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すれ違いだらけの僕の運命  作者: 甘衣 一語
大学生活
18/38

騒然と静寂

 園崎さんのメッセージをで3人が通う大学構内の地図と、目的地の名前を確認する。地図は念のために紙で印刷したが、そもそも現在地が分からない。

 30分ほど前、意気込んで足を踏み入れた平宮さんの大学。今日、明日と開催されるらしい体育祭を見学するためにやってきたが、普段同じ場所しか行かない僕にはその構内は広すぎた。ひたすら同じ光景が続き、自分がどこにいるのか分からなくなあった。

 端的に言うと、迷ってしまったのだ。

 なんとか白崎さんに連絡して迎えに来て貰らったが、平宮さんも一緒だった。

 当然と言えば当然だが、白崎さんだけだと思っていた僕は少しだけ驚いてしまった。

 平宮さんと会うのは台風の日からたった3日しか経っていないが、1週間ぶりに会ったような気がする。

 そのまま、白崎さんに連れられて移動を続け他の人たちとも合流した。園崎さん達の家族や店長と合流し一気に賑やかになる。

 白崎さんの母親は香織(かおり)さん。園崎さんの母親はレイさん。白崎さんの妹は美優(みゆ)さん。園崎さんのお兄さんは阿須加(あすか)さん。園崎さんのお姉さんは(みやこ)さん。

 平宮さんが紹介して、それぞれ挨拶をしてくれる。香織さんは白崎さんに似てすごく優しそうだが、発言の節々から白崎さん達子どもへの愛情を感じる。対してレイさんは自由奔放な印象だ。こちらも園崎さんの母親らしい雰囲気だ。

 子どもたちは自分たちの自慢で張り合っている2人を苦笑気味に眺めている。

 2人とも心の底から子どもたちを誇りに思っていることが窺え、少し羨ましく思う。もしここに僕の両親が、僕の親族がいたら、2人の言い合いに混ざるのだろうか。と、そんなあり得ない創造をしてしまう。そんなこと絶対にしないだろうけれど。

 けれど、もしも、と考えると少しだけ楽しかった。きっと、お兄ちゃんが一番僕のことを自慢げに話してくれるはずだ。


 しばらくしたら皆で移動を始めた。白崎さんがいないと思っていたら会場に入って、試合の開始を待っているらしい。

 複雑な、僕だけでは絶対にたどり着けない道を経て表れた体育館はかなり大きかった。観客席まで設けられた本格的な体育館だが、今は割れんばかりの大きな歓声で満たされている。

 もう試合が始まっているらしい。観客席に上がると、この大学の生徒らしき人やその保護者らしき人など多くの人が箱詰め状態だった。

 この大学で一番大きな体育館らしいが、既にそのキャパを超えている。

 行われている競技はバスケだ。高校の授業で何度かしたことがあるが、僕自身はそれほど上手ではない。

 座る場所を探す間に始めの試合が終わり、次の試合のアナウンスが流れる。園崎さんの試合が始まるらしい。座ることは諦め、試合が見えそうな場所で待機する。

 トーナメント戦らしい。平宮さんが持っていた冊子でルールを確認する。僕の覚えていたルールで大方合っていた。

 試合が始まると直ぐ歓声に包まれる。熱戦、かどうかは分からないがどちらのチームも真剣に試合をしている。

 園崎さんはいつになく真面目な表情だ。チームを引っ張り、右に左に走り回ってゴールに繋げる。かっこいい、とおもわず思ってしまうほど真剣な表情だ。

 隣を見ると、平宮さんはそんな園崎さんをずっと目で追っている。僕が声を掛けても反応は薄い。

 それがなぜか少しだけ悔しかった。


 いつの間にか試合は終わっていて、邪魔にならない場所に移動して時間を潰す。白崎さん達は他のチームも応援しているが、僕にそれほどのバスケ愛、スポーツ愛はない。平宮さんと、美優さんと3人で外に出て景色を見ながら時間を潰す。時々僕がアナウンスを確認して白崎さんの試合を待っている時間は、長いようで短い。歓声が止み、流れるアナウンスを確認して平宮さん達を呼びに行く。2人で楽しそうに喋っている。美優さんは平宮さんと仲がよい。白崎さんに接するときと同じように、もしくはそれ以上に楽しそうに笑って平宮さんを見ている。こういう光景を見るとき、僕はつい性別を、オメガかベータかアルファかを気にしてしまう。

