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すれ違いだらけの僕の運命  作者: 甘衣 一語
出会い
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カフェ

 この世界には男女の他に第二の性がある。発情期があり、男女共に妊娠が可能なω(オメガ)。身体能力や知能が優れたエリート階級のα(アルファ)。人口の9割を占めるβ(べーた)。

オメガの発情期は数ヶ月に一度、数日続き、アルファを惑わすフェロモンを体にまとう。発情期中にアルファがオメガの項を噛むと運命の番となり、番以外へのフェロモンの効果は無くなる。さらに、オメガは番以外に対して拒絶反応を示すようになる。事故で番になることがないように、オメガの中には項を保護するチョーカーを着けることもある。

 そんな、生まれながらの運命が定められている。

 僕の日々は毎日同じようなことの繰り返しだ。朝6時に起きて朝食を作り、洗濯などの家事をする。8時からは通っている通信制の大学の講義を視て、レポートを書く。10時からは少し遠い農家でバイト。17時までバイトをして、その後いつものカフェに行く。夕飯だけ食べて帰ることもあるし、誰かに声をかけられれば断らない。19時までに声をかけられなければ店長に店を追い出されるので、そのまま家に帰って夕飯を食べて、寝る。毎日その繰り返し。小さい頃から似たような日々の繰り返しだった。あの頃と違うのは住んでいる場所くらいだ。これからもずっとこんな日常が続くのだと思っていた。


 いつものようにバイト帰り。いつものカフェによって夕飯を食べる。大学入学を契機に引っ越してきてから常連となった僕に店長はいつもコーヒーとサンドウィッチを出してくれる。味の優劣はよく分からないが夕飯にはちょうどよい量だ。料理が出されるまでの間、教材を机に広げて適当に時間を潰していると僕と同じ暗いの若い人が話しかけてくる。この店ではよくあることだ。ゲイバーとかそういった店ではないが客同士で喋る分には特に問題ないから店長もあまり注意できないのだ。暴力沙汰になれば別だが、基本的には客に任される。僕は僕で断るのも面倒だからいつもは誘いに乗るが、今はタイミングが悪い。このまま店を出たら頼んだ料理が食べられない。そう言って断るがなおもしつこく誘って、というよりせがんでくる。まるで子どものようだ。一緒に来た人がいるようだが、その人は諦めた表情でこちらに判断を任せている。だがこちらも断る気力がもったいない。

 僕は連れの人が座っている席の近く、1つだけ空いているカウンターの席に店長に確認してから座る。席の移動もこの店ではよくあることだ。しばらくはまだしつこく誘ってきたその人も、連れの人に注意されてさすがに大人しくなった。そのタイミングで料理が出され、1つずつ口に入れる。隣の2人にはもう1人連れがいたようで、僕の隣にその人、その隣に他の2人が座って楽しそうに喋っている。特段料理を注文するわけでも、待ち合わせをしているわけでもない。この店へ来た目的は他の客と同じなのだろう。

 僕の隣に座っている人だけが不機嫌そうにこちらを見ている。こちらも僕と同じくらいの年齢で、オメガなのかチョーカーをつけているが、オメガらしさを感じない。この店に来ている以上そういう目的があるはずだが、その人にはその雰囲気がない。


 夕飯を食べ終えると、待ってましたとばかりにさっきの人から誘われる。夕飯が終わればといったが、まさかそれを待つとは思わなかった。確かに夕飯が終われば断る理由はない。断わった後が面倒そうだが相手をするのも面倒そうだ。

 それにもう時間だ。助けて欲しいと店長を見ると既に行動してくれていた。僕の隣に座っていたあの人が僕の腕を取って店を出て行く。さっきの人は少し名残惜しそうに手を振っているが、そこは割り切っているようでまた別の人を探し始めている様子が視界の先に移る。躓きそうになりながら店を出ると直ぐに手は離れる。本当に店長に頼まれたから僕を連れ出しただけのようで、僕が歩き出すとその人も駅の方向に向かって歩き出した。

 あのカフェでは6時になると飲酒できない年齢の人は追い出される。他の飲食店でもそうであるようにカフェでもアルコールが出される。8時には閉店で店長も目を光らせているが、万が一の事態に備えて僕は店から出るように言われる。別に時間を設けなくてもそんな事態になることはないだろうが、今日みたいな面倒な誘いを断る口実にもなる店長なりの優しさだろう。

 つまり僕がこれ以上ここにいても店には入れない。僕はいつものように帰路についた。いつもと少し違う、けれど大して変わらない日常が今日も終わる。

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