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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Third World―  男と女のイロハニホヘト
69/197

Chapter:69 「……嘘つきね……」

 博希が鎧装着した瞬間、周りの鏡が、音を立てて、割れた。

「おわあ!?」

 博希は本気で驚きながらも、五月と出流に鏡のかけらが当たらないようにかばう。

 二階部分にファンフィーヌはいた。博希を見下ろす形で、彼女はただただうろたえていた。

「――お前が、ファンフィーヌか」

「そんな……鎧装着した!? 私の魔法が勝手に解けるわけが――」

 瞬間、ファンフィーヌの頭の中を、一つの予感がかすめた。彼女は自分の手の中にあった博希の砂時計を、見た。

「――――!」

 博希の砂時計の中にあった砂は、黒ずんでいた。五月と出流の砂時計の色とは、明らかに異質なものだった。彼らの砂時計の色は、鮮やかな紫色だというのに――

 ウォーレイドの村人たち。五月。出流。そして博希――量産しすぎた砂時計が、ファンフィーヌの魔力を弱めたことは明白であった。

「……魔法も……無限ではなかったということ……」

「――なんだって?」

「ならば私は……最初から捨て駒だったのね……」

 博希はそのつぶやきを聞き逃さなかった。

「お前……今なんて言った!?」

 だが彼がファンフィーヌに駆け寄ってその言葉の意味について問いただす前に、彼女は、首輪を自ら外し、それを床に叩きつけて、割り砕いた――――

「ファン…………!!」

 博希は絶句した。首輪にはライフクリスタルが埋め込んであるはず!

 ゆるやかに、二階から身体を投げるファンフィーヌ。

 博希は走った。さらさらと砂を舞わせながら、彼女の身体が落ちていく。

 彼の腕の中に、四肢を失ったファンフィーヌの身体がおさまった。

「……触れないで……」

「え……?」

「男に触れられたくはないの――」

 彼女の【過去】を、鏡を通してわずかながらでも見た博希は、思わず手を放す。指の間からさらさらと砂がこぼれた。

「バカだわね、私……あの方に捨てられてからも、部下として仕えて――」

「……何のために……」

 博希の口から、やっと、その言葉だけが出た。

「あの方が私よりも愛している、【エヴィーアの花】の、生け贄のため……」

「…………!」

「あの花は人を肥料にしなくては生きられないものね――――」

 いままでの村で【居なくなった】人々のゆくさきを、博希はそれで思い知った。

 後ろで、わずかにむずかる声がする。博希が慌てて振り返ると、それは、現在に戻りつつある、出流と五月だった。

「……私も、変わらないって思えたら……良かったのにね……」

 そう言ってファンフィーヌは柔らかく笑った。博希は何かを言いかけて、やめた。

「ね……こんなになっても……まだ、あの方のこと……愛してるって言ったら……笑う……?」

「………………」

 博希は泣きたいような、困ったような、どうしたらいいのか解らない、そんな微妙な表情になったが、迷いはなかった。

「笑わない……よ」

 ざらっ。

「……嘘つきね……」

 ファンフィーヌはまた、柔らかく――笑った。

 そして、彼女は、完全に、砂になった。

「…………」

 博希はそれっきり、黙って、何も言わなくなった。

「――――博希サン」

 【現在】に戻った出流と五月が、博希の後ろに立っていた。

「……こんな終わり方しかなかったのかよ……」

「え……」

「……【変わる】ってのは、そんなにいけないことかよ。俺も、出流たちも、同じじゃないか。ちっとも違わないじゃないか……」

 博希は座ったままだった。五月が、ファンフィーヌの砂に、少しだけ、手をふれて、言った。

「あったかいね」

 博希の肩が、震えた。出流は五月の肩に手を置き、うなだれる博希を見た。

 その時――城が、小刻みに震えだした。三人はそれで、この城がほどなく崩れてしまうのを悟った。だが、博希は、首を垂れたまま、動かなかった。

「博希サン、行かなくては――」

「…………ああ」

 答えのみがぼんやりと返ってきた。

「ヒロくん」

 がらり、と、壁の崩れる音。

「博希サンっ! このままだと瓦礫の下敷きになりますよ!!」

 それでも彼は立ち上がらなかった。出流は少し、舌打ちすると、博希を無理やり立たせて、引きずった。

「五月サン、フォルシーを呼んで下さい!」

 五月の目の前に天井が落ちてくる。だが五月は、落ちてきた天井を紙一重でかわし、思い切り、笛を吹いた!

『勇士様!』

 城の入り口で待っていたフォルシーが来るのは、早かった。三人の、特に博希の様子にやや首をかしげながらも、フォルシーは三人を乗せて、城から緊急脱出を果たした。

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