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枯れて候ふ  作者: BOSSガス爆発
8/9

秋の扇(アキノオウギ)

『こないだアニソンのバラエティーをTVで観てましてね。かの、変身時スッポンポンになる女性が主人公の――』


 やや乾燥した秋晴れの午後。

 メリーアンを共連れに(やしき)を抜け出し、とある神社にやって来た。

 銀杏(いちょう)が鬱蒼と茂り、日中でも薄暗い。

 近所の猫が集う、その名に銀杏を冠した(やしろ)


 ここに、「違いの分かる」老猫(おいねこ)がいる。「ろうびょう」でも可。

 オグラ名誉会長――皆から親しみを込めてそう呼ばれる、大柄な黒猫だ。


「ああ、蜂蜜が光った、てやつかい」


 会長が愉快そうに笑う。


「ハ●ーフラッシュ! ハ●ーフラッシュ!」

『あれ、「お尻の小さな女の子」て歌うでしょ? どういう事です?』

「さて。当時の流行りかどうか……ワシは安産型がよいなぁ」

『私もです』

 

 会長との談笑は、稀少な私のストレス解消。

 こんなに心地好い相手はいない。



『もうすぐ、銀杏もまっ黄っきですな』

「一年は早いねぃ」


 急に江戸弁。会長は生粋の江戸っ子だ。


「カンガエルナ! カンジロ!」

「そりゃ「アチョー!」だ。李●龍に謝んなメリーアン」

『そういえば会長。例の女性は、その後どうなりました?』

「うむ……」



 夏の間、この社でよく逢い引きをしている中年のカップルがいた。

 だが夏も終わりに近付いた頃には、女の方が独りで訪れることが多くなった。


「やはり、不倫だったんだろねぃ」

『ですか』

「ツグナイ! ツグナイ!」


 会長はメリーアンに微笑んだ。


 徐にこちらへと向き直り、


「秋の扇というヤツだねぃ」

『秋の扇?』


 ――『秋の扇』。

《男の愛を失った女、の例え。扇は夏に重宝されるが、秋には必要とされなくなるため。→中国の故事》。



『なるほど、深い。私はてっきり、事件かと』

「否定できねぃな」


 仄かに、そんな匂いを嗅ぎとったと感じたのだが……。


 私はこれでも、「禁じられたマ●コ」――じゃない、「科●研の女」で学習したつもりだった。

 あの男の顔に浮かんでいた、黒い焦燥の陰……。

 見間違いないではなかった、はず。


 私は思わず鳴いた。


『我々は必ず! ホシを挙げりゅッ!』

「それ違うヤツ。噛んどるしー」

「ソウサイチカチョー! ソウサイチカチョー!」

『あ! そっち?! チョー恥ずかしいー』



 所詮、井戸端会議だ。

 他愛のない妄想で勝手に盛り上がるだけ。


 だが、こんな一時(ひととき)も我々畜生には必要なのだ。

 断じて、好きな時に餌を(ついば)み、喚いているだけの生き物ではない。


「……一年は早いねぃ」


 会長はまた、しみじみ繰り返した。


 ボケた……?

 そんなワケあるかい。

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