Chapter:95 「お前とは遊びで戦っている訳ではない」
そのころようやくたどり着いた出流と五月は、左手の熱さを感じながらも鎧装着できずにいた。
「爆発を追っていきましょう」
五月は力強くうなずく。
これだけ爆発が起きているなら、すでに博希は戦っているはず、とみたのだった。
博希とリオールは、別の場所に移動しながらも、また対峙していた。
だが博希は落ち着かなかった。さっきの微笑、誰かに。誰かに似ている。そのことばかりを考えて、博希は本当にそわそわしていた。
「……どうした。【伝説の勇士】らしからぬ落ち着きのなさ」
「……お前が……俺の知っている誰かに似てるんだ……」
「面妖な。誰にだ」
「……わからねえ……うまく言えねえ、だけど……!」
「下手な感傷に浸るよりも、私を倒すことを考えたほうがよさそうだぞ……っ!」
大剣が振られる。また、風が、起きた!
「くっ」
とっさにそれを自分の剣で止める博希。だが間をおかず、二発目の【風】が、博希を襲う!
「うわっ」
博希は今度は止められず、体をよじってそれをよけた。
が、行き場所のなくなった【風】は、外へと向かった――博希はそれを目で追うほどの余裕が、瞬間的に、生まれた。
「! 茜!?」
【風】の行き場所。それは偶然にもここにやってきていた、博希の妹の茜だった。
なぜこんなところに。だがそれよりも、あれが当たったら茜では助からない。
博希は鎧装着しているし、【伝説の勇士】としての資質があるから、倒れないですむのである。このままの軌道なら――確実に、当たる!
「くっそおおおお! 考えてるヒマなんてあるかっ!」
博希は剣を放り出して、茜のところまで走った!
「危ねぇっ、茜! 伏せろっ!!」
「え……」
茜には【風】は見えていなかった。普通の人間だから無理からぬことなのだろうが、それよりも茜は『伏せろ』と叫ばれたことに驚きを感じていた。
「今の声……お兄ちゃん!?」
しかし『伏せろ』と言われたのなら伏せるしかない。その声が紛れもなく実の兄であるならなおさら。
茜は急いでその場に丸くなった。その上に、何かが、覆いかぶさる。
「…………!?」
博希が茜の上に覆いかぶさったのだ。そこに、ほとんどまともに【風】がぶつかって、またしてもスパークする。博希は茜を包み込んだまま、その衝撃を受けた――。
「ぐうあっ……!」
無論衝撃は、包み込まれた茜にもわずかに伝わった。
「なに? なにこれ!? しびれる……!?」
リオールはその状況を冷静に見つめていた。
「…………」
そして、もう一度、大剣を振った――博希は【三度目】の【風】に、気がつかなかった。ただ、茜を守ることだけを、考えていた。
「【伝説の勇士】としては失格だが――【人間】としては、合格、だな」
その言葉が、博希の耳に、はっきりと届いた瞬間――博希の周りが、白く、スパークした。
「うがあああああああっ!」
目の前が真っ白になる。茜は伏せていた顔を少しだけ上げた。暗くてよくわからないが……見えたものは、鎧…………。
「じっとし……て、ろっ!」
「……お兄ちゃん……!?」
呼んではいけないような気がした、が、呼ばずにはいられなかった。
「心配すんな、茜……お前は俺が……守る……」
一瞬、博希の笑顔が見えた。茜は言葉を失った。
「おに……いちゃん……」
シュウシュウと、鎧から煙が出た。スパークの余韻が消えきらない。
「……っあ……」
だが、リオールをなんとかしないといけない。このまま逃がすと、アイルッシュがどうなるかわからない。
博希は、ひとつ、深呼吸した。
立ち上がれ。
剣を握れ。
「……リオールっ……!」
博希はふらふらする足を踏ん張った。
「……そこから動くなよ、茜……!」
「……あ……あ、……」
茜に対して、もうごまかしはきかないだろう。だがそんなことを考えるのは後にした方がいい。博希は足に力を入れて、リオールのもとに走った。
「丈夫だな」
「お前が追い討ちをかけるなんて思わなかったぜ……」
「お前とは遊びで戦っている訳ではない」
「……だな。……」
博希は剣を持つ手に力をこめた。決める。この一発で、終わらせてやる!
「スーパー・フレイムアタ――ック!!」