 そんな卑屈な自分を振り切って2人に声を掛け、会場に入ると既に両チームとも整列をしていた。相手は経験者揃いの強敵のようで、白熱した戦いだった。

 結局負けてしまったが、僕は見るだけで満足だった。園崎さんは悔しそうにしていたが、そんな園崎さんと、白崎さんだけ置いて他の人たちは広場に移動を始めてしまう。少し早いが昼食の時間だ。

 僕が朝に迷い込んだあの広場にまた戻り、弁当を広げる。重箱に入った手作りの料理だ。香織さんが作ったお弁当と阿須加さんが作ったスイーツたちがシートに並べられ、お皿も用意される。きちんと人数分確認し、白崎さんたちを待ってお昼の時間が始まる。

 一番よく食べる園崎さんが真っ先に箸を伸ばし、それに続いて他の人も食べ始める。僕は出遅れてしまった。そんな僕に気付いたからか、園崎さんは取ったおかずを僕のお皿にのせる。唐揚げもスパゲッティもおにぎりも、自分のお皿より先に僕のお皿にのせ、最後に満足そうな笑みを浮かべている。何がしたいのか分からず困惑して目の前のお皿と向き合う。僕には到底食べきれない量が山のように積まれている。園崎さんのお皿にも同じくらいの山が出来ているが、僕にその道のりは険しく食べる前から満腹だ。

 それで口に運べずにいると平宮さんが手伝ってくれる。まだ空っぽのお皿に僕のおかずを半分ほど取り、食べ始める。少し緩やかになった道のりに希望を見いだし僕も食べ始めた。手作りの、愛情のこもった味で、今まで食べた中で一番美味しかった。


 そうして料理を満喫している間も白崎さん達は賑やかにお喋りをしている。試合のことや大学の説明、家族として親子としての他愛もない会話がとても楽しそうで少し羨ましい。そう思いながらその光景を眺めていると、食べ終わった平宮さんが立ち上がった。平宮さんだけ午後は別で行動をしたいらしい。白崎さん達から反論はない。慌てているのは僕だけのようだ。困惑して黙っていると、平宮さんは片付けをして1人歩き出してしまう。

 まだ心は迷っていたが、気付いたら体が動いていた。僕もお皿を片付けて平宮さんの後を追う。

 長距離走を見るためグラウンドへ向かう平宮さんに声を掛ける。驚いた表情でこちらを見ていたが、僕を拒むことはなかった。1度グラウンドに向かった平宮さんは観客用のテントが埋まっていることを確認すると、直ぐに方向転換して校舎に入ってしまった。今日はどの部屋も自由に立ち入ることが出来るらしく。平宮さんは迷いなく校舎を歩き、元々決めていたような迷いない動作で扉を開ける。そこはグラウンド全体が見える場所だった。そして誰もいない、そこからの声も僅かに聞こえる程度の、とても静かな場所だった。風は遮られて日の光だけが僕たちを照らし、しばらく腰掛けているとついウトウトとしてしまっていた。

 次に目を覚ましたとき始めに移ったのは平宮さんの困ったような顔だった。既に長距離走の試合は終わったようで、時間もかなり経っていた。普段なら昼寝なんてしないのにと後悔しながらも、起こさないでくれた平宮さんには感謝した。


 その後白崎さん達とは大学で解散し、平宮さんとも駅で解散した。

 この後も僕はバイトがある。平宮さんは休みだ。

 夜遅くまでで朝起きたときはそのことが憂鬱だったが、それを頑張れば明日はまた大学に来られる。そう思うと少しだけヤル気が湧いた。

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