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精霊に導かれる〜公爵子息と精霊の物語〜  作者: とこ


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第十七話 精霊に誓う人

 挙式は厳かなものになるだろうと思っていたが、楽器隊の演奏からすると、想像を越えて賑やかな雰囲気に感じる。


 親族席にいるレーナが招待客であるファブリツィオ達の方に向かって手を振っている。隣の二コーラは苦笑いだ。演奏がやみ、まずは、新郎であるエミディオが入場した。白のタキシードを着ており、胸には同盟国三カ国とハーシュトレイ王家の紋章も飾られていた。


 「あの方は」


 エミディオを先導するのは、アレックスだ。リータ国新王に即位し、来られないだろうと思われていたため、場内が若干ざわついた。

 そんな場内の様子に気を配る素振りもなく、二人は教会の真ん中まで並んで歩いた。


 「新郎を導く者、誓いを述べよ」


 神父がそう言うと、アレックスがエミディオの方を振り返る。


 「弟とその新しい家族を祝福しよう。神と精霊の導きのままに」


 アレックスは帯剣していた剣をエミディオに渡す。エミディオは剣を受け取り、帯剣する。


 「兄の導きにも祝福を」


 エミディオが膝を折って最高礼をとると、アレックスは軽く礼をして、親族席に向かった。


 アレックスが着席するのを見て、神父が式を進める。


 「新郎、エミディオ・バンデーラの妻となる者の入場を祝福しよう」


 再び盛大な演奏が始まり、ゆっくりと扉が開く。


 「綺麗……」


 マリアンジェラが思わず感嘆のため息をつく。

 ウエディングドレスを着たシルヴァーナは自信に満ちた表情で、真っ直ぐにエミディオを見つめている。父であるバンデーラ前公爵にエスコートされ、エミディオに向かってゆっくりと歩いてゆく。


 父の手を離し、エミディオの手を取る。前公爵が少しだけ目に涙を滲ませていたことからも、彼女が愛されて育ったことがよく分かる。


 二人は手を取り合い、階段を登って神父の元に辿り着く。

 ウエディングドレスの長い裾はレースになっており、赤い絨毯の敷かれた階段に美しく映えている。演奏が再び止み、しんと静まり返る。


 「新郎エミディオ、新婦シルヴァーナ。二人の誓いを」


 神父に促されて、二人はそれぞれの左手を、神父の手元にある紙に乗せる。お揃いで誂えただろう指輪が、きらりと輝いている。


 「エミディオは精霊に」

 「シルヴァーナは神に」

 「「私の信じる者へ、永遠を誓います」」


 そして二人は、紙に名前を記入する。

 神父がその紙を掲げる。


 「ここに二人の永遠の誓いを。承認の拍手を!」


 拍手と共に、再び演奏が始まる。

 二人は場内を向き、礼をして、階段を降りていく。

 すると、教会の中に花が舞った。楽器隊の隅でエメリーが手をかざしている。その隣にはエルシーの姿もあった。そして花につられて精霊も来て、舞っている。


 「美しい光景だ」


 ファブリツィオが思わずそう呟き、マリアンジェラも頷く。

 新郎新婦が退場する中、精霊を見ることができる者は、花吹雪が終わるまでその光景を見ていた。



 挙式の次は披露宴となるが、オルガ国では立食パーティーのような形式になるようだ。

 新郎新婦は会場の中を歩き回って、挨拶をするらしい。そのため、二人の衣装も動きやすいものに変わる。

 新郎はベストを着たスタイルに、新婦はカラードレスで裾は引きずる程の長さはない。


 「おめでとう。とても良い挙式で感動したよ」

 「ありがとう。アグリアディ公爵家の式も楽しみだ。なあシルヴァーナ」

 「ええ、他国の式はなかなか機会がありませんので」


 ファブリツィオとマリアンジェラがエミディオ達と話していると、レーナが二コーラと共に現れた。


 「シルヴァーナ義姉上、エヴァーニ王国の結婚式は誓いの口づけがあるから楽しみに」


 シルヴァーナはまあと言って手を口に当て、エミディオは笑う。


 「公衆の面前で口づけだなんて、初めは嘘か冗談かと思いましたわ」


 マリアンジェラは赤面しながら言う。

 オルガ国での挙式は新郎と新婦が別々に入場し、神父の前で神に誓い、誓いを立てた誓約書に記入するという流れだが、エヴァーニ王国では多少異なる。


 「オルガ国にいても、私のルーツはハーシュトレイだからね、誓う先だけは精霊にさせてもらったよ」

 「あの剣を渡すのも?」


 ファブリツィオが尋ねると、エミディオはそうだと言って、帯剣している剣の柄に触れる。


 「より強い国を創るという意味が込められていて、ハーシュトレイ王族の結婚式でしか見られない。それに、導く者は新郎より年上でないといけないから、兄上か父上になるんだ。さすがに父を呼ぶのは難しかったよ」


