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すれ違いだらけの僕の運命  作者: 甘衣 一語
旅行
9/38

 始めに向かったのは科学館だった。隣には公園もあり、この暑さにも関わらず子どもたちが楽しそうに走る姿が目に映る。園崎さんはあまり乗り気ではなかったが、入館した目線の先にプラネタリウムの案内を見つけて煩く騒いだ。次に上映するのは3時からで、それまで時間を潰さないと行けない。園崎さんは白崎さんと勝手に奥に進んで行き、置いてけぼりの僕と平宮さんが2人で回ることになる。

 案内板を見ている平宮さんを置いて僕はエスカレータに向かう。平宮さんがついてきていることを横目で確認して目的地に向かって足を進める。

 科学館に来たとき、1番始めに向かう場所は決まっている。

 それぞれの階ごとに異なる分野の装飾と展示が置かれたこの科学館で、僕が目指すのは4階。

 天文学の分野。天体模型やそれぞれの星の説明、無重力を体験する装置など詳しく知らない人でも楽しめる展示が様々施されている。

 4階の少し薄暗い空間を案内図を思い出しながら回る、平宮さんも1人で楽しんでいるようだ。

 1時間かけて4階を、残り1時間で1から3階を見て回るとちょうど約束の時間になった。計画通りだ。


 久しぶりの、恐らく保育園以来であろうプラネタリウムはとても楽しかった。球体に宇宙を再現するその技術はいつ見ても感動せざるを得ない。

 小、中まともに校外学習にも参加していなかったから科学館も久しぶりだったが、プラネタリウムを見られたことが1番の収穫と言えよう。

 僕にとって星とはとても大切なものだ。小さい頃、始めて星空を見た日、夜空を見ながら家族と外で夕食を食べたあの日から僕にとって星は中心的存在だった。

 いつも宇宙や星の本を読みあさっては、いつか宇宙に行きたいと願っていた。それなのに今、それとはほど遠い進路を辿っているのは全て、あの母親のせいだ。母親と父親と、祖父母と親戚と。

 夢を応援してくれたいた優しい兄もいない今は、星を見ることすら忘れてしまっていた。

 それなのに昨日、久しぶりに見上げた星空は相変わらずそこにあって、綺麗に情熱的に僕を照らしていた。


 プラネタリウムが終わると、園崎さんは直ぐ移動を始めた。科学館に飽きたようで、隣に建つ図書館に移動する。科学館と同じ人が経営している場所で、天文学の本が多く置かれている。

 平宮さんは本をというより建物自体を興味深げに見ながら建物を一周している。一周すれば満足したようで、本を机に運び熱中している。僕も本を手に取るが目が文字の上を泳いでしまう。結局集中できず、1値時間ずっと館内を散策したり机に座って平宮さん達を眺めたりしていた。意外なことにあれだけ賑やかな園崎さんが館内では静かに読書をしていた。しかも読んでいたのはIT系の本。こう言っては悪いが、普段の言動とは似合わないチョイスだ。

 5時前には閉館の音楽が流れ、人が少しずつ外に出て行く。白崎さん達も本から顔を上げ、時間を確認するが平宮さんだけがずっと本を見ている。よほど面白い本のようで、白崎さんに本を取り上げて少し不貞腐れている。

 そんな、珍しい平宮さんの表情も見られて楽しかった小旅行も明日で終わりだから、というこじつけで園崎さんがお寿司を食べたいとごねた。今日も泊まるホテルは同じだからどちらにしろ夕飯を食べる必要があるが、お寿司は高いから遠慮したい。他の2人も乗り気ではないが、園崎さんの勢いに根負けして近くの寿司屋に寄ることになった。

 園崎さんは朝食での大食いを今回も発揮し、持ち金以上に食べてしまったそのお代は3人で割り勘になった。平宮さんもなんだかんだ言いつつ払っていて3人の仲の良さが窺えた。そんなお腹も満ちたどこかゆったりとした雰囲気が流れる車内で、僕はいつの間にか眠っていた。

 3人のしゃべり声が遠くで聞こえて、それが子守歌となって気付けばホテルに着いていて、どうやってかベットに横たわっていた。

 今回は間違えなかったようで、1人で寝ていた。平宮さんの寝るベッドが遠くに感じで少し寂しくもあった。明日が開ければまた1人の寂しい生活が再開する。もう、こんな賑やかな日々は過ごせないだろう。

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