共同生活
文化祭も終わり、またいつものバイト先と家との往復生活に戻った。
そうなると平日は平宮さんとも会えない。この数週間キャンパスに通って同年代の人たちと喋ることが多かった分、誰もいない家は寂しく感じる。
元々僕1人には広かったリビングがさらに広くなった気がする。
文化祭が終わってから1週間。しばらく文化祭に掛かりっきりで見られなかった講義を消化する。あと1つか2つで今月提出のレポートは終わりそうだ。バイトが休みの今日、一気に終わらせたい。
そうやって朝から勉強を続け、気付いたらお昼になっていた。ちょうどレポートの最後1つも終わり、昼食にする。簡単に味噌汁と野菜炒めだけだ。
食器洗いまで済ませたら買い物に向かう。この時間はお店も空いている。
1週間分の食材を手に家に向かう。家から店までは歩いて8分と言ったところだ。遠くはないが、地味に面倒くさい距離。ただ真っ直ぐな道を進むだけ。脇道が2つ、車も滅多に通らない道だ。
そのせいで時々確認を忘れることもあるが、今日は忘れない。ちゃんと誰もいないか確認して。確認して。
驚いた。
何が、と言われると自分でも分からないが驚いた。
車の確認をするためにふと見た脇道に平宮さんと園崎さんが立っていた。引っ越し先の内見をしに来たらしい。確率は低いが、可能性としてなくはない話。必然とも言えるし、偶然とも言える。それほど驚くことでもない、出来事だ。
この脇道を更に進んだ先にある家を見に行ったらしい。手応えはあったようだが、家賃がネックだとぼやいている。ここは都心にも近い。家賃は8万前後が普通だろう。安くても6万。確かに、抑えられるなら抑えたい額だ。
なんでこんなこと言ってるんだ。
そう思っても口から出た言葉は取り消せない。
いや、平宮さんだけなら取り消せたかもしれないが、園崎さんがその気になってしまった。
平宮さんはすごく申し訳なさそうな表情をしているが、僕と同じく園崎さんの勢いに押されている。
その勢いのまま平宮さん達は帰ってしまい、後悔したまま僕も家に帰る。
後悔しても仕方ないが、なんで僕の家で住もうなんて言ってしまったのだろう。
確かに、今の家は元々高校の同級生と一緒に住む予定で借りたものだが、平宮さんとは友人、ではない、はずだ。
図々しい提案だっただろうか。
それから1週間。荷物を整理して平宮さんが引っ越してくる日をそわそわと待っていた。
洗濯物を干し終わり、レポートを進めていると、車の止まる音が外から聞こえる。この辺りのアパートで車を持っている人はいない。平宮さん達だ。
チャイムが鳴り扉を開けると、平宮さんがアパートの人たちに絡まれている。僕もここに入るときに似たような状態になった、懐かしい。しばらくすれば、珍しさもなくなり落着いてくる。
白崎さん達は荷物を家の中に運ぶと直ぐに帰ってしまった。
僕は平宮さんを手伝って食器や食材を片付ける。野菜や肉はないが、調味料類が多い。ただでさえ隙間のないシンク下の空間には、もう置き場がない。残ったいくつかは邪魔にならない場所に適当に置き平宮さんを訪ねる。
僕が普段リビングばかり使うせいで開いていた一室が平宮さんの部屋だ。
、僕の使っていなかった棚を1つ貸し、そこに教材を詰めている。着替えも浴室に置かれたタンスの使っていない段に入れる。2人分と思って買ったタンスは1人では2段で十分だった。
そうこうしている間に、いつの間にか時間は過ぎていた。
慌てて入浴と夕食の準備を始める。今日は平宮さんだけバイトだ。いつものように7時半から。
平宮さんは自分でお風呂を洗って先に入っている。その間に僕が夕食の準備をする。
僕は浴室にいないのに聞こえる水の音に、これから2人暮らしの始める実感が湧く。
夕食が終わると僕もお風呂に入り、時間になると平宮さんは慌てて出ていてしまった。
いつになく、本当にいつぶりかも分からない賑やかさだ。
自分の家がこんなに賑やかなことがなかったから、これから先少し不安だが楽しみだ。
夜、辺りもすっかり寝静まった頃、扉の開く音がして、布団の擦れ合う音がした。
人がいるといつまでの賑やかだ。




