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枯れて候ふ  作者: BOSSガス爆発
6/9

阿吽の呼吸(アウンノコキュウ)

 ――数日振りに早朝の散歩に繰り出した。

 既に日はのぼり、街並みは白く煙っている。

 谷中方面へと足を延ばし、旧藍染川付近を漂っていると、妙にピリリとした空気に纒わり付かれた。

 秋……?



☆☆



 今日は朝から、大御所(先代社長)(さき)御台様(先代の奥方)、それと若の親子三人が不在だ。

 日曜を狙っての「お見合い」が組まれたのだ。

 相手はどの道「良家の子女」に違いない。

 恐らく上手くは運ばないだろう。ご苦労なことだ。



 そんなワケで、邸内には生(ぬる)い空気が充満していた。

 使用人は皆、普段より表情筋が緩んで見える。

 こういう時だよ……事件が起きるのは。

 ラストシーンは多分「東尋坊」だ。

 ちと遠いな。





 昼過ぎ、窓からメリーアンが滑り込んで来た。

 黄色い羽をバタつかせる。


「タイサタイヘン! タイサダイヘン!」


 どしたワト――死んでもワトソンなワケあるか!


「ワトスン!」


 それっぽく言うな。なんだそのドヤ顔は。

 てか、私に代返しろと? 学籍も無いのに。


「アウン! アウン!」


 なんだ? 「阿吽の呼吸」?(強引)

《互いの「絶妙な」気持ち、調子。また、それがピッタンコ合うこと》

 だな。


 ほけっとした顔をするな。

 似てるけど間違った例も聞いとくか? 仕様がないなー。


「あー……うん」→これは違うな。微妙だが。上の空、或いは渋々。

「あ……うん?」→明らかに違うだろ? 某か思い出した、気付いた?


 そういうコトだ。どーゆーコトだ!

 日本語は面白いな、なあ?

 どうだ、メリーアン。


「イエス・マム! イエス・マム!」


 そこはイエス・サーでいいよ。



 なんて? 二階で聞いた? 「あうん」を? 

 はて……。


 使用人の××(男)と△△ちゃん(女)が? 大旦那の書斎で? 掃除中に?

 汗まみれでコマンドサンボをな……ふうん。



 ――なるほど。そりゃ多分『アフン♥』だな。


 似てるけど違うやつ。「アフン♥の呼吸」か。ウハハ!


「アフン! アフン!」


 大声で連呼するな。その三文字は忘れたまえ。君にはまだ早い(?)。

 二階で目にした行為(チョメチョメ)も忘れろ。長生きしたければな。

 いいか? 返事!!


「……ションボリ・サー……」


 なぜショボくれる。


「……ザンネン・サー」


 なんくるないさーみたいに言うな。


 まああれだ、子のいる家庭のパパとママは、夜中にプロレスをする習慣があるのだが……。

 いずれ詳しく教えてやる。元気出せ。



 ……一緒にピーヒャラでも観るか? ぱっぱぱらぱーって。日曜だし。

 我々に曜日なぞ関係ないがな。ハハハ。



 あの……ハマグリさんも観ていい?

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