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精霊に導かれる〜公爵子息と精霊の物語〜  作者: とこ


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第十三話 精霊と宝石

 「こちらが完成品でございます」


 宝石商が小さな箱をテーブルに乗せる。


 「これは。マリアに開けてもらおうか?」


 ファブリツィオとマリアンジェラはソファに並んで座っている。


 「デザインは一緒に考えたのだし、テオが開けて?落としたら怖いわ」


 「いやマリアに贈るものなのだから」


 「お二人で開けられたら良いのでは。ファブリツィオ様が箱を持って、マリアンジェラ様が開ければいいでしょう」


 譲り合う二人を後ろで控えていたニコーラが急かす。

 ニコーラによって雰囲気が台無しになることが最近増えた気がすると言ったら、時間調整をするのも側近の仕事ですから、と返された。言われてみると、執務もしっかり夕食に間に合う時間に終わっている。長引けばきっと、夕食後も仕事をしなくてはならず、そうなると就寝までにマリアンジェラと過ごす時間も減る。

 よって、ファブリツィオはニコーラの指摘に従うことにした。


 ファブリツィオが箱を手に乗せる。

 マリアンジェラが、その箱の蓋をゆっくりと開けると。


 「まあ!すてき」


 箱の中には指輪が二つ。

 真ん中にはダイアモンドが輝き、その周りにはエメラルドとサファイアが散りばめられている。


 「どうぞ、指に」


 宝石商に促され、ファブリツィオは小さい方の指輪を手に取る。マリアンジェラの手にゆっくりと進めていく。


 マリアンジェラは、指に光る指輪をほうっと眺める。


 「マリア?」


 ファブリツィオに呼ばれ、マリアンジェラはもう一つの指輪を慎重に取り、ファブリツィオの指に。


 「緊張しちゃうわ。式の時、ちゃんと指に嵌められるかしら」


 二人は指輪を何度も色んな角度から見る。


 「あら?この日付は?」


 指輪の内側に二人の愛称である、テオとマリア、そして数字が刻印されていたことに、マリアンジェラが気付く。


 「初めて出会った日。婚姻した日や、婚約成立した日を刻印する人も多いけれど、やっぱり出会って恋に落ちた日をずっと留めておきたくて」


 『すてきね!!』


 窓辺の部屋ではないにも関わらず、精霊が数人飛んでくる。

 マリアンジェラは嬉しいわ、と言って恥ずかしそうに微笑んでいる。

 精霊達は、指輪の宝石が気になるようで、指輪をよく観察している。ファブリツィオはマリアンジェラが精霊に囲まれている神秘的ともいえる様子を見て、また恋に落ちる。




 「それではダニエレよ!!達者でな!!」


 ダニエレがリータ国に出発する日は、北の砦から送り出すこととなった。公爵邸からでも良かったが、ダニエレは砦の麓の街で生まれ育ち、貴族学園の卒業後もずっと北の砦にいたため、選べるのなら北の砦からがいいと希望したためである。


 ダニエレの父、ウルバノが、ファブリツィオの出る幕がない程に息子を激励している。


 「ウルバノ殿、大役がありますのでこちらに」


 嘘か本当か分からないが、大役があるとチリーノに言われ、ウルバノは大人しく引き下がる。

 ファブリツィオは、国王の印章が入った書状を手に、ダニエレの前に立つ。


 「ダニエレ・メコーニ、クリス・ユリアーノ。エヴァーニ国王陛下からの推薦、そしてアグリアディ公爵からの紹介として、リータ国辺境の地を治めることを命じる。励むように」


 ダニエレは臣下の最高礼をとり、書状を受け取る。美しい所作に、集まった砦の騎士達も見惚れている。


 「ダニエレ・メコーニ。そして補佐のクリス・ユリアーノはエヴァーニ国王陛下、アグリアディ公爵家に恥じぬよう努力を欠かさず、民の声を聞き、魔獣を狩り平和を維持することを誓います」


