Chapter:96 「……自分にもここ最近、頭痛が」
叫びながら、リオールへ突進していく博希。だが、その攻撃は、わずか紙一重で、よけられた。
「その身体で、私にとどめは刺せない」
「……っ!」
静かに笑うリオールは、大剣を振るった。
【四発目】がくる。博希は自らの剣で受け止めようと構える。
「ストップ……!!」
しかし【四発目】は、真正面から博希を狙わず、背後の茜を狙っていた。
「!!」
軌道を変えた【風】をなんとかかわそうと、博希は茜をかばう。
まともに【風】が全身にぶつかり、スパークした。
「ぐあぁあああああっ……!!」
「お兄ちゃんっ……」
悲鳴のような茜の声があたりに響く。
「さあ、もう一発――――うっ?」
大剣を振ろうとしたリオールは、瞬間、顔をしかめた。
頭痛がする。
「なんだ……?」
意識を失いかけている博希の横顔に、何か見覚えがあるような気がして、彼女は剣を止めた。
その瞬間だった。
「お待たせしましたっ、博希サンっ!!」
「ヒロくんっ、大丈夫っ!?」
鎧装着した出流と五月が、リオールの前に立ちはだかった。
「リオール……あなたがどうして……!」
ボロボロの博希は、それでもなんとか言葉を絞り出す。
「レドルアビデの……命令だそうだ……」
「えっ!? じゃあリオールって、レドルアビデの部下の人なの!?」
武器を構え、まっすぐリオールを見る出流と五月。
その表情には狼狽が浮かんでいた。
「……今日はいったん引く。また会おう、【伝説の勇士】」
リオールはできるだけ博希を見ないようにして、大剣を下ろす。
「……いずれまた決着をつけよう。いいものを、見せてもらった……」
「いいもの……!?」
「お前の正義感と、甘さだ。――ホールディア!」
「待てっ、リオール、」
が、博希が叫び終わる前に、リオールは“ほころび”の中に消えた。
「リオール、……お前……なんで……」
そのまま、博希は膝をついた。身体中から、力という力が、抜けた。
「お兄ちゃんっ」
「博希サンッ」
「ヒロくんっ」
三人が声をかける。そこまではぼんやりと覚えている……それから、鎧装着が解けたのも。
そこから、博希の記憶は、やや、飛ぶ。
コスポルーダに戻ってきたリオールは、おさまらない頭痛に頭をかかえた。
「……づうっ」
あの後、アイルッシュを攻撃しようと思えばできた。
むしろ【伝説の勇士】にさえ、あの攻撃をかわした後に攻撃を加えようと思っていた。
しかし、できなかった。
誰だ。
あの【伝説の勇士】、――遠いどこかで見覚えがある。
そういえば以前、無意識に名を呼んだことも気になる。
いままではそんなこと、考えたこともなかったのに――
頭痛のせいか。
また頭が痛んだ。大事な何かを忘れている気がした。
「リオール様」
声がする。
「デストダ?」
「は」
「私に様づけするなんて、どういう風の吹き回しかしら」
「……頭痛が?」
「人の話は聞くものよ。――私に頭痛があったからって、なぜお前がそう関わる?」
「……自分にもここ最近、頭痛が」
デストダの瞳はやや本気が入っていた。
「――なぜ?」
「……わかりませぬが……たまに妙なビジョンが脳内に映ります」
リオールは黙った。自分と似ていると思った。
「そのことを、レドルアビデ様には?」
「まだ……」
「なぜ私に話した?」
「……なんとなく……自分と近しい感覚がありましたので」
ふん。リオールは少し息を吐き、デストダに背を向けた。
「リオール様、……」
「……安心して。このことは私とお前だけの秘密にしておく」
「…………はっ」




