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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Third World―  男と女のイロハニホヘト
66/197

Chapter:66 「時よ――遡れ」

 宿屋を出てすぐに、五月が出流に提案した。

「イーくん、フォルシーを呼ぼうよっ。フォルシーに連れて行ってもらうんだっ」

 五月は胸から下げた笛を、思い切り吹いた。すぐに、遠くから黒いものが飛んで来る。それが段々大きくなって――

『お待たせしました。……おや、もうお一方は?』

 ちょいと首をかしげるフォルシー。五月はもう羽毛に顔をうずめている。出流はフォルシーに飛び乗りながら、言った。

「ファンフィーヌの【呪】にかけられました。彼女の居城へ急いでください!」

 翼がバサリと舞った。二人は少しばかり強い風を全身に浴びながら、鎧装着した。

『あれが、ファンフィーヌの城です』

「あ、そうだ。あのね、フォルシー、ヒロくんの所についててあげてくれる? ヒロくんが目を覚ますかもしれないし」

『承知しました』

 フォルシーは言って、バサリと飛び立って行った。その背中を見送り、二人は扉を勢いよく開ける。 

 ――扉の向こうは真っ暗だった。五月が少し、おびえて、出流の腕をつかむ。

「大丈夫です」

 出流が五月の肩をぽんぽんと叩いて安心させたが、自身も、あまり平静ではいられなかった。その心に喝を入れるように、彼は、叫ぶ。

「いるんでしょう、ファンフィーヌ! 僕らが来ることは解っていたはずです!!」

 冷たい回廊の中、その一面の暗闇に、わずかな光が、チカリ、と、瞬いた。

「そう大声で怒鳴らなくても、私は、ここにいるわ」

 奇妙なエコーのかかった声。しかし、当然、その姿は見えない。

「姿を見せない卑怯な人が、僕は大嫌いなんですよ。もしそのままで戦われるつもりなら、絶対に容赦しませんからそのつもりで!!」

 それだけを言い切って、出流は暗闇の中、弓を構えた。

「明かりをつけてもつけなくても、あなたたちに得にはならないわよ」


   ビカッ!


 明るくなったのだと二人が理解するのに、しばらくは時間がかかった。明かりのあまりの強烈さに、瞬間、視力を奪われたのである。

「……っ、……」

 やがて目がその明るさに慣れてくると、彼らは改めて、そこを見回した。

「これは……!」

「これ、鏡? 鏡だよねえ、ぼくが映ってるよ」

 回廊の中には、縦横無尽に鏡が林立していた。頭の上で、静かに語りかけるような声がする。

「その鏡を見てごらんなさい。あなたが、見えるでしょう?」

「何を言ってらっしゃるんです。当然のことじゃないですか」

「ふうん。それは本当に――あなた?」

「当然で――、――!?」


  「時よ――遡れ。――トゥアイルディーズ」


 くすり、という笑い声とともに、その声が聞こえた。鏡の中に映っていたのは、

「――イーくん……これ……」

 出流たち二人には違いなかった。しかしその姿は、それぞれの記憶の底に残っているか残っていないかくらいの、幼少の頃のものだった。

「ファンフィーヌっ、あなた――何をしたんです!」

 出流と五月のずいぶん上から二人を見つめるファンフィーヌの手の中で、紫色の砂の入った砂時計が、くるり――と、ひっくり返された。

「この鏡は変わることのなかったあの時を封じ込めた鏡。あなたたちも【変わることのない過去】の中で、永遠の夢を見なさい!」

 下から突き上げるような激しい衝撃に飲み込まれる二人。それっきり、彼らの意識は、飛んだ。

 ひっくり返された砂時計を、ファンフィーヌは静かに目の前に置いた。



 村の宿屋で眠り続ける博希のエンブレムの輝きが、ますます強くなってきていた。その様子を見守るルピーダだったが、彼女は次の瞬間、とんでもないものを見ることになる。

「――――!?」

 シュウシュウという音とともに、博希をくるんでいた繭が、熱を含んで溶けていくかのように、消滅していったのである!

「ば、バカな、ワシの魔法が解け……!?」

「んあ――――」

 博希はすぐ目を覚ました。一番に目に入ったのは当然ながらルピーダだった。

「あんた誰?」

「ぬ、ワシは、……」

「あれ? 出流と五月はどこだ?」

 その時、フォルシーが部屋の中に入ってきた。

『勇士様!』

「おっ、フォルシー。どうした?」

『勇士様お二方が、ファンフィーヌのもとへ行かれました!』

「あぁ!? そっか、じゃ、俺も行くわ」

 ルピーダが、なんとかくちばしを挟んだ。

「待てい、おぬし、身体は……!」

「あ? 寝てたら楽ンなったよっ! フォルシー! 乗っけろっ!!」

『はいっ!!』

 あっという間に一人と一羽は高い空の向こうに飛んでいき、見えなくなった。

「急げ、フォルシー!!」

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