Chapter:87 「もう、抜き差しなりませんね」
ディルは隠し持っていたツルハシを出した。素手では勝てない相手だというのを、ディルは本能的に悟っていた。
超えられない壁。永遠に、超えられない――
「武器に頼るか!」
「てめェに素手使ってやる価値なんざねェよ!」
ハッタリだ、ディルはそれが悔しかった。しかし、やるしかない。これで自分が勝てば、この村は平和になると信じて、疑わなかった。
ツルハシが、振り下ろされた。
「…………うっ…………」
だが飛びかかりながらツルハシを振り下ろしたはずのディルは、砕けた鉄とともに、床に力なくくずおれていた。
「ぐ、……」
ツルハシが振り下ろされた瞬間、執政官の拳は、ツルハシを砕くとともに、自分の息子の腹に、強烈な一撃をかましたのである。
「情けない。やはり見込み違いだ」
「……まだ終わってねぇぞ……俺は絶対……てめェを殺……す……」
「悪足掻きを」
言い終わらないうちに、手よりも太めの足が、背中に、腹に、ヒットする。
「ぐあっ! ……が、あああっ」
「所詮子どもよ。歯向かいさえしなければその命――永らえられたものを」
「……くそっ……」
手足がガクガクと震える。本当にまずいかもしれない。立ち上がることができない……!
「たった一人で俺の命を殺りに来た勇気に免じて、とどめは総統様に刺してもらおう――リテアルフィ様」
「呼んだかい?」
オレンジの炎に包まれて、少年が姿を見せる。
「……てめェが……リテアルフィ……この都市の、総統か……!」
「そう。元気がいいね、……キミのような人についこないだも出会ったばかりさ。じっとしてて、苦しまないように、とどめを刺してあげる……」
手のひらに炎が生まれる。だが、ディルは、動けない。
「……やめ……ろ……」
「聞こえないね」
「やめろっ、」
「聞こえない」
「やめろっつってんだろ」
澄んだ声が響いた。壊れた扉のところに、しゃんと立つ三つの影――
「誰だっ! あっ、貴様ら、……」
「さすがに自分がモーションかけた相手は覚えてやがるんだな」
皮肉っぽく、つぶやく。
その声に、ディルは聞き覚えがあった。
「ヒロキ……!」
「おうよ。三人揃ってっぜ」
「イズ……ル。サツキ、逃げろ、お前たちも……やられる……」
五月が一歩だけ進み出る。
「心配してくれるのはとても嬉しいんだけど」
「もう、抜き差しなりませんね」
「それに、許せねェよ」
言いながら、三人は、手の甲の布をはぎ取った。鮮やかなエンブレム!
「そのエンブレムは……で……【伝説の勇士】!」
驚いた執政官が後ずさった。
「な……ヒロキ!? ヒロキたちがまさか……!」
博希はちょっとディルの方を見やってから、少し笑って、言った。
「いくぜっ、レジェンドプロテクター・チェンジ!」
「勇猛邁進・鎧冑変化!」
「ヨロイヨデロー!」
光が、三人を、包んだ――――!




