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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Third World―  男と女のイロハニホヘト
68/197

Chapter:68 「俺は……負けねェ……」

 水面はいつものように、静かにたゆたっていた。

 支配者は、そばに控えていた影に、語りかけるように言った。

「――勇士どもに手助けをしてやれ。カタは早めにつけた方がよかろう」

「あなたがどうされたいのか――私には解りかねます」

「お前が知る必要はない」

「……承知。急ぎ、勇士たちのもとへ飛びまする」

「すぐ、戻ってこい。重要な使命が残っているからな、リオール」

「は」

 死んだようだがわずかな生気の見え隠れする瞳が、静かにうなずいた。

 その会話を聞いていたもうひとつの影が、慌てたように飛び出す。

「レドルアビデ様! 本当によろしいので!? 自分は今度こそ、あやつら、倒されるものと……」

「倒される? つまらぬことを言う」

 牙が鈍く光った。奇妙な微笑みがもれる……

「デストダ、オレンジファイへ飛べ。リテアルフィを呼ぶのだ」

「リテアルフィ様を……!?」

「これで勇士たちがどう出るかな……行け!」

 影はいつの間にかいなくなった。黒い翼をゆらしながら、支配者はたゆたう水面を再度見つめ、やがて、その画面を消した。

「所詮はコマよ、ファンフィーヌ……」



 カタン――――――

 砂時計のひっくり返る音が、博希の耳にもう一度届いた。

「なんだこりゃ……」

 鏡に映る、ファンフィーヌ。それは博希の知らない、過去の彼女の姿だった。

「……こんなもん、俺に見せて、どうしようっていうんだよ!」

「私が自ら封じ込めた【過去】の苦しみを――そのまま、あなたに思い知らせてあげるわ!」

「なにっ、……うぐあああああっ!?」

 博希はその場でのたうち回った。肺の中……? それとも、心臓……? 胸の辺りが……焼けるように……熱い…!!

「これが、お前の、苦しみ、なのか……?」

「私がどれだけ苦しんだか――私がどれだけ、辛かったか! その胸の焼けるような痛みが教えてくれるわ、そして、あなたたちは苦しんで死ぬの……!」

「……!? じゃあ、五月たちも……死ぬ、のか……」

「それが、私の、【呪】。ウォーレイドにはびこる【呪】と、一緒……」

 そう言って、ファンフィーヌはホホホホ、と笑った。しかしどこか悲しそうな笑いのように、博希には感じられた。

「……っぐ、う……」

「おいーちゃん。おいーちゃあん」

「ぶう、あうぶ……んむ」

 倒れてのたうち回る博希の頬や髪を、五月と出流が撫でた。博希はそのかわいらしい手で癒されるような気がしたが、苦しさは一向に治まらなかった。

「……出流……、五……月……」


  お前らはいつでも、俺をそうして暖めてくれる。

  だから俺は――きっとそのままでいられた――


「俺は……負けねェ……」

「おいーちゃあん」

「あぶ、ぶう……」

 五月と出流を守りながら、博希は這いずった。

 こんなところで倒れるわけにはいかない、と思ってはいるが、【過去】に戻っている今、鎧装着のキーワードも思い出せず、逆転の一手も見いだせないまま、彼は袋小路に陥っていた。

 そのときだった。澄んだつぶやきが鏡の林に響き渡った。

「…………ジ」

「あ?」

「レジェンドプロテクター・チェンジ……唱えろ、【伝説の勇士】。お前が忘れた、その言葉を。現在に、戻れ」

「【伝説の勇士】……?」

 博希は上を見た。微妙な影が、彼の頭上に現れて消えた。

 ファンフィーヌが警戒して、無礼な不法侵入者に叫びかける。

「誰!? あなたも私の【魔法】の餌食になりたいというわけね……!」

「それだけは勘弁させてもらう」

 くすり、と、笑み。

 現在に戻れ――その言葉の意味するところを、【過去】の博希ははかりかねた。

 だが、ささやく言葉から、彼はなんらかの、不思議な力を感じていた。

「早く唱えろ! 【伝説の勇士】!」

「れ……レジェンドプロテクター・チェンジ!」

 瞬間だった。左手の甲が、周りの鏡よりもまぶしく輝いた。

「おおおあっ」

 体が――震える!



「役目は、終わった」

 リオールは微笑みを残し、そのまま、去った。

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