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すれ違いだらけの僕の運命  作者: 甘衣 一語
トラウマ
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ストーカー

 この世界には男女の他に第二の性がある。発情期があり、男女共に妊娠が可能なω(オメガ)。身体能力や知能が優れたエリート階級のα(アルファ)。人口の9割を占めるβ(べーた)。

オメガの発情期は数ヶ月に一度、数日続き、アルファを惑わすフェロモンを体にまとう。発情期中にアルファがオメガの項を噛むと運命の番となり、番以外へのフェロモンの効果は無くなる。さらに、オメガは番以外に対して拒絶反応を示すようになる。番契約は一度しかできず、解約はできないため事故で番になることがないように、オメガの中には項を保護するチョーカーを着けている者もいる。

 そんな、生まれながらの運命が定められている。

 1度深呼吸をしてから工場長の部屋の扉に手を掛ける。廊下は心許ない僅かな光が点るだけで、この扉の向こうから零れる光の方が強い。

 僅かな心細さを感じながら扉を開くと、その先には向かい合うように座る平宮さんと工場長、そして古寺さんがいた。古寺さんも抑制剤を飲んだようで、今は下ばかり見ている。

 平宮さんに手招きされ、その隣に座るとすぐ本題に移った。

 なぜ更衣室に古寺さんがいたのか、そんな僕に聞かれても仕方のない質問が投げかけられる。古寺さんはずっと下を向いたまま、時折何かを呟いているがその詳細は聞こえない。

 仕方なく僕が質問に答える。そのために1時間も待って貰ったのだ。その間に僕は白崎さんと連絡を取って証拠を集めた。白崎さんは約束通り調べ続けてくれていて、古寺さんの母親とも連絡を取っていた。

 この前見せて貰った写真に母親と電話しているときの録音。これだけでも疑うには十分だろう。これだけあれば言い逃れも出来ないし、警察に被害届を出せばある程度は調べてくれるはずだ。

 僕の話を聞きながらも古寺さんは反論しない。相変わらずブツブツと呟いている姿に怒りがわき上がるが、今怒っても何も変わらない。事態を深刻に受け入れた工場長は警察などに連絡を始めるが、平宮さんは自分がそんな騒動の渦中にいたことをまだ実感できていないようだった。

 ラットの時のことを全く覚えていないが、抑制剤を飲ませてくれたのが平宮さんだったことは状況から理解できた。僕はラットの時に理性を制御できないからかなり迷惑を掛けたはずだ。そのことを謝りたいのに、なにから話せばよいのか分からず言葉に詰まる。そうやって悩んでいる間に、パトカーの音が聞こえ始め忙しくなった。僕は持ってきた2つの証拠を警察に渡して連絡先を伝え役目を終えた。警察がどこまで介入するかは分からないが、少なくとも古寺さんのストーカーはなくなるはずだ。

 長時間拘束されることも覚悟していたが僕も平宮さんも拍子抜けするほどあっさりと帰宅が認められた。ここにきてやっと抵抗を始めた古寺さんを置いて僕たち2人は家に帰った。警察に事件を任せても工場長にはすることがあるようだが、一応は片がついたということでよいだろう。

 久しぶりにオメガのフェロモンに当てられたこともあって疲労を貯めた体は、家に着くなり電源が落ちてしまった。

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