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すれ違いだらけの僕の運命  作者: 甘衣 一語
出会い
3/38

アルバイト

 この世界には男女の他に第二の性がある。発情期があり、男女共に妊娠が可能なω(オメガ)。身体能力や知能が優れたエリート階級のα(アルファ)。人口の9割を占めるβ(べーた)。

オメガの発情期は数ヶ月に一度、数日続き、アルファを惑わすフェロモンを体にまとう。発情期中にアルファがオメガの項を噛むと運命の番となり、番以外へのフェロモンの効果は無くなる。さらに、オメガは番以外に対して拒絶反応を示すようになる。番契約は一度しかできず、解約はできないため事故で番になることがないように、オメガの中には項を保護するチョーカーを着けている者もいる。

 そんな、生まれながらの運命が定められている。

 あの日以降も、あのうるさい人は懲りずに僕に話しかけてくる。その度にカウンターの席に移動して店長や連れの人がその人を僕から離してくれる。

 カウンターは4つしか席が用意されていない。3人が座れば僕の座る席も必然的に決まる。3人の並びはいつも同じで、僕の隣には必ずあの時僕を外に連れ出した人がいる。その人は他の2人の会話に相打ちを打つだけのことが多く、あまり喋らない。特徴があるとすれば僕と同じくチョーカーを着けているという点だけだ。


 いつものようにバイト先の同僚に挨拶をして着替えに向かう。現在のバイト先は自宅近くの農家。野菜の収穫作業が主な仕事内容で、収穫が忙しくなるこの時期だけの短期バイトだ。

 僕はバイト先を転々としている。その方が同僚と仲良くなって家のことや学校のことを聞かれなくて済むし、変に僕に興味を持たれることもない。帰り際、倉庫で作業中だった雇い主から声をかけられる。親切な人で色々とお世話になったが、その仕事も今月末で終わる。早く次のバイト先を見つけなければならない。


 翌週。新しいバイト先の初出勤だ。元々は予定が入っていて明後日の月曜日から出勤の予定だったが、その予定がキャンセルになり、ダメ元でお願いしたら、意外なことに今日から出勤することになった。

 面接の時と同じように入り口すぐのロビーで待つ。10時半に教育係になる人がここに来ることになっている。


 廊下を走る音が聞こえ、そちらに視線を送ると肩を揺らしてこちらに向かう人影が見えた。そこにいたのはいつも僕の隣に座るあの人だった。

 相手は僕を見ると驚くような、疑うような視線をこちらに向けた。

 しばらく手元の書類を眺めていたが、踏ん切りがついたのか諦めた表情で仕事の案内を始めてくれる。

 平宮響(ひらみやきょう)と名乗るその人はよろしくと差し伸べてくれたが、どう受け取ればよい分からず固まってしまった。その反応を見て静かに手が下げられる。その勘違いを弁解したいが、そのタイミングをつかめないまま話は進んでいく。


 そんなやりとりから始まった一日だったが、平宮さんはひとつひとつ丁寧に仕事内容を教えてくれた。

 初日なので工場内の見学がメインだったが、ひとつひとつの道具や部署、働いている人について細かく教え、メモを書いている間は待っており、分からないことを尋ねると丁寧答えてくれた。メモ帳も実は貸して貰ったモノで、そのおかげで大体の作業内容を把握することができた。

 一緒に昼食をとり、午後は実際に少しだけ作業をして、その日の仕事が終わった。タイムカードを切り、工場の玄関前で別れる。

 初日にしてはよい印象のバイト先だった。初日からこんなに楽しかったのは初めてだろう。平宮さんという前例があるからか、僕のチョーカーについて触れてくる人もいなかった。

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