第一話 精霊が見える人
恋愛なのか、ファンタジーなのか微妙なところですが、登場人物達の恋愛が要所要所で絡んできますので恋愛でいきます。
精霊はどこにでもいる。
精霊は自然が好きで、植物の成長を助けてくれる。だから、街中には少ない。
人間が精霊を見ることはできない。精霊が大勢集まる場所は、特別な場所に思えたりするらしい。感覚的なものだ。そして極稀に、精霊が見える子供がいるが、大人になると見えなくなってしまう。
これは、エヴァーニ王国では誰もが知る精霊の話だ。
「ちょっと精霊さん、母が季節外れに花が咲いたと騒いでいるんだが」
『シラナイ』
「………料理長がティータイムに向けて焼き菓子を用意していたが、遠慮し」
『ついでき心で!!どんな花が咲くか気になって!!咲かせてみたらきれいだったから!!その辺にいた精霊みんなで全部やっちゃったのー!!』
執務室で精霊への尋問を終えた黒髪に青の瞳をした男は、ため息をつく。
「精霊のいたずらだそうだ。例年と花の種類が違う訳ではないらしい。」
側近の男にそう伝えると、もう一度ため息をついた。
その男が精霊という存在に気付いたのは小さい頃。ふわふわと浮かんでいるそれを、最初は珍しい虫か鳥かと思って近づいた。手のひらに乗るくらいの小さな体。透き通った羽がきれいだなと思って触った。
『あら?お嬢さん、私が見えるのね。子供のうちだけ見える妖精さんよ。他の人には見えないんだからね。おかしな子と思われたら可哀想だから、私が見えるのはナイショよ。あと、触ったりしちゃダメよ?』
「わかった。あと僕はお嬢さんじゃないよ」
精霊は植物の実りを支える存在。農業が盛んで精霊への感謝を大切にするこの国では、精霊が子供の頃に見えることがあるというのは誰でも知っていることだった。
精霊にはわかったと言いながらもすぐに両親へ報告し、わが家の庭園に精霊がいることを家族で喜んだ。
「精霊さん、精霊が子供にしか見えないっていうのは嘘だったんだよな?」
24歳になった男は精霊に尋ねる。
『そうね。だいたい10歳くらいには見えなくなるけど。アナタはまだまだおこちゃまなんじゃないかしら?』
男はまたため息をつく。
『ホラ、そうやってため息ばっかりじゃない。大人になれない訳ね』
「大人の方がため息の数は多いと思うんだが」
『知らないわ、そんなの』
この男の側近である、 ニコーラ・ピンツィは、主と見えないがそこにいるらしい精霊の会話に終わりが見えないことを察して部屋を出た。
とりあえず、庭園に季節外れに咲いた花の件を報告しなければならないからだ。
「そう。やっぱり精霊のいたずらだったのね」
主の母、グラツィエラ・アグリアディ公爵夫人は庭園から摘んできた花を見ながらニコーラの報告を聞いた。
「あの子も精霊じゃなくて人に好かれてほしいものね。ニコーラ、最近はどうなのかしら」
ニコーラは最近の主の周りで起きた出来事を振り返り答える。
「仕事しかしていませんね」
「だめでしょ、あの子!なんで!?わたくしの子なのになんで!?」
ニコーラが退室した後、グラツィエラは緩く纏められた金髪をぐしぐしと乱しながら頭を抱える。
「まだハタチだしねーだなんて思ってた私が愚かだったわ!自分が好ましいと思った方と結婚したいですだなんて言うから!!相手がいるとばかり!!聞く限り相手なんていないじゃないの!!騙されたわ!!誰に似たのかしら!?」
「旦那様に似たのでは?」
侍女のターリアが頭を抱えるグラツィエラを見かねて声を掛けた。
「そうね!ヴァルテルそっくりよ!!」
「私がなんだって?」
噂の夫が現れた。
「ヴァルテル!!ファブリツィオが!!仕事しか!!してないの!!」
グラツィエラは夫にかけ寄り、二人でソファへと腰を下ろした。
「あいつなりに考えがあるんだろう。最近は三十代くらいで結婚する者も多いし、気長に考えてみてもいいんじゃないか?」
