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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Fourth World―  老舗の寿司屋は冷戦中につき休業中?
73/197

Chapter:73 「……存分に見せてあげようね……!」

 道の向こうが揺らいで、よく見えない。

 リテアルフィを捜す博希と五月はまるで犬のようにべろーんと舌を出してはあはあ言っている。

 出流は辛うじてそれを堪えているだけで、彼も今、暑くてたまらない。

「いったい……気温は……どのくらいあるんでしょうね……」

「ヤベ、くらくらするぜ……」

「お水……お水、ほし……」

 五月がふいにフラッ、と出流にもたれてきた。

「うわっ、五月サンッ。大丈夫ですか!?」

「イーく……ん。おみ…………ず…………」

 顔は真っ赤である。五月は出流の腕の中にドサリと倒れ込み、そのまま気を失った。

「五月っ!」

「博希サン、どこか、涼しいところへ――」

 ふたりは近くの公園まで五月を抱えるようにして歩いた。

 休憩所に五月を寝かせて服をゆるめてやる。

「五月サン。五月サン、わかりますか?」

 ごく軽く、ペチペチと頬を叩く。本当に意識がなくなったら大変である。

「……ん……ん」

 真っ赤な顔のまま、五月はむずかった。はあ、と、苦しそうな息がもれる。

「五月サン」

「……イーくん……ぼく……」

「暑さで気を失ったんですよ、大丈夫ですか?」

「ん」

「よかった、じゃあ身体から力を抜いて、ゆっくりなさい。水を汲んできます」

 出流はそう言って水飲み場へ駆けた。タオルを蛇口に当てると、勢いよくひねる。

 だが。

「……え!?」

 水は出てこなかった。まさか、涸れた……!?

「博希サンッ、……」

 博希に向かって叫んだ瞬間。出流の手の甲に、鋭い痛みが走った。

「づあっ……」

 何が起こったかはわかった。が、暑さのせいか、感じたのはその熱さよりも痛みのほうが先で、しばらくは動けなかった。

「エ……ンブレム……!」

 出流は二人のもとへ走り、水が出なかった、ということを口早に話すと、エンブレムを見せた。

 博希も同じようにエンブレムを見せる。

 五月も果てしなく弱々しい動きで、それに倣った。

「いますね。この近くに」

「ああ」

 だが、いま、五月を戦わせる訳にはいかない。自分たちでさえ頭がクラクラしているのに、実際倒れてしまった五月を鎧装着させ、なおかつ戦わせるというのはあまりにも酷というものである。

「……ぼくは大丈夫だから……ヒロくんもイーくんも、リテアルフィを捜して……」

 蚊の鳴くような声で五月がつぶやいた。

「でも、五月サン……!」

 言いかけた出流を、博希は手で制する。

「いや、出流。ここは俺たちだけで、行こう。ここでこのまま三人まとまってちゃ、どうにもならねェ」

 博希の、こういう時の判断力と決断力は正しい、ということを出流は知っているから、それ以上の反論をしなかった。

「金持ってっか、出流」

「え? ……ええ」

 出流はポケットから財布を出した。

 それをひったくるように手にすると、博希はだっと駆け出す。

「ちょッ、博希サンッ!?」

 出流が止める間もなく、博希は財布から札と小銭を出し、目の前に見えていた自動販売機でがちゃんがちゃんと飲料を買った。

「えっ……」

 博希の手は止まらない。あっという間に、五月の枕元には十数本の麦茶とスポーツドリンクがずらっと並んだ。

「これ飲め、五月! なんなら身体も冷やしてくれるだろ!」

 博希サンにしては気の利くことだ、と出流は一瞬感心して、なくなった自分の財布の中身を思った。

 だが人命にも関わることだ。この際どうこうは言うまい。

「行くぞ、出流っ!」

「はいっ! 五月サン、ここを動かないでくださいね!」

 五月は麦茶の一本を手にすると、しっかりとうなずいて意思を表した。

 ふたりはそのまま、街の中へ駆け出していった。



 熱い空の上、ふうわりとした笑みをもらして、少年はくるりと回った。

「やっと来たんだねぇ。待ったよ……【伝説の勇士】。どれだけ楽しませてくれるのかなァ……?」

 両の手にオレンジ色の炎が生まれる。

「ボクの【魔法】……存分に見せてあげようね……!」

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