阿吽の呼吸(アウンノコキュウ)
――数日振りに早朝の散歩に繰り出した。
既に日はのぼり、街並みは白く煙っている。
谷中方面へと足を延ばし、旧藍染川付近を漂っていると、妙にピリリとした空気に纒わり付かれた。
秋……?
☆☆
今日は朝から、大御所と前の御台様、それと若の親子三人が不在だ。
日曜を狙っての「お見合い」が組まれたのだ。
相手はどの道「良家の子女」に違いない。
恐らく上手くは運ばないだろう。ご苦労なことだ。
そんなワケで、邸内には生温い空気が充満していた。
使用人は皆、普段より表情筋が緩んで見える。
こういう時だよ……事件が起きるのは。
ラストシーンは多分「東尋坊」だ。
ちと遠いな。
☆
昼過ぎ、窓からメリーアンが滑り込んで来た。
黄色い羽をバタつかせる。
「タイサタイヘン! タイサダイヘン!」
どしたワト――死んでもワトソンなワケあるか!
「ワトスン!」
それっぽく言うな。なんだそのドヤ顔は。
てか、私に代返しろと? 学籍も無いのに。
「アウン! アウン!」
なんだ? 「阿吽の呼吸」?(強引)
《互いの「絶妙な」気持ち、調子。また、それがピッタンコ合うこと》
だな。
ほけっとした顔をするな。
似てるけど間違った例も聞いとくか? 仕様がないなー。
「あー……うん」→これは違うな。微妙だが。上の空、或いは渋々。
「あ……うん?」→明らかに違うだろ? 某か思い出した、気付いた?
そういうコトだ。どーゆーコトだ!
日本語は面白いな、なあ?
どうだ、メリーアン。
「イエス・マム! イエス・マム!」
そこはイエス・サーでいいよ。
なんて? 二階で聞いた? 「あうん」を?
はて……。
使用人の××(男)と△△ちゃん(女)が? 大旦那の書斎で? 掃除中に?
汗まみれでコマンドサンボをな……ふうん。
――なるほど。そりゃ多分『アフン♥』だな。
似てるけど違うやつ。「アフン♥の呼吸」か。ウハハ!
「アフン! アフン!」
大声で連呼するな。その三文字は忘れたまえ。君にはまだ早い(?)。
二階で目にした行為も忘れろ。長生きしたければな。
いいか? 返事!!
「……ションボリ・サー……」
なぜショボくれる。
「……ザンネン・サー」
なんくるないさーみたいに言うな。
まああれだ、子のいる家庭のパパとママは、夜中にプロレスをする習慣があるのだが……。
いずれ詳しく教えてやる。元気出せ。
……一緒にピーヒャラでも観るか? ぱっぱぱらぱーって。日曜だし。
我々に曜日なぞ関係ないがな。ハハハ。
あの……ハマグリさんも観ていい?