「あなたみたいに、女性に興味が無さすぎて心配だわ。私みたいな情熱に全力を注げる人に、せめて学園にいる間に出会って欲しかったわ」
グラツィエラは夫の青の瞳を見つめる。グラツィエラは夫のことが大好きだ。
グラツィエラはずっと自分のことだけが好きだった。輝く金髪に青の瞳。自分こそ美しく完璧だと思っていた。しかし、学園に入学し、黒髪に青の瞳を持つヴァルテルに出会ったことで見える景色が一変した。彼の美貌に衝撃を受けた。そして自分の対になる存在は彼しかいないと思い、異性に全く興味がないヴァルテルにアプローチをしまくってしまくって婚約、結婚をした。
息子のファブリツィオは、夫によく似ている。きっと、好意を全力で向けられなければ、何も気付かないだろう。しかし、そんな相手に出会えていないらしい。
「君の、ファブリツィオを心配する気持ちも分かるけれど、彼だって僕の子であるけど君の子だよ。彼の方から情熱的にアプローチすることがあるかも」
それに…と、花瓶に生けられた季節外れの花を見た。
「どうしてか、まだ精霊が見えるらしいし、もしかしたら良い何かがあるのかもね」
精霊がいること、見えることは悪いことではない。何か意味があるのかもと、ヴァルテルは考えているのだった。
「精霊さん、書類だけは。お願い、書類だけは触らないでくれ」
ファブリツィオは自身のまわりをうろうろとしている精霊に声を掛ける。精霊にそのつもりはなくても、触れた物が変化してしまうことがあるのだ。自然豊かな庭園を持つ貴族邸等では、季節外れの花が咲いたり、書類の文字が変わってしまったりすることを、精霊のいたずらと言っている。ファブリツィオは、精霊が見えるため、いたずらの瞬間を目撃できる。今まさに、精霊が書類に触ろうとしていた。
『私を留めたいと思うならそれなりのモノを』
「コーヒーに砂糖を付けるの、やめてもら」
『もう触りません』
精霊は、なぜかファブリツィオの身の回りに出てくる甘いものを欲しがる。食べるでもなく、お菓子や砂糖の周りをうろうろしたり、つついてみたりするのだ。食べていると精霊達は言うが、ファブリツィオには分からない。
精霊と書類を触らない約束ができたことで、事務処理がスムーズに行われた。側近のニコーラが、コーヒーと砂糖を出してくれる。
「ファブリツィオ様、今度の精霊祭の衣装はいかがいたりしますか?ここ2年同じものですので、新調して良いかもしれませんが」
ファブリツィオは衣装に興味がない。しかし、公爵子息という立場上、毎年同じ衣装というのも良くないことは理解している。
「2年前に新調した時は、想い人が出来たのかそれとも別れたのかと質問攻めにされた。正直面倒くさいというのが本音だ。ニコ、どうしたらいい」
ファブリツィオは優秀だ。良い公爵になれるだろう。その上、見た目も良い。さらに学園の卒業後には次期公爵として、公爵領の端にある砦で騎士として数年過ごし、その頃の習慣で体を鍛える時間を作っている。そのためなかなか良い体格をしている。
つまり、優秀な次期公爵で顔も良くひ弱でない。ものすごくモテる。
社交界ではこの男を誰が射止めるのかという話題で盛り上がっている。ファブリツィオの身に着ける物一つ変わるだけでも大盛り上がりだ。以前、今日のように精霊が季節外れの花を咲かせることがあった。それを、母に勧められて胸に挿していただけで、花と同じ色の髪や瞳をした令嬢が質問攻めにあったという話も聞く。
項垂れる主を憐れむニコーラは、一つ思い付いたことを告げる。
「昨年、アグリアディ公爵領では崩れた隣国の民を大勢受け入れました。縫製工場を作り、職を与えることで治安も悪くなっていません。それどころか、今まではわずかな輸入でしか手に入れられなかった衣装や刺繍が流通し始め、今シーズンからの流行になりそうだという話も聞いております。