 ダニエレが立ち上がったその時。

 祝砲が鳴らされる。


 「花火?」


 祝砲と共に打ち上げられた花火を思わず眺める。


 「間に合って良かった。せっかくの仲間の出立を見逃してしまうところだったな」


 現れたのはレーナとニコーラだった。旧ハーシュトレイ王宮で立会人として、残務処理に追われていると連絡があり、結局数週間の滞在となっていた。


 「レーナ嬢。ニコーラ。言ってくれれば数日くらい調整したのに」


 ファブリツィオがそう言うと、レーナが自慢気に胸を張る。


 「連絡するよりも馬を走らせた方が早いと判断した。ついでに、義足も慣れてきたところだ。北の砦にそのまま入ろうかと思ってな」


 ファブリツィオは、何を言っても無駄な気がして、ニコーラの方に目を向ける。


 「突然で申し訳ありません。また後ほど確認事項がいくつかありますのでよろしくお願いいたします」


 「ああ。それで、ニコーラも急ぐレーナ嬢を止めなかったということは、何かダニエレ達に伝えたいことが?」


 ニコーラが頷き、ダニエレの近くに行く。


 「ダニエレ。オルガ国からの伝言だ。王太子殿下より、私も必ず会いに行く、と」


 ダニエレはええーと嫌そうに言っている。

 お姫様抱っこ以外にも何をしたのだろうか。おそらく、ダニエレは無自覚なのだろう。


 「ダニエレ、達者でな。何かあれば、アレックス兄様を頼るといい」


 レーナはあっさりと挨拶を済ませたと思ったが、ダニエレに何かを渡している。


 「レーナ嬢?それは?」


 「ああ、アレックス兄様にすぐに会わせてくれる飾りだ。王宮の騎士に見せたらそのまま兄様の部屋まで通してくれるから、失くさないように」


 いいのか?思わずニコーラの方を見る。ニコーラは頷いている。アレックスも知っているということか。

 ダニエレの周りはどんどん固められているが、ダニエレは少しもプレッシャーを感じていないようだ。それはそれで心配だが、辺境の地で頼れる者は多いに越したことはない。


 ダニエレはその後も砦の騎士達や家族に激励の言葉を掛けられ、最後は骨が折れるのではないかと心配になるくらいウルバノに肩を叩かれ、リータ国に向かった。



 北の砦、ファブリツィオの執務室にはマリアンジェラとチリーノ、そしてレーナとニコーラ、さらにウルバノという顔が集まっている。


 「レーナ嬢、ニコーラと結婚したことだし、とりあえずピンツィ家に入るかと思っていたが、北の砦(ここ)で過ごしたいのか」


 「ああ。その為の騎士爵であるし、私の希望でもある。義足で走るくらいは出来るようになった。少しずつ復帰したいと思っている」


 「ファブリツィオ様、私からもお願いしたいです。レーナの希望を叶えていただきたく。そして、私もこちらで事務処理をすれば、今まで溜めては一気に処理していたものも片付きますし」


 ファブリツィオは考える。確かに、ピンツィ家には北の砦での書類を処理する者がいないため、砦に溜めて溜めて、それからまとめて処理をしていた。それもピンツィ家総出で、夜遅くまでかけてと。そのため、チリーノには元々、本人が希望すれば北の砦で役職を与え、砦で事務処理をしてもらうという手も考えていたのだ。

 それを、ニコーラに。悪い話ではない。アグリアディ家としても、北の砦の事務処理を溜めていたことは気になっていたのだ。それにレーナも騎士としていられるし、ニコーラも既に婚姻しているので夫婦で過ごすことができる。

 しかし、ファブリツィオには一つだけ引っ掛かっていることがあるのだ。


 「ニコーラ、その希望は叶えたいんだが、すでに婚姻を済ませてしまっているからちょっと考えが飛んでいるのかもしれないと思ってな。結婚式、まだだろう?今、マリアと打ち合わせもしているが、中々忙しい。ここにいても準備が進まないだろうし、その。その間に子供ができたりーだなんて思うと、また予定を変えようとなっても心配で」


 ファブリツィオが言葉を選びながらそう言うと、ニコーラは気まずそうな顔をした。


 「ファブリツィオ様、その、実はと言いますか」


 ニコーラが気まずそうな顔のまま言葉を選んでいる。


 「ニコーラ、やってしまったものはどうしようもないだろう。ファブリツィオ様、私達は既に式を挙げてきた。だから大丈夫だ」


 レーナの言葉に、執務室内の空気が固まった。


 「レーナ様?ほ、本当に、ですか?い、いつ、どこで?」


 マリアンジェラがぎこちなく口を開く。


 「例の会合の前にな。両親のいる村でちゃちゃっと済ませてきた」


 「どうして俺のまわりは大切なことを黙っているのだろうか」


 ファブリツィオは遠い目をする。


 「なら、いいか。レーナ嬢は騎士として、そしてニコーラにはここでの事務処理を任せることにしよう。一応、役職を与える形として、役職名などは父と相談させてくれ」


 こうするしかなかった。ファブリツィオはニコーラ達にお祝いの品も準備しなくてはとうっすら考える。

 マリアンジェラはその隣で、レーナのウエディングドレス姿が見られなかったと悔しそうだ。


 しかし考えてみれば、レーナの父親は元ハーシュトレイ国王だ。式を挙げるとしても、現在の場所から出ることや、その先にアレックスやエミディオも来るとなると、それぞれの国からの許可が出ない可能性も高い。たった一人の王女の結婚式を見ることができないというのも酷い話だ。両親の元でひっそりと挙げるという選択が、レーナを祝福するのに一番とニコーラも考えたのだろう。


 「よし、では次の話に移そうか」


 ファブリツィオが話を切り上げ、チリーノに目配せをする。


 「では、オルガ国のエミディオ・バンデーラ公爵の結婚式についての護衛配置ですね。まず参加するのはファブリツィオ様とマリアンジェラ様、ニコーラとレーナ嬢になります。ファブリツィオ様とマリアンジェラ様には、私と砦の騎士を一人借りますね。ニコーラとレーナ嬢には現在護衛はエーリオのみになっているので、もう一人は護衛が必要かと。それからファブリツィオ様の友人として、リカルド次期伯爵も。ファルネイ伯爵家は騎士団を持っていないので、一人は騎士を護衛に借りたいとの申し出がありました。ウルバノ殿、いかがでしょうか」


 ウルバノはううんと唸る。


 「北の砦の戦力的に、元々やっていけていた所にレーナさんとエーリオが入ってきていたから、そこは問題なかった。小隊長だった愚息が抜けて、プラマイゼロだ。そこに護衛のために三人が抜けるということか。配置を工夫すればいいとは思うが」


 ウルバノの言葉の続きをファブリツィオが続ける。


 「ダニエレの件から、北の砦が手薄であると思われているだろう。そして現在、この公爵領は縫製工場も軌道に乗り、経済的に潤っている。リータ国はまだ落ち着いたとは言えない状況で、ここをあまり手薄にはしたくないな」


 だからといって、オルガ国からの招待を断る訳にもいかない。公爵の結婚式、式には王族も招かれているだろうし、オルガ国の流通を考えると、同盟国外の要人も招かれているかもしれない。その場へ向かうことを拒否するということは、それらの国を拒否することに繋がる。リカルドを招いたのも、おそらくはエヴァーニ王国への販路拡大を狙ってのことだろう。つまり、断る訳にもいかないのである。


 「よし、この領に移民した元ハーシュトレイ騎士団員に招集をかけてもらおう。私の護衛と言ったら皆来てくれるだろう」


 レーナの提案に乗るしかないだろう。

 ファブリツィオは、ハーシュトレイの地でニコーラが引き入れた傭兵団を思い出す。


 「そうするしかないか。しかし、元騎士だからとこう好きに使い回すようでは本人や本人の周りも不満が溜まりかねない。ハーシュトレイ王国がしていたように、有事の際に招集する元騎士の者を登録するという形を取っていくべきだと思う。そうすれば、北の砦にいた元騎士もここで何かあれば後方支援でもしてくれるだろう」


 ファブリツィオの言葉に、一同は賛成する。中でもウルバノは大助かりだと言う。


 「街には元騎士が大勢いる。引退していく騎士も、建前上は何かあれば呼んでくれと言ってくれるが、手段が出来るのは助かる」


 ニコーラはさっそく、ここ数年の間に引退した者やハーシュトレイ王国からの移民で騎士団に所属していた者を洗い出す作業をすることになった。


 「登録騎士、とでもしておくか。引退して体も鈍るだろうから、希望する者には休日に体を鍛える機会を与えて、騎士として仕事をすることがあれば、その時間分は給料を、働き先にも、働き手を借りることになるから手当てを出すべきだな」


 ファブリツィオは次々と決めてゆく。それを、チリーノが書き取り、細かな調整を行う。

 ふと、マリアンジェラがファブリツィオを見ていることに気付く。


 「ああ、すまない。またこちらでこの内容をまとめる。ウルバノ殿やレーナ嬢は下がって貰っていい」


 二人が部屋を出る。


 「私もテオに何度も恋をしているわ」


 マリアンジェラが呟く。ファブリツィオは、マリアンジェラの髪に口づけをする。


 「ほら、照れ隠しで言葉が出ない時に、そうして愛情を伝えてくれるところも」


 「ばれていたのか」


 二人は微笑み合う。さすがのチリーノも、口を出さなかった。

今回は短めですが、ちょうどいいところで区切りました。

続きも書き次第、投稿していこうと思います!

次話投稿まで時間がかかると思いますが、短編など読んでいただけると嬉しいです!

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