Chapter:80 「焼き肉が何人前食えると思ってんだ!!」
スカフィードは窓を開けてフォルシーの名を呼んだ。どこにいてもスカフィードの声は聞き取れるのだろうか、ほどなくフォルシーは飛んでやってきた。
『お久し振りです、勇士様方』
「おぅ、久し振り。オレンジファイまで頼むぜ!」
『承知しました、お乗りになってください』
フォルシーは三人を背中に乗せると、ゆっくりと飛び上がった。
「オレンジファイってさ、どういう都市なの?」
五月はフォルシーの背中で、無邪気にそう聞いた。
『もともとは商業で栄えた都市でしたが――』
「今はどうなってる?」
『総統リテアルフィの恐怖政治で、商業のシの字もありません。聞いた話ではありますが、税金徴収がひどいようです』
「税金徴収」
あの時対峙しただけでは、リテアルフィという人間の極悪性は知れたものの、都市に対する政策まではわからなかった。税金徴収とはずいぶんとリアルな話である。
『……ああ、見えてきましたよ。ファイループの村です』
その村は――というか、空から見たところの都市・オレンジファイそのものは、なんだか今までの所よりも広いようなイメージがあった。さすがかつては商業で栄えていた都市である。
「ありがとうございました。あとは僕らで村に入ります」
『承知しました。どうぞお気をつけて』
三人はかわるがわるフォルシーの柔らかい毛を撫でた。
フォルシーは気持ちよさそうに目を閉じたあと、『ご武運を』と言って戻っていった。
前回のことがあるので、村の入り口には少し警戒したが、屈強な人物がいるわけでもないし、大きな門が村を閉ざしているわけでもなかった。
三人は門まで近づくと、門番らしき人物に、自分たちが旅の者であることを伝えた。
が、門番は、すぐに台帳のようなものを差し出した。
「何です?」
「ここに年齢と名前、それから性別と、滞在予定日数を書くように」
門でそんなことをさせられるのは初めてのことだった。だが求められれば仕方がない。出流は素直に、三人分の年齢と名前、それから性別を書いた。
「……ここに何日いますかね?」
「そうさなぁ……状況によっちゃ滞在期間なんかどれだけ延びるかわかんねぇからな。とりあえず三日くらいにしとけ三日」
「そうですね」
出流はそれぞれ【三日】と書いて、台帳を門番に返した。
「……ふむ。二千歳代が三名、三日滞在……か。では一人当たり三千コルー払ってもらおう」
「三千コルー!? 通行税にしては高くありませんか?」
コルー、とは、コスポルーダの通貨である。三人はいつもスカフィードから路銀として、現金を一人当たり千コルーもらっている。だいたい一泊二食つきの宿が百コルー、一食平均が五から十コルーである。
「滞在税だ。それがこの村の取り決めだ。払うのか、払わないのか?」
「そういうのボッタクリっていうんだぜ、三千コルーなんて、焼き肉が何人前食えると思ってんだ!!」
「だから払うのか払わないのか!?」
門番は怒鳴りつけるようにして再度言った。
「……どうします、博希サン」
「誰が払うか。だいたいそんな金あんのか出流」
「ありません。三人分足してやっと三千コルーになるくらいなのに」
「というわけです。ごめんなさい」
五月はペコリ、と頭を下げた。だがそれにほだされるほど門番は甘くなかったらしい。やっぱりいつかと同じように、ホラ貝のようなものが吹かれた。
プオ――――!
「またかぁっ!?」
「……今度はなんだと思う? イーくん」
「……さあ……」
もう僕には想像もつきません。出流は頭を抱えてため息をついた後、その言葉を飲み込んで、五月をかばうように後ろにやった。