領地で仕立てたものをファブリツィオ様が着用することは宣伝に繋がりますね」
「さすがニコだ。そうしよう。何か突っかかってきたら領地の技術をアツく語ればいいな」
「それでは、手配いたします。いつものようにアグリアディ家の色と紋章を入れるようにと、これまで着用していた衣装の絵を参考にしてもらいましょうか。他にご要望は」
配偶者や婚約者でもいれば、相手の色を入れることがあるが、とは言わないがファブリツィオは分かっている。
『わたし!!わたしの緑を入れてよね!!ね!!』
「精霊さん、今まで入れていなかった色を入れるとね、厄介なんだよ。何の関係も無い子が虐められたら可哀想だろう?」
『ヒトってばかなのね』
「誰も持っていない色を入れるのはいいかもしれないな。ニコ、この国で見かけない色で、新しく出せる色はないか?宣伝にもなりそうだ」
精霊のリクエストは聞けないが、宣伝という名目ならアリだ。せっかく新調するのだし。
「でしたら赤は『赤色はだめよ!!血の色!!精霊に嫌われる!!』」
「赤はだめらしい」
「そうですね……オフホワイトはいかがでしょう?真っ白でもなく、優しい色合いの白で、領地でも人気と聞きます」
「精霊さん、どうかな」
『白ね!!白は好きよ!!』
「ニコ、オフホワイトで頼む」
年に一度行われる精霊祭。
植物の実りを支える精霊に感謝を伝える行事だ。
このエヴァーニ王国は農業で栄える国。広大な畑を多数有し、周辺国へ輸出もしている、同盟国の食糧庫と言われる程の農業国だ。
精霊祭は国家総出で行われるため、王宮では王族を始めとする貴族達が集い、一日中パーティーが開かれ、絶え間なく食事が並ぶ。街では広場や公園にはずらりと屋台が並び、国民も楽しむ。一日中食事を楽しむことで、精霊への感謝を伝えるのだ。
領地を持つ貴族は領地で領民と共に過ごす方針を取ることもある。アグリアディ家では昨年は隣国の民を受け入れたため公爵家は領地で過ごした。領民と共に過ごす一日というものは貴重なものであったが、毎年領地にいれば、他貴族や王家から良い顔はされない。社交も貴族の義務であるからだ。そのため、今年は王宮へ向かうこととなった。
「ファブリツィオ様、そちらの衣装は」
「うちの領地で仕立てたのです。隣国から来た領民達がよく働いてくれております。刺繍なども、簡単なものは機械で出来るのですよ。このオフホワイトもこの国では初めて出せる色なのです。刺繍も素晴らしい出来で、母も驚くほどでした」
「ファブリツィオ様、今年は新調なされ」
「そうですそうです。私の衣装をよく覚えていただいているようで。昨年受け入れました領民達が」
ファブリツィオの衣装はアグリアディ家の色である紺色に、胸には紋章がオフホワイトで刺繍されていた。差し色を入れるにあたり、ベースの紺色の出来が良かったため、紋章のみオフホワイトを使うこととした。光沢感があるが明る過ぎず、だからといって地味でも無い紺色はハーシュトレイ王国の技術で加工した糸によってもたらされた色味らしく、若者が着ればさわやかに、年配の者が着ても上品に見えると評判だ。
オフホワイトの刺繍は、刺繍職人の中でも一番の腕の者が刺したらしく、母も大絶賛であった。
「壊れたオルゴールみたいだな」
降りかかる火の粉を落としていたところへ、幼馴染がやっと来た。話し相手がいれば、わざわざ声を掛けてくる輩も減る。それを分かっていてこいつはいつも様子を見てからやってくる。
「ああ!久しぶりだなリカルド!話したいことがあるんだ!」
「気持ち悪いな。話したいことなんて今更あるか?」
「で?噂の貴公子様よ。良い子に巡り会えたか?」
王宮のバルコニーに出た二人は、夕焼けを眺めながら、室内からは視線をちくちくと感じながら話をする。バルコニーに出されたテーブルにも果物や野菜のキッシュなどが盛り付けられ、精霊への感謝を述べてから食べる。精霊祭の日は感謝をして食べること、最後は残さないことが基本だ。そのため、バルコニーにも食事が置かれている。
「やめてくれ。仕事しかしていない。昨年受け入れた領民や立ち上げた縫製工場の事務処理に追われている。そのうち、有能な者にやってもらう内容だが、初めのうちは自分でしないといけないだろう」
「真面目だな。でも確かに、最初が肝心だからな」
「隣国だって、貴族や王宮仕え達の派手な横領は、トップが気付かず色々手遅れになって崩れたって聞くだろう。まあ、崩れた段階で周辺国すべてに助けを求めて会議で領土や国民を分けられたのは不幸中の幸いだったと思うが」
永遠に茶化してくる幼馴染をどうにかしようと思い話題を変えた。
「不幸中の幸いどころじゃねえな。国が無くなるのに戦争も無かったなんて信じられない。絶対王族達は何かやってただろう」
それもそうだ。きっと水面下では様々な取引きが行われていたのだろうとファブリツィオが考えていたとき、一つの影が二人に近付く。
「我が国の話題か。気になることがあるなら何でも答えるぞ」
我が国?と思って声の方を見ると、女騎士が立っていた。
「我が国、ということはハーシュトレイ王国がご出身の……」
考える。ここは王宮だ。王宮の騎士が話し掛けてくる訳がない。ということはこの国の貴族のはずだ。爵位を持つ者でも騎士や文官として働く者も少なくはない。女騎士で公爵子息に話し掛けられる程の地位を持ち、隣国をルーツに持つ者。
「ファブリツィオ、次期アグリアディ公爵。レーナ・ハーシュトレイ王女殿下にご挨拶申し上げます」
「リカルド、次期ファルネイ伯爵。同じくご挨拶申し上げます」
相手の正体に気付くと同時に跪く。リカルドも同じくらい慌てている。
「殿下はよせ。礼もなおれ」
でも殿下じゃん、というリカルドの心の声が聞こえる。彼女は崩れた隣国の王女だ。王族は良からぬことを企まぬように周辺国へ散り散りとなった。この国に来たのがレーナ王女だ。
「アグリアディ公爵家は私と同じ色を持つ者が多いのだと聞いているが、会うのは初めてだ。我が国の民を多く受け入れてくれているのだったな。感謝申し上げる。精霊の加護もあるようで安心だ」
精霊の加護?初めて聞く言葉だ。ハーシュトレイの文化か。
「リカルド。問題が起きなかった物事こそ裏に何かがあるものだ。その感性を大切にすると良い」
「殿下がいるにも関わらず失礼なことを…」
「もう殿下ではない。気にするな。ところで、先程の話だが」
この話続くのか。リカルドの顔色が悪い。
「水面下ではというより、周辺国のトップ同士ですでに内訳は考えられていたようでな」
なんでこんなあっさり話し出すんだこの人は。俺たち、聞いてていいのか。なんだかバルコニーを覗く人が増えている気がする。
「ここ10年程ずっとボロボロだったからな。間者等も入りまくりで。間者達が勝手に争うから王宮で行方不明者が増える増える。もう情報は開示するから勝手に自国に持って帰ってくれといったかんじでヤケクソだ」
王女、ちょっと楽しそうだがこっちは体温が下がる。
「まあそんなかんじで、平和的に国が崩れた訳だ。最初の間者以外の血はあまり流れなかったらしい。最終的に、移民する国民の負担はあったが、今のところは平和で何よりだ。ほら、まだ知りたいことは無いか?」
「貴重なお話をしていただきありがとうございました」
もう聞きたくない。バルコニーを覗いていた貴族達も気付けばいなくなっていた。
「国が崩れる様を最前列で見ていた貴重な話なのに、誰も聞きたがらないとは」
王女は最後まで楽しそうだった。
「生きた心地がしなかった」
王女の来襲後、リカルドが冷や汗を拭いながら言う。
「リカルド、今更だが、王女はこの国ではどんな地位になるか聞いているか?」
「そういえば何も聞かないな。もう殿下ではないって言ってたけど。さすがに領地を与える訳も無いだろうし」
「亡国の王族なんて、適当に扱えば移民たちが反発するだろう。だからといって大きなポジションを与えるとそこから乗っ取りだとか」
周辺国ではどうだったか。
「王と王妃は元王家直轄地の村で隠居生活。第一王子と第二王子は周辺国の高位貴族に養子縁組と婿入りだったか」
「大丈夫か?公爵子息。お前は婚約者もいない結婚適齢期。おまけに領地には多くの元ハーシュトレイ王国民が。めちゃくちゃ都合よくないか?」
手にした飲み物を落としそうになる。
「は!?いや、大丈夫だ!王子たちの養子先や婿入り先は留学したときからの付き合いがあった所だそうだし、先程の王女の話だと水面下で決まっていたと…だからすでに王女がどうなるかは決まっているはずだ」
『ねえねえ!パーティーのお土産は!?』
公爵邸に着き、自室に戻ると精霊が元気よく飛び回る。
「精霊さんは出掛けないのか?」
ふと疑問に思う。いつもはふらふらと気まぐれに外に出たりしていたはずだが、ここ半年程は庭園から邸内に常にいる。
『精霊王が、精霊は今の場所から離れずに待っていなさいって言ってるのー』
「それで今年は精霊をあまり見かけないのか」
王宮の庭園等、自然がある場所にはたくさんの精霊がいるのに、今日はあまり見かけなかった。もしかして精霊が見えなくなり始めているのかと思って寂しい気持ちで自室へ戻ったのは内緒の話だ。
『たぶんだけどね、最近人がたくさん動いてるからだと思うのー。王はハーシュトレイにいたんだけどねー』
「え?精霊王はハーシュトレイにいたのか?」
『あたしたち精霊と違ってねー、王は自然じゃなくて人についていくの。そこが精霊の中心になるから、その人がうろうろしている間は待っててねって言われるの』
王女の話も、自分が聞いていいのかといった内容だったのに。誰も知らないような精霊王の話を聞くことになるとは。なんて一日だろう。
『精霊王が落ち着いたみたい!!これでどこでもいけるわー!!しかもね!この近くにいるから、精霊もたくさん増えると思うの!!』
精霊王は我が国に来たようだ。つまり、移民の中に精霊王を連れる者がいるということだろう。確かに、精霊が増えている。
「レーナ・ハーシュトレイ殿下は騎士爵を賜って国境警備へ務めるそうだ。王家から公爵領にある北の砦を任せて良いかと打診があった」
ヴァルテルは妻とファブリツィオ、妹のデルフィーナとそれぞれの側近、家令と執事長を当主の執務室に集めた。
「父上、北の砦と接するのは人の住む領土ではありません。騎士がすることと言えば魔獣退治になりますが」
「ファブリツィオ、そういうことだ。人の住むところとの国境であれば、彼女は謀反を企てるかもしれんし、任せられんだろう。公爵領には多くのハーシュトレイ国民がいる。彼らを魔獣の手から守りたいという名目にもなる。それに、王太子殿下から聞いた話なのだが、彼女は騎士としてとても強く、王宮に近いところにも置きたくないそうだ」
「お父様、騎士といえども王族です。使用人を増やしますか?国境であることは事実。殿下のお付きの方をすべて砦に迎え入れるとしても、人数の調整をしなくてはそこに国を築かれても困りますわ」
妹は細かいことによく気が付く。
「それについては、元々彼女に付いているのは護衛2名と侍女が1名だそうだ」
「少なくないかしら?」
「騎士として生きてきた故に、護衛も最低限。身支度も手間がかからなかった為、減らしていたらしい」
精霊祭の時は彼女の少し後ろに1人付いていたな。ということはもう1人は影だろうか。
3名とも、ヴァルテルとファブリツィオが面談を行い、問題がなければ所属を公爵家とし、砦に入るまでにこの国での作法や公爵領についての教育を行うことを決め、解散した。
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