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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最強と謳われた男、幼馴染に敗北す~魔王を倒した俺だったが、恋という感情が理解できないのは何故なのだろうか~

作者: ガクーン

皆さんどうも、ガクーンです。

新しい物語を書きたい! でも、連載は難しいし……と悩んだ結果、「そうだ! 短編で出せばいいじゃないか!」と閃き、やる気のある内に書き上げました。

もし、好評なら連載もありかな……と考えちゃったりして。

という事で、じれったい展開で短いながらも書いてみました。

では、お楽しみください。

 最強――それは最も強い者……つまり、その世界で一番強い者に与えられる称号。



 武を極めんとする者にとって、一つの到達点でもある最強という称号は喉から手が出るほど欲しいモノでもあり、男として生まれたならばいつかは授かってみたいと誰もが一度は考えるであろう。



 そんな最強という称号。歴史の中でも両手で数えるほどの者しか与えられていなかったのだが、なんと齢23という、歴代の最強達の中でも稀に見る速さで授かった男がいた。


 その男は天に愛され、世界で一番強いとされた魔王ガーリッシュを勇者パーティーの一員として倒し、魔から人々を開放した者でもある。



 その男の名はアイク・ゼルロック・シュタイン。アイクは元々の名。ゼルロックは魔王を倒した時に授かった名。そして、シュタインは初代、最強の名を冠するシュタインから拝借した名だ。



 そんな名実ともに最強と成ったアイク。


 勇者でさえ、彼には逆立ちしても勝てないと言わしめたアイクであったが、その彼でさえ俺では勝てないと言わしめた者がいた。


 その者の名は……




~~~



「アイク……朝だよ」


「う……ん?」


 誰かの声が聞こえる。


 その声は俺にとって安らぎを感じさせ、更に深い眠りへと導くかのような甘いモノであった。



「だから……朝だって」


 その声の主は俺の肩を揺さぶり、どうにか起こそうと奮闘中。


 ふっ、甘い。


 俺は起きるのが大の苦手。


 このぐらいで簡単に目覚める俺では……


 腰まで後退していた布団を頭まですっぽり覆うように引き上げる。



「あーもう! 早く起きないと……」


 何か言っているようだが、俺には関係ない。


 もうひと眠り……


 こうして俺が何度目か分からない、天国……眠りに入ろうとした時。



「……おば様に言いつけちゃおうかな」


 ボソッと何か重大な事を呟く。



 どうやったっても、俺が起きる事などありは……はっ?


 俺の体が警戒を鳴らす。


 途端に眠気が過ぎ去り、代わりに残るのは焦りただ一つ。



「起きた。今起きたぞ」


 コンマ一秒にも満たない時間の合間に俺は布団から這い出て、その人の前で……


 女幼馴染、ミンファの前でお行儀よく、正座をする。


 そんな俺の幼馴染ミンファは茶髪の女性だ。


 身長は160に満たない位。髪を肩につかない位まで伸ばしており、顔は整っている方だと思う。



「良くできました」


 彼女は俺の一連の行動が面白かったのか、口元を抑えて笑っていた。


 一体これの何処が面白いのか……未だに見当がつかん。



「もう下にご飯用意してあるから、着替えてから来てね」


「あぁ……」


 彼女はひとしきり笑い終えると、俺が寝ていた布団などの寝具を両手いっぱいに持って、一階へと去っていく。



「……久しぶりの危機だったな」


 床に大の字で仰向けになり、何の考えも無く天井をボーっと見る。


 外からは鳥が鳴く声が聞こえ、下からは楽しそうな笑い声が響いてくる。



 こんな風に好きな時間まで寝られて、命の危機を感じる事のない世界になると誰が予想できただろうか。




「本当にこの世界は平和になった」


 俺がいるこの世界、ファーラッドはつい先月まで魔王ガーリッシュに支配されていた。


 そう、つい先月までだ。



 100の魔法を操り、100年以上もの間この世界を蹂躙し、魔の世界を築き上げようとしていた厄災の魔王ガーリッシュ。彼は破壊と侵攻を繰り返し、ものの100年で世界の半分を掌握。それからも物凄い勢いで領地を拡大していった。


 もちろん人間達もその間、指をくわえてじっとやられていた訳では無い。


 剣を極めた者、剣聖をはじめとする猛者達を始めとする強者を各地に配置し、侵攻を抑制。そして、その中でも上位の実力を持つ、神に愛された者、通称勇者を軸にした勇者パーティーを集め、魔王の首を取る計画が何度も行われた。


 その数、合計13回。


 勇者は10年間隔で天から選ばれ、その度に国を挙げて勇者を育成。そして選りすぐりの強者をお供に用意し、魔王に挑ませた。


 だが……その勇者パーティーのほとんどは道半ばで敗北。


 魔王本人までたどり着いた者は誰一人いなかった。



 ……ただ一人を除いては。



「本当にあいつは強かった」


 そう。最強の名を冠するアイク・ゼルロック・シュタイン以外には。



「100の魔法を使うなんて言われていたから、相当魔法が上手いんだろうと思っていたが、即死魔法を使うなんて思ってもみなかった。しかも、それらを避けて魔王を倒したとしても、何事もなかったかのように復活。手の付けようが無かった」


 アイクは魔王戦を思い出し、苦笑いをする。



「……だが、復活するって言っても、それはあいつの魔力が尽きるまでの話。それまでひたすら致命傷を与え続け、復活できなくなるまで魔力を使わせたら……」


 そう言ってアイクは右手で魔王の首を切り落とすシーンの再現をしていた時。



「アイクー! ご飯冷めちゃうよ!」


 下からミンファの声が聞こえてくる。



「っ! 忘れていた」


 俺は慌てて着替え終えると、急いで一階に降りていったのであった。




~~~


「「「ごちそうさまでした」」」


 食事を食べ終えると、俺は日課の素振り。ミンファは食器の皿洗い。母は洗濯物を干しに各自準備を始める。



「ミンファちゃん。いつも悪いね」


 そう言うのは俺の母。



「このぐらいさせてください。むしろ、お食事をご一緒させてもらっている私がお金を払わなくちゃいけない立場なのに……」


 ミンファは申し訳なさそうに母に話す。



「何言ってんだい! お金ならアイクの褒賞金がまだたくさんあるんだ。そうだろ?」


 母が俺にウインクしてくる。



「……そうだな」


 俺はため息をつきながらいつもの事のように返事をする。



「ほら、アイクもあぁ言ってるんだ。ミンファちゃんはなにも遠慮しないでいいんだよ」


「そんな……。アイク君。ごめんね」


 ミンファが手を合わせ、首を傾げながら申し訳なさそうに謝ってくる。



「別に大丈夫だ」


 これは本当だ。なんたって、魔王を倒した褒賞金と旅の道中に倒した凶暴なモンスター達の素材代で金は有り余るほどあるからな。



 そうして俺は壁に立てかけてある業物の剣を手に取り、庭へと素振りをしに出掛けたのであった。



~~~


「ふっ! ふっ! ふっ!」


 三万五百三十一……三万五百三十二……


 心の中で剣を振った回数を数えていく。


 世界は平和になり、無用となった己の力。前までは身を守る事を目的。そして、魔王を討伐するという思い出我武者羅に素振りをしていた俺であったが、何故か今も義務の様に素振りを行っていた。



 別にこんな面倒な事やらなくてもいいのに……


 淡々と素振りをこなしながら自問自答を繰り返す。


 楽しくなんかないし、昼寝と称して惰眠を貪っていた方が楽で気持ちいい。



 手を一切止める事無く、平和になったその日から考えている事を再度思考する。



 だけど俺は何故……


 何度も己に問いかけた疑問。その度に答えに出会えず、考えるのを放棄した問題。


 アイクは無表情で全身から汗を発しながら回数を数える。



 というか……



「ふっ! ふっ……おい」


 突然、アイクは素振りをする手を止め、茂みへと視線を向ける。



「いるのは分かってる。出てこい」


 不自然な気が漂い、小さな物音がたびたび聞こえてきた場所に視線を向ける。



 それから数秒後。



「やっぱりバレてたか」


 観念した様子で出てくるミンファ。



「最初からバレバレだ」


 三万四千を超えたあたりからいたか。


 ミンファだったから見逃していたが、流石にずっとは気になって素振りもしてられん。



 そんなミンファは一瞬俺の顔を見て、目を逸らす。



 この仕草は……


 小さい頃からの付き合いである俺にとって、非常に見慣れた彼女の仕草。



 いつもは目を逸らさないミンファが俺の目を見ないという事は……何かを隠しているな。


 当の本人は何も気づいていないのか、俺の顔を見て視線を逸らすという行為を無意識に何度も繰り返し、俺との会話を続けていた。



「おい……」


「うん? どうかした?」


 どうかしたって……


 俺は頭を抱えながら。



「話せ」


「え?」


「だから話せと言っているんだ」


「一体何のこと?」


 こいつ……この状況でまだ隠そうと言うのか。



 口下手なアイクと、アイクの言わんとすることを本当に理解していないミンファ。



「だから……俺に隠している事を話せと言ってるんだ」


「っ!」


 顔を真っ赤にし、俯くミンファ。



 しまった……何かやってしまったか?


 傷つけようなんて意図は全くないのだが。


 ミンファを傷つける気は一切ないアイク。


 自分が口下手な事を理解しているアイクは、相手に悪いと思いながらも思った事をぶつけていくタイプなのだ。



 こういう時はどうすれば……


 困ったアイクは仕方なく、ミンファへと近づき。



「っ! アイク!?」


 俯く彼女の頭を豆だらけのゴツゴツの手で優しく撫でる。



「別にお前を傷つけようとした訳じゃないんだが……」


「ううん! 違うの! ただ一緒に買い物に行ってくれないかなと思っただけで!」


 撫でられたミンファは少し硬直したのち、大慌てで頭を上げ、本音を言う。



「……なんだ。そんな事か」


「そ、そんな事かって……」


 ミンファはプルプルと震え、ほっぺたを膨らませる。



「どうせ、日課の素振りがどうとか言って……「いいぞ」……え?」


 またもや固まるミンファ。そして、信じられないと言った様子で目を少し潤ませながら。



「ホントに!? 今言った事、後から嫌だって言っても無効だからね!」


 勢いよくアイクに迫る。



「あ、あぁ……」


 そんなミンファにタジタジのアイク。


 するとミンファはパッと花を咲かせたかのような笑みを浮かべ。



「やった! じゃあ、約束だからね! 場所は……」


 一方的に場所と時間を指定し、何処かへと去っていったのであった。



「……ふぅ」


 ミンファの姿が見えなくなり、一息をつく。


 俺にここまで迫れるのは母とミンファの二人ぐらいだろう。


 アイクは剣を下ろし、ドサッと地面に座り込む。



「……少し休憩したら残りの素振りをこなして、あいつの買い物に付き合わないとな」


 数分、空に浮かぶ雲の動きを観察しながら息を整えたアイクは残りの日課を消化する為、再度剣を振り始めるのであった。



~~~


「ミンファとの待ち合わせ場所は……ここか?」


 待ち合わせ時間よりも20分早く来たアイク。そして、目の前には大きく『愛とファンダラの蜜』の看板が立っていた。



 愛……は分かるが、ファンダラとは何だ? 人名か?


 不思議な店名もあるものだと言った様子で店内へと入って行くアイク。



「いらっしゃいませー! 何名様でしょうか?」


 店内は和気あいあいとしており、何故かお客のほとんどが男女連れ。



「ミンファという女性が先に来ていると思うのだが……」


「ちょっとお待ちください」


 そう言ってウェイトレスが店の奥へと入って行く。



 やはり20分前は早すぎたのではないだろうか。それに、この格好も……




~遡るは1時間前~


「ただいま」


「あら、お帰り。今日は早かったね」


 アイクの母がリビングで出迎える。



「ちょっと用事が……」


「っ! それってまさか……ミンファちゃんとじゃないだろうね?」


 鋭い一言。思ってもみなかった発言にアイクはビクッと一瞬停止し。



「やっぱりミンファちゃん関連なんだね。私に話して……」


 母に話すと面倒だ。ここは無視して……



「……部屋に戻る」


 何も語らずその場を離れようとするが……



「ちょっと待ちな」


 母に肩を掴まれ。



「まさか……この格好で出かけようだなんて考えてないだろうね?」


「いや、荷物を置いてこのまま行こうと思っていたんだが……」


 すると母は手を頭に当て。



「ほんとこのバカ息子は……まずはちゃっちゃと風呂に入ってきな! 服はこっちで用意しておくから。あと、待ち合わせは何時だい?」


「あ、あぁ。時間は――」


「っ! もうそんなに時間がないじゃないか! ったく、こんな時間まで素振りなんてして……」


 まだ1時間前じゃないか……


 アイクは時計に目をやり、何故母がそこまで落胆しているかが分からない様子。



「ほらっ! 早くしてきな」


 そうして風呂に入る事を強要されながら、母が用意した服を着て準備を終える。



「さっきより良くなったじゃないかい」


「……そうか?」


 鏡の前で自身の服装を再確認するアイク。



「動きづらそうだしさっきの服装の方が……」


「もうほんとこの子ったら。さっさとミンファちゃんと待ち合わせの場所に行ってきな」


「まだ40分前……「いいから!」」



~~~


 こうして家を追い出されたアイク。


 やはりまだミンファは来ていな……



「あっ、お客様。こちらへどうぞ」


 まさか、もう来ているのか……?



 先ほどのウェイトレスが戻ってきて、アイクを中へと案内する。



 オシャレとは程遠い俺でさえ、洒落ているなと感じる内装。


 カウンターとテーブルの2種類の席があり、俺が連れていかれたのは調理人を一望できるカウンター席側であった。



「……あれは」


 連れていかれた席には白いワンピース姿の女性が一人。



 トクン……


「何だ?」


 俺は女性の後ろ姿を見ながら心臓近くを手で押さえる。



 久方ぶりの心臓の鼓動を感じた。


 いつもは強敵との戦いの時に感じる事が多かった現象。



 俺の体が無意識に何かに備えろと警告を放っているのだろうか?



 アイクは周りを見渡す。


 危険な人物は見られない。その前に、魔王幹部レベルの敵じゃなければ俺の相手にはならんだろう。


 一応、警戒はしておこう。



「あれ? いつの間に来てたの?」


 その時。目の前にいた女性がアイクに気が付き、振り向く。



「っ! ミンファ……なのか?」


 いつもと違う雰囲気のミンファに呑まれるアイク。しかも、ミンファは普段しない化粧まで施しており、いつにもなく綺麗だと率直に感じた。



「もう、何言ってるの。私以外、あり得ないでしょ」


 彼女はふふっ、と笑う。



 トクン……トクン……


 またっ!


 先ほどよりも心臓の鼓動を繊細に感じ、動揺を見せる。



 ミンファの前だ。冷静にいかなければ。


 

「そ、そうだな」


「……変なの。ってか、そんな所に立ってないでこっちに座れば?」


「あ、あぁ」

 

 ミンファに誘導されるように隣の席に座る。



 いつも何を話していただろう。日常会話……というモノでも無かったし、ほとんどミンファから話題を振ってくれていたような気もする。


 二人は会話をすることなく、時は過ぎていく。


 そして、最初に沈黙を破ったのは。



「ねぇ、アイク」


「……なんだ」


「今日の私、どう?」


 アイクは言葉を詰まらせる。



 何故か言葉が出ない。


 ミンファはアイクの目をじっと見て、アイクの返答を待つ。



 ただ、いつも通りに返事をすればいいだけじゃないか。ただ、一言。綺麗だ、という言葉をかけるだけで。


 しかし、今のアイクにその言葉をかける勇気など持ち合わせていなかった。



「……ううん。何でもない。忘れて」


 ま、待て。


 ミンファは悲しそうに顔を逸らし、目の前にある飲み物に口を付ける。



 おい俺。一体どうしたんだ。何故ミンファの悲しむ姿を見て黙っている。


 何のために力を付けたと思ってるんだ。皆を守るため……いや、一番の理由は……


 その時。過去の思い出がよみがえる。



~~~


『ミンファ!』


『うぅ……アイク。お父さんが……お父さんが……』


 俺とミンファの父は既にこの世にいない。


 魔王の勢力に対抗する為の兵として戦場にかられ、とっくの昔に命を落としている。



 そうだ。この時。俺とミンファの父の訃報の知らせが届いた時に約束したんだ。



『……俺。決めたよ』


『……アイク?』


『強くなる。強くなって……君が笑っていられる世界を取り戻す』


『……ふふっ。何それ……』


 ミンファは枯れたであろう最後の涙を拭きとり。



『分かった。待ってる』


 アイクにとって忘れる事の出来ない、最高の笑みを浮かべてくれたあの時の笑顔を思い出す。



~~~


 彼女の笑顔を守るためにじゃないのか。



「ミンファ……俺」


 悲しそうなミンファを横顔を前に、アイクはようやく重い口を開こうとした瞬間。



「うわっ! この子。チョーかわいいじゃん」


「ホントだ!」


「ねぇ、お姉ちゃん。俺らと遊ばない?」


 横から3人組の男性がアイクを無視してミンファにちょっかいを出し始める。



「だ、誰? や、やめてください」


 ミンファは嫌そうに抵抗するが、3人は気にも留めず。



「いいじゃん。遊ぼうよ」


「あっちで俺達飲んでるから、一緒に……」


 相当飲んでいるようで、一人の男が無理やりミンファの手を握り、自分達への席へ連れて行こうとする。



「きゃあ、離して……」


 ミンファは抵抗するが男たちの方が力があり、このまま連れていかれるかと思われた時。



「おい」


「ほら、早くあっちに……」


 男の肩を掴み、無理やり動きを止めるアイク。



「イタッ! イタタタタ」


 すると男は痛そうに自分の肩を掴むアイクの手を掴み、引き離そうとする。



「おい! そいつに何を」


 もう一人の男は仲間を助けようとこぶしを握り、アイクに殴りかかる。



「お前らこそ。ミンファに何をしている」


 そんな攻撃をいとも容易く体を少し移動させるだけで避け、腹を殴る。



「ぐはっ!」


 その男は苦痛の表情で倒れ込み、もう一人のアイクに肩を掴まれた男は痛みからミンファの手を放し。



「やっと放したな」


 その瞬間、顔面にストレートをお見舞いする。



「ちっ! 何だよお前! お前こそこの子の何なんだよ!」


 仲間をやられ、我を失った3人目の男はアイクへと襲い掛かる。


 しかし、アイクは冷めた視線を送りながら避け様に男の頭を掴み。


「へっ?」


 男の体が円を描くように地面を離れ、アイクは男を地面へと叩きつけ。



「約束を誓い合った仲だ」


 言葉を吐き捨てる。



 その状況に周りの客は唖然。



 しまった。やり過ぎたか?


 ミンファの事でいっぱいいっぱいだったアイクはしでかした後に内心、焦り始める。


 

 くそっ。ミンファがいる前でやらかしてしま……


「兄ちゃん! よくやった!」


「かっこよかったよ!」


 アイクが想定していたのと反対に、周りから熱い歓声が飛び始める。



 この声は一体……っ! ミンファは?


 状況に混乱していたアイクは、ミンファの事が気になり後ろを振り向くと。



「んん……」


 顔を真っ赤にさせたミンファが両手で顔を覆っていた。



「……ミンファ? 顔が赤いぞ? それに怪我は……」


 さっきので怪我を負ったのか? 


 アイクはミンファの手を取り、怪我をしていないか体を確認してまわる。


 見たところ怪我は……



「だ、大丈夫だから!」


「しかし……」


 心配でミンファを見ていると。



「ちょっとだけ放っておいて」


「わ、分かった」


 これは本当に放っておいて欲しい時に見せる表情……やはり、やらかしてしまったか。



 顔を隠すミンファと、頭を抱えるアイク。



~ミンファの気持ち~


 もう、アイクの馬鹿……こんな所であんな恥ずかしい言葉……


『約束を誓い合った仲だ』


 だなんて……


 もう、バカバカバカ!



~一方のアイク~


 今から謝っても許してもらえるだろうか。


 いや、何かミンファの欲しいモノでも一緒に……


 しかし……


 すれ違う二人の感情。


 

『『『いや、この二人何してんの?』』』


 そして、客の二人に対しての呆れ。



 ミンファは真っ赤な顔を隠して体をもじもじとくねらせ。アイクはこの世の終わりだと言わんばかりに表情でその場を立ち尽くしている始末。


 こうして二人は心がすれ違ったまま、この場を後にするのだがそんな事、二人は知る由はないだろう。



 ここでもう一度言おう。最強の称号は『武』の頂に上った者のみ与えられるもの。そこまで到達するのに膨大な修行と折れない心が必要だ。


 だが、そんな者たちでさえ勝てないモノがある。



 それは……恋。


 そして世界最強と謳われる男、アイク・ゼルロック・シュタインもその例に漏れず、幼馴染のミンファに勝てない運命に生まれてきたのだ。




~終わり~

お読みいただきありがとうございました。

この話が面白いと思って頂いたら高評価等をよろしくお願いします!

評価してもらえたら作者がとってもとーっても喜びます。

また、何かいい話が思いついたらその都度、短編で書き上げようかなと考えております。

もちろん、高評価なら連載も考えます!

それでは、最後までお付き合いいただきありがとうございました!

私の他の作品なども興味があれば見てもらえると嬉しいです。

では、また違う作品でお会いできれば。

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