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すれ違いだらけの僕の運命  作者: 甘衣 一語
大学生活
21/38

流行り

 文化祭の始まりは9時。

 近隣住民でも誰でも参加でき、開場前から数人が正門近くをうろうろと歩いている。

 アナウンスが流れ、来客が目立ち始める。屋台は約20個、僕たちのたこ焼き以外にも、焼きそば、クレープ、ジュースにカレーと様々な料理を提供する屋台が列をなしている。校舎前に飲食ブースが設けられ、その目の前にステージ、校舎内に入るとお化け屋敷やメイドカフェ、手作り雑貨の販売などがあるらしい。案内所で配られていた地図に書かれていた。


 僕たちは1時間ごとでシフトを組み、交代で店に立つ。11時までは暇という先輩達のアドバイスで今の時間は2人ずつだ。グループでおそろいのTシャツを着ている。先輩達の言うとおり来客は屋台の前を素通りする。興味を示している人もいるが、まだ昼食には早い時間のため、しばらくしてまた歩き始めてしまう。そんな状態で一緒に店番をしている彩鳥(あやと)先輩との雑談が進む。彩鳥先輩は僕にたこ焼きの焼き方を教えてくれた先輩だ。4年生で関西弁なので初めて会ったときは少し苦手だったが、気さくで話も合うので最近はよくしゃべる。僕らのグループは43人、バンド班には話したことのない人もいるが、たこ焼き班の人とは文化祭の準備期間でかなり親密になった。

 通信課程は僕だけで、他の人たちの授業の話を聞いているだけでも新鮮だ。


 彩鳥先輩とバンド班について話していると交代の時間となった。次のシフトは2時だ。バンドの発表は1時、道具の運び出しがあるのでそれまでの間に昼食を済ませないといけない。

 屋台は一食が大体500円と少し高い。ステージでは劇が始まっている。

 外の冷たい風から逃れるために校舎に入る。他の人も考えることは同じようで外に比べて人が多い。

 占いの館や本の展示、自作アニメの上映会などサークルの展示が多いが、昼食が食べられるような場所はない。校舎内で唯一飲食が出来るカフェには、人が多く並んでいる。

 本格的な手作りのケーキと紅茶が提供されているようだ。


 どうやら料理を提供している場所はカフェか屋台だけのようだ。校舎の外に出てうどんを一杯とたこ焼きを1パック買い、飲食ブースで食べる。ステージではダンスショーが始まっており、かなり盛り上がっている。さっきまでは近所に住むおばあちゃん達が劇を見ていたが、今は大学の生徒や僕たちと同年代の人が多い。

 バンドのリハーサルを見学したときも思ったが、流れてくる曲が全く理解できない。人気な曲らしいが、聞いたこともない。

 そもそも、思い出す限りで一番最後に曲を聴いたのは中学の授業でだ。

 1人でうどんを食べていると、ちょうどシフトが終わったメンバーが現れ一緒にたこ焼きを食べる。彩鳥先輩の厳しい審査を通過しただけあっておいしい。

 そのままチームメイトと話をしていると先輩達からの呼び出しでスマホが震える。ステージが予定より早く進んでいるようだ。

 急いで部屋に向かい、リハーサル通りに機材を運び、出番を待つ。前の舞台発表が終わり進行役が話をつないでいる間に、機材を並べ裏方はステージ脇に隠れる。

 曲が流れ始め、大きな歓声が広がる。この曲も有名らしい。

 大成功でバンドを終え、片付けが終わると屋台に向かう。

 昼過ぎだが客足が途絶えないようで、急いで会計係の人と代わり注文を取っていく。しばらくする客足も落ち着き始める。文化祭自体が終盤に近づいているため、お客さんの足は出口に向き始めているようだ。交代し損ねて30分ほど長く働いた2人が帰り、先ほど同様、彩鳥先輩と2人で店番をすることになる。他の屋台は少し早いが片付けを始めている。

 僕も今日の売り上げを数える。予想よりもかなり人気のようだ。


 電卓と向き合って損益の計算をしていると、聞き慣れた声が3つ降ってきた。

 平宮さん達だ。他の屋台を見てからこちらに来たようで、白崎さんの両手には大量の袋が下がっている。たこ焼きも10パック注文を受け、彩花さんが手際よく焼き始める。

 大学の帰りらしく、平宮さんの格好も普段バイトで見るものとは違う。初めて会った頃の、カフェで見かけたときの格好に近い。

 今来たばかりのようで校舎内まで見て回る時間はなさそうだ。

 明日また来て他を見て回る予定らしい。

 そう聞いて僕も明日の予定を思い出す。今日と同じ時間に屋台の店番。舞台は今日より遅く一番最後の3時頃に出番がある。

 平宮さん達が来る時間はどう頑張ってもお昼過ぎ、僕はすることがある時間だ。

 園崎さんに明日の予定を尋ねられてそう答えると、駄々をこねるような返事が返ってきた。理由は分からないが僕と一緒に回りたいようで、仕事をずらせないかとせがまれる。

 僕1人の独断では発言できない内容に後ろを振り向くと、さっきまでたこ焼きを焼いていた彩鳥さんが直ぐ後ろに立っていた。

 僕の代りに断ってくれるのではと期待していたが、むしろその逆で僕の代りに夕方のシフトに入るという提案を持ちかけてきた。それに返事をしたのは僕ではなく園崎さんだった。

 アナウンスが流れ、平宮さん達は帰って行く。

 たこ焼きが焼き上がるまでの間園崎さんはしゃべり続け、結局平宮さんとはひと言も言葉を交わせていない。

 こうして強引に明日の予定も決まり、文化祭初日は幕を閉じた。

 楽しい1日ではあった。

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