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すれ違いだらけの僕の運命  作者: 甘衣 一語
トラウマ
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台風

 この世界には男女の他に第二の性がある。発情期があり、男女共に妊娠が可能なω(オメガ)。身体能力や知能が優れたエリート階級のα(アルファ)。人口の9割を占めるβ(べーた)。

オメガの発情期は数ヶ月に一度、数日続き、アルファを惑わすフェロモンを体にまとう。発情期中にアルファがオメガの項を噛むと運命の番となり、番以外へのフェロモンの効果は無くなる。さらに、オメガは番以外に対して拒絶反応を示すようになる。番契約は一度しかできず、解約はできないため事故で番になることがないように、オメガの中には項を保護するチョーカーを着けている者もいる。

 そんな、生まれながらの運命が定められている。

 それから数日経ち、日本に台風が上陸した影響で工場が稼働を止めることになった。その前日、午前中に作業を終え、ほとんどの人はお昼前には帰っていった。僕も4時頃には作業を終えて更衣室に向かった。

 最終確認をしている工場長に声を掛けてから着替え、しばらくすると平宮さんが入ってきた。

 平宮さん達は人がいない分遅くまで働いていたようで少し慌てながらロッカーを開けている。

 外は既に風が強くなり、窓からは木々の大きく揺れる様子が見える。

 ロッカーを閉じて横を見ると平宮さんが白衣のまま青い顔をしている。

 電車が遅延してしまったらしい。白崎さんも他の友人もこので天気では動けないらしい。僕も色々と探してみるが見つからない。仕事が終わってから15分経っても状況は改善せず、平宮さんの顔には焦りが募る。

 僕は、平宮さんに相談されたときから浮かんでいた1つの可能性を見つめる。少し図々しい、まだそれほど仲のよくない平宮さんに言うことを躊躇ってしまう可能性だが他が見つからず遠慮がちに提案する。

 遠慮して断られるかもと思ったが、平宮さんは驚きながらも受け入れてしまった。


 工場から少し歩いた場所にある僕の家。少し古い2階建て8部屋が入ったアパートは、今強風で奇妙な音を鳴らして建っている。

 いつものように鍵を開けて電気をつけ、お風呂の準備をする。そうやって忙しなく動く僕の様子を平宮さんがチラチラと見ている。勢いで提案してしまったがそのことを少し後悔する。

 最近まともに喋っていなかったから少し気まずい。

 所在なさげにリビングで座っている平宮さんを横目で見る。僕はカッパと雨靴を持っていたが、平宮さんは傘だけですっかり濡れてしまっている。急いでお湯を溜めて服を用意し、平宮さんに声を掛ける。

 その間に夕食を用意する。平宮さんの口に合いそうな味付けで献立を考え作り始めると、直ぐに平宮さんは戻ってきた。服は少し小さめだが十分その役割を果たしてくれている。お節介な高校の同級生が毎年誕生日の時に贈ってくれるものだが、残していてよかった。

 夕食を一緒に食べ、平宮さんが片付けをしている間に僕もお風呂に入る。

 夏休みの頃に戻ったようで楽しい反面、あの頃より距離を作ってしまっている自分がいる。自分がアルファであると知られてしまった以上ここで頑張ろうと、決めたのは僕なのに。

 風が更に強くなっている。雨戸を閉め、台風対策に精を出している間平宮さんは静かに本を読んでいる。しばらくするとそのまま寝てしまった。

 僕もまた、布団に入る。明日は1日平宮さんと家にいないといけない。何事もなく過ぎることを願って眠りについた。

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