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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Fourth World―  老舗の寿司屋は冷戦中につき休業中?
81/197

Chapter:81 「……そんな気がするだけさ」

 ドヤドヤと――今度は男性が多かった――兵隊がやってくる。

「登録はしたのか?」

「ああ、しっかり」

 さっき出流が署名した台帳を掲げて、門番はそう言った。

「! ……ということは、」

 出流は聞こえないようにつぶやいた。

 そして、自分が、多分してはならないであろうことをしてしまったことに気がついた。


 書くんじゃなかった。


 あの台帳に書き込みをしてしまった時から、村に入ろうという意思があるものとみなされてしまった。ということはあの名前を消さない限り、ここから逃げられはしないのだ。

「滞在税を払う気がない――ということは踏み倒しだな。わが村で滞在税を払わぬのは大罪となる。今払う、というのならまだ受け入れの余地はあるが、如何」

「払えません」

 出流は冷たく、しかし静かに、そう告げた。それは博希も五月も同じ意見だった。

 状況によっては鎧装着だな、と博希が考えた瞬間、門番がいやらしく口をゆがめて笑った。

「……そうか。ではこいつらを輸送しろ! ちょうど三人分の空きができたところだ。……貴様ら、後悔するぞ……三千コルーごとき払っておけばよかった、とな」

 三人は無理やりに手枷をはめられ、馬のような生きものが引く車に押し込まれた。

「何しやがるっ」

「ずいぶんと乱暴なことをなさるんですね、これからどこへ連れて行ってくださるおつもりです?」

「ぼくそろそろ眠い」

 三人はやや落ち着いていた。それは前の都市でこういったことにすっかり慣れっこになってしまったせいであったし、ここでヘタに暴れてもなにもならないということを、前回の経験から十分わかっていたからである。



 ガタンガタンと、安定感のない車が揺れる。揺れに五月がうとうとしかけた頃、車は止まった。

 一緒についてきた兵士は黙って、三人を鉄の門の前まで引っ張っていった。

「村にしてはやたら立派ですね。ここはなんなんです?」

「行けばわかる。せいぜいしっかり働くのだな」

「働くだあ?」

「それが滞在税を払わなかった貴様らに与えられる罰だ」

「罰って。ぼくらなにもしてないのに」

「黙れ! 逃げようなどとは考えるな。逃げれば――生きては帰れぬぞ」

 その言葉にはかなりの本気が入っていた。これまでに逃げようとして生きてここを出られなかった者でもいるというのか。

「ずいぶんご大層なことを言いやがるな。行きゃぁわかるんだろっ!」

 博希はそう言って、鉄の扉を、鉄なのに、蹴破ろうとした。

「わあっ、博希サン!」

 出流が無茶な博希を止めにかかろうとした時、鉄の扉は自然に開いた。

「…………!?」

「なあに、あれ……」

「でけェ」

 大きな建物を建築中の男衆が、ざっと見ただけでも五十人余りはいる。それから、地上で土くれを運ぶ男衆が百人近く。

「執政官様のお屋敷だ」

「あれが!? 今造ってるのが? お城みたい!」

「お前たちには追って仕事が言いつけられるだろう。せいぜい滞在税分が溜まるまで頑張って働け」

 その言葉と、はずされた手枷を残して、扉は閉められた。

「……こりゃ多分、滞在税とかそんなもん関係ねぇぞ」

「ないでしょうね。きっと死ぬまで働かす気です」

「そんなあ」

 その時、遠くから、声がした。

「新しい奴隷は貴様らか!」

「奴隷だと!?」

「ドレイって……ぼくたち?」

「間違いなく僕らのことでしょうねえ……」

 三人はため息をついた。その声の主は、やたら大きな身体をゆさゆさと揺らしながら、彼らの前に、近づいてきた。



 地上でツルハシを振るう男たちが、そんな博希たちの様子を見ていた。

「……また新入りか?」

「そうらしい。今度はいつまでもつと思う? 俺は一か月だ。お前は?」

「……一週間……かな」

「一週間? 短いな」

「もっと短くしてもいいぜ?」

「なんだ、自信でもあるのか、ディル」

「……そんな気がするだけさ」

 ディル、と呼ばれた人物は、そうつぶやいて、笑った。

 ツルハシが、ガシン、と音を立てて、岩の中に沈んだ。

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