Chapter:91 「誰だと聞くならば答えてやろう……」
博希は光から生まれた剣を、愛しそうに抱きしめた。ゆっくり、目を、閉じる。次の瞬間、博希の瞳が、危険に輝いた。
だが、その表情を見ている余裕は、リテアルフィにはなかった。
「キミもこれにとらわれてしまえばいいんだ! ボクの技を封じた罪は重いよ……! は……は。あはははははははははっ!」
リテアルフィは狂ったように笑って、博希に光球をぶつけた。
だが博希とぶつかって、光球は、ぶぱあああんっ! と、はじけた。
「え…………!?」
オレンジの光球に、ブルーの光が、勝った。
「うあああああああ――――!!」
博希の絶叫! 光は爆発し、そこにいた全員を包んだ。
「な……」
「博希サンッ、」
「ヒロくうん」
一瞬、出流も五月もリテアルフィも、何も見えなくなる。
出流がやっと目を開けられた時、博希とリテアルフィは、ぐったりとしていた。
炎はすべて消えており、つまりディルを包んでいた光球も、消え失せている。執政官はだらしなくのびていた。
「……イーくん」
五月も目を開けたらしい。それですぐこの状況に気がついたのか、
「ああ、ディル! ヒロくんっ!」
博希を揺すりにかかった。
「ヒロくん、ヒロくん、しっかりしてよう」
出流も急いでディルを揺する。
「ディル。ディル、大丈夫ですかっ」
その時――
必死に博希を揺すり続ける五月が、ビクン、と、震えた。出流がそれに気がついて、五月の身体をつかむ。
「どうしました!?」
「そこに、誰か、いるっ!」
「なんですって!?」
部屋の隅。いつからいたのだろう、身の丈2mはあろうかという男性が立っていた。その瞳と髪は真っ赤で、黒い翼を持っている――
「誰です、あなたは!?」
きらきらと光る薄い布を身にまとい、こちらを見てにやあ、といやな笑いを向けて――その笑いに、出流は見覚えがあった。リテアルフィの笑いにそっくりだった。
「……誰なんです、あなたはっ!!」
五月がおびえて、出流の腕をつかむ。鮮やかな赤い瞳には、どろんとした悪意が浮かんでいた。
「貴様らが【伝説の勇士】だな……」
「…………っ」
出流はその声に、素で震えた。動けない。
「誰だと聞くならば答えてやろう……俺の名は……レドルアビデ」
!!
「あ……なたが……!」
「レドルアビデ……!」
出流はくっ、と、唇を一度、噛んで、それから、言った。
「――なにをしに、来たのです? 僕らを皆殺しにでも来ましたか」
「そうしてもよい――のだが、いかんせんそのために来たのではないのでな」
「なんですって……」
レドルアビデはそして、ぐったりとしたリテアルフィを抱えた。
「今、リテアルフィの魔力はゼロに近い……まさか【伝説の勇士】がここまでやるとはな」
「ゼロ? でも、死んでないなら、この都市はどうなっちゃうの?」
「……案ずるな、……この都市は以後リテアルフィの支配下には置かぬ……勝手にするがいい」
「……レドルアビデ……あなた、何を考えて……!?」
だが彼は答えず、いかにも『しゃべり過ぎた』という顔で、またいやらしく笑うと、すっ――と、消えた。
「消えちゃったあ……」
「あれが、レドルアビデ……」
しばらく二人は呆然としていた。