 ファブリツィオは、そういえばアレックスの姿が見えないと思い辺りを見回したが、既にリータに向けて発ったらしい。それ程、ハーシュトレイ王族にとってあの儀式は大切なものであったのだとファブリツィオは感じていた。


 エミディオ達もまだ他の客へ挨拶に行かなくてはならないので、またいつかと言って別れた。


 「あ、エルシー魔術師がいるわ」


 マリアンジェラがエルシーに気が付く。エルシーの隣にはエルシーの弟であり、魔術師長のエメリーがいる。

 ばっちり二人と目が合ったため、ファブリツィオが声を掛ける。


 「花の舞っていたのは魔術だったようで。とても美しかった」

 「ファブリツィオ様!ありがとうございます!ほら、姉上も!」

 「ああ、ありがとう」


 ありがとうと言ったエルシー。それに対してエメリーは容赦なく頭を叩いた。


 「不敬です」

 「ありがとうございました」


 エルシーは口先を尖らせながら言い直した。


 「ああ!ハーパー伯爵家ってあの魔術師の家門か!」


 レーナがポンと手を叩いた。


 「ご存知でしたか。光栄に思います」

 「オルガ国の現王家に連なる家門だったな。それで第三王子は魔術塔でなく、騎士団を治めることになったのか」


 レーナの話にファブリツィオも納得した。魔術師の王族がいれば、魔術塔を治めるはずだが、王族に連なる魔術師を輩出する家門があれば、その家の権威の為にも、王族がそこに居るべきでないという配慮だろう。


 「ルビー色の瞳に銀髪というのは、オルガ国の初代国王やハーパー伯爵家の初代当主と同じ特徴ですので、それもあって魔術師長に相応しいとウィーザー殿下からも言って頂いたのでございます」


 その色から、冷たい印象を受けるが、このエメリーという魔術師は丁寧に説明してくれる。


 ファブリツィオはエメリーとエルシーを見てふと気付いた。


 「二人は、双子か?年頃が同じように見える」

 「よくお気付きに。そうです。それも、初代当主と同じで。初代当主は女性でしたので、今度は私が、ということになったのです。魔術師としての実力は、姉と変わりません。ですから、国賓である皆様の護衛に選ばれたのです。性格がこのような者で申し訳ありませんでしたが」


 エルシーは、喋り過ぎだ、と言ってエメリーの足を蹴った。エメリーは、オルガ国の誰もが知っている話ですと言って容赦なく繰り返している。


 「まあ、仲の良さそうな姉弟ですわね」


 マリアンジェラが二人を見て微笑ましそうに言う。

 それではこれで、とエメリーが離れようとした時、少し立ち止まって、声を潜めて話し始めた。


 「少し、妙な動きが見られます。披露宴後、宿の中でも護衛を必ず付けておいてくださいね」


 ファブリツィオはもちろん、と言ったが、エメリーの忠告に少し寒気がした。


 その後はマリアンジェラの両親やオルガ国内の貴族家、同盟国外の大規模商会の会長と話をした。アグリアディ公爵領から出している物の流通先である。


 披露宴が終わりを迎え、最後にエミディオが挨拶をして締めくくった。再び、花が舞い、エミディオとシルヴァーナが退場した。



 「とても良い式だったな」


 ファブリツィオがマリアンジェラに話し掛ける。マリアンジェラは、少し困った顔をしている。


 「あんなに美しい方を見ると、私を見てがっかりされないか心配」


 ファブリツィオは、マリアンジェラの肩を持って抱き寄せると、頭にキスを落とした。


 「嫉妬してくれるのは嬉しいけど、いつも一番はマリアだよ」


 マリアンジェラは顔を赤くしながらも、幸せを感じていた。

すてきな結婚式……

ファブリツィオ達の式はどんなものになるのでしょうか。そちらも構想中でございますー。

そして仕事が忙しすぎて更新が滞りまくっててごめんなさい。気長にお待ち下さいませー。

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― 新着の感想 ―
続きが気になりすぎる!更新待ってます! それと、エルシー好きです ニコもファブリツィオも精霊さんも好きだけど、いやぁ、最推しって誰になるんだろう…みんな良いキャラクターだなあ
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