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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Third World―  男と女のイロハニホヘト
70/197

Chapter:70 「博希サンがそう思うなら」

 フォルシーの背中に乗りながら、三人は情報を補い合った。

「結局、ファンフィーヌは過去に縛られていたんですね」

「だけど、俺にはどうしても解らねぇ。捨てられたのに――なのにファンフィーヌは、レドルアビデを愛して――」

「……ああ……」

 出流はいつの間にかフォルシーの羽毛にくるまれて眠ってしまった五月を少し見やると、フーッ……と、大きな息を吐いて、言った。

「封印したつもりでも、彼女にとっては、捨てられなく、忘れることのできない【過去】であったということでしょう。あるいは――」

「あるいは?」

「自分がレドルアビデを愛している、その事実のみが、彼女にとって支えだったのかもしれません」

「……」

 博希は風の中で目を閉じた。

 紫色の、やわらかい雨が降り出した。

 フォルシーがルピーダの村に着いたのは、もう夕方近かった。

「おぬしら!」

 ルピーダが早足で歩み寄る。声相応に老いている、という印象を、出流はやっと受けることができた。

「【呪】が、解けたんですね……ああ、博希サン。こちらがルピーダです」

「あ、何か俺、助けてもらったらしいな。ありがとよ」

「なに構わぬわ。それより、……ファンフィーヌはどうした」

 出流は少しだけ、躊躇したが、言った。

「自ら、ライフクリスタルを割り砕いた……そうです……」

「――自ら」

 ルピーダは空を見上げた。


  哀しい女……だった……のう。


 博希はルピーダのそんなつぶやきを、聞いた。身体が、震えた。

「これから、どうするつもりじゃ」

「……ああ。次の都市へ、向かいます。もう、この都市に僕らがいる理由は……ないのですから。あとは、ルピーダ、あなたの仕事です。どうか、この村を、平和な村に」

「解っておるよ。おぬしらには感謝の言葉しかない。――ただ、この村を出て行くのなら、もう一度、あやつの体を診察させてはくれぬか」

「博希サンのですか」

「それが医者としての役目よ」

 二人は、個室で向かい合って座った。

「俺の体をマユでおっかぶせたんだってな」

「……だが、おぬしを救ったのは、ワシではない」

「どういう意味だよ?」

 ルピーダは博希の腹と背中を、そのシワの浮かぶ手でなでながら、言った。

「おぬしの【勇士のエンブレム】が救ったのだ。あの二人のエンブレムも、おぬしのエンブレムに呼応しておったよ――」

「ほー、エンブレムがね」

「……ふむ、本当にもう異常はないようじゃの。気をつけて行くがよいわ」

「そっか。サンキューな」

 博希はシャツを下ろしてしまうと、ルピーダに笑顔を見せた。

「おぬしらの力は未知数じゃ。何しろ、このワシの魔法を上回った能力は初めて見たわい。――その力、誰かに狙われてもおかしくはない。ことに、レドルアビデにのう」

「! ……レドルアビデがなんで」

「奴の力も完全ではないと聞く。気をつけることじゃの」

「……ああ」

 個室を出た博希は、なんともねぇってさ、と、出流と五月に伝えた。それを聞いて二人ともホッとする。

「あ、そうだ。ルピーダ。この女の子――知らねぇか?」

 博希がルピーダに沙織の写真を見せた。

「捜し人か? 見ぬ顔だのう……」

「そうか……」

「すまぬの」

「あんたが謝るこたぁねェよ。ここで見つからないなら、次で捜すさ」

 博希はそう言って、また、笑った。

「世話んなったな」

「いや。災難だったのう」

「いいえ。……だけれど本当に、どうか、ルピーダ」

「解っておるよ。ワシの目の黒いうちは、この都市を潰しはせぬわ」

「おねがいね? でないとね、ヒロくんとイーくんがまた女の子にならなくっちゃいけないから」

「五月サン!」

 四人は笑いながら、別れた。



「あのさ」

「何です」

 博希がなにか深刻な顔で出流に話しかけた。歩きだしてしばらくのことである。

「……俺、熱でうなされてるときに……沙織の声……聞いた気がするんだ」

「沙織サンの?」

 博希は空を見た。

「それだけじゃなくってさ。沙織が、俺の力になってくれたような気がする」

「力に」

「あれは、夢……だったのかな? それとも」

 出流も空を見た。雨は上がっていた。青かった。

「さあ」

 そう言って、彼は、ニッコリ笑った。

「博希サンがそう思うなら、そうなんじゃないんですか」

「そっか。そうだよな」

 三人は、次の都市に向かうのだった。

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