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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Third World―  男と女のイロハニホヘト
62/197

Chapter:62 「……無粋なマネをする」

「しらばくれる?」

「あなたはいつもそうなのですね」

 ファンフィーヌは、少しだけ――レドルアビデをにらむふうを見せた。

「パープルウォーの一村、ウォーアビスに、【伝説の勇士】が現れました」

「デストダから聞いている」

「あの村は男子禁制。その法に基づき、彼らを処刑しようとした際、何者かの邪魔が入りました」

 レドルアビデは髪をかき上げた。真っ赤な髪の毛が、わずかに、揺れた。

「邪魔をした者が誰であるかは――レドルアビデ様、あなたが一番、ご存じなのではないですか」

 レドルアビデはちらりとファンフィーヌを見やり、窓の外に目をやった。

「――邪魔をしたのが俺だと――そう、言ったら、お前はどうする」

「邪魔をしたのはあなた自身ではないでしょう。あなたの命を受けた、誰