性が立っていたんです。
女性はこちらを見て微笑んでくれていますが、顔は全く見えず声だけで判断するしかありませんでした。
その女性は優しく話かけてきてくれました。
「あなたは・・・私と同じ、人間ではないんですね?」
いきなりの質問に戸惑ってしまいましたが、とにかく答えないといけないので僕は必死に考えながら話し続けました。
すると彼女は少し困ったような顔をした後、こう言いました。
「私は、あなたの魂の一部なんです。魂とは生きている間に存在するもの。あなたが死ぬまでずっと一緒にいるの。だから私が死んだら一緒に死んじゃうけれど、私が生きてればまた会えるかもしれないじゃない?だからあなたに心配かけないように生きていたのよ」
つまり僕は死んでしまう運命だということです。
僕はなんとか彼女を信じようと決意し、彼女に頷きました。
すると不思議なことに、彼女の姿が見えなくなりました。いやあ、本当に幽霊なんているんだなって思って感心していますと、今度は彼女が僕の前に現れました。
「ごめんなさい。貴方を見捨てるわけがないと思っていたのに、どうしても信じられなくなってしまったの」
彼女は悲しそうな表情をしながら謝り続けています。
僕はここで引き下がる訳にはいきませんでした。
「じゃあさ、これから僕たちと一緒に戦わないかい?」
彼女を説得しようとしますが、なかなかうまくいきません。
そもそも僕は何をすればいいのかもよくわからなかったし、今更一人で戦う自信もない。
色々と考えているうちに時間は過ぎていきました。
結局彼女と話すことはできませんでしたが、これで良かったんだと思います。だってここまで来て諦めるような女ではなさそうですもん。
それから数週間後、いつものようにプレイをしていると、画面の中に何か文字が出てきました。
なんでも今までのモンスターは全て倒されてしまっていて、新しいモンスターが登場するらしいです。しかもこれまでの敵よりも強くなっているらしく、苦戦を強いられることになってしまいました。
さらにもう一つ問題が発生しました。
それは僕のHPが全く減っていないということです。
体力は満タンだし、魔力もあるためすぐに倒れることはないだろうと考えてはいましたが、やはり緊張するものです。
何とか持ちこたえて戦い続けていたものの、徐々に体力ゲージは減少していきました。このままではまずいなと思っていると、そこへ誰かの声が聞こえてきました。
「おいおい、どうしたんだ急に?」
「実は今日、君の正体を知ったんだ。でも君は悪い奴じゃないと思うんだよな。だって、このゲームを始めてから一度も自分の意思を見せていないじゃないか?」
「そうかな?確かにこれまではそういう場面がなかったように思うけど...」
「違うんだ。君が戦う理由を考え始めたのもつい最近だと思うんだ。それまでは本当に気まぐれでしか戦わなかったはずだろ?」
「確かにそうかもしれないけど......」
「だからこそ俺は君にもう一度チャンスをあげたくてこうして出てきたんだ。もしよかったら協力してほしい」
そう言うと、彼女はある提案を持ち出してきました。
「わかりました。では、その条件を飲んでもらいましょう」
僕は承諾することにして、再び装備を整えようとした時、彼女の姿が消えていることに気付きました。
慌てて周りを探してみるも、どこにも見当たりません。
もうだめなのかなと思ってしまうほど落ち込んでいると、再び同じ場所に立つことが出来ました。
これはまだ諦めていなかった証拠でしょう。
「よし、あと一回だけお願い聞いてやるぜ」
「ありがとうございます。ところで、その願いというのはどんな願いですか?」
「ああ、簡単だ。俺が負けずに最後まで生き残れるようにしてくれ」
「わかりました。さぁ、行ってこい」
そう言って彼は去っていくのを見送ったのですが、その直後、画面から音が鳴り響きました。
「おいおいおい、何の音だよ!!」
音の発生源を探すためにスマホを見ると、そこにはたくさんのモンスターたちが写っている写真が表示されていました。
「まさか......これが!?」
最初は冗談かとも思ったのですが、次々と映し出されるそれらのモンスターは明らかに本物でした。
急いで周りの人たちに知らせようとすると、声が出ないことに気づきました。
「あっ......」
「大丈夫か?おい、起き上がれ」
近くにいた人が助けを呼びに来てくれたおかげで一命を取り留めることができたのでした。
その後のことはもう覚えていませんが、目が覚める頃には病院のベッドの上でした。
目を覚ましてすぐ、ベッドの上に座ったまま呆然とする僕に向かって、医者がこう言い放ちました。
「まぁ無事だったようだね。残念だけど君の寿命はまだ先が長いから、もう少し休むといい。それより君と初めて出会った時は驚いただろう?」
僕は驚いて、何度も瞬きを繰り返しました。どうして出会ってしまったのか理解できなかったからです。
「なるほど、それではこのゲームのことを聞かせてもらえないか?」
「えぇもちろん構いませんよ。詳しく教えてください」
そう言って僕の頭に手をかざすと、目の前には鏡が用意されていました。
「これを使えばいつでもどこでも好きな時に相手を召喚することができるのだよ」
「ほう、面白いシステムですね」
僕は思わず笑みをこぼしてしまいました。
「それでは早速使ってみてくれないかしら?」
「分かりました」
そう返事をして、僕は彼の方に近づいていくのですが、彼が持っていたものはただの剣ではなく、『召喚用魔法陣』というものでした。
これは本来魔法を使うときに使う道具なのだそうですが、この魔法陣があれば誰でも簡単に相手を呼ぶことができるとのこと。
「では早速使い方を教えてもらうとしますか」
そう言うと、魔法の詠唱を開始しました。
「いざ勝負開始!!」
そう叫ぶなり、僕は大きく飛び上がりました。
彼からは眩しいほどの光と共に黒い影が伸びていきます。そしてゆっくりとこちらに近寄ってくるのです。
「やった!!ついに来た!待ってたよ!」
僕はそう叫びながら彼に抱き着いてキスを交わしました。
そのまましばらく彼と熱い夜を過ごすことになりました。
翌朝目覚めると、昨日の出来事が完全に夢だったことに気づくのですが、同時に記憶が無くなっていたことが分かりました。
僕は何が起きたのか全く思い出せず、ただぼんやりとして過ごすことになったのですが、しばらくして何かを思い出したとき、ようやく自分が置かれた状況を理解することができました。
(あれはきっと、夢の中で僕はとんでもない罪を犯していたんだろうなぁ......)
そう考えると、胸の奥底がじわりと熱くなる感覚を覚えました。
僕は今度こそ、二度と罪を犯さないように気をつけなければならないなと考えたのでした。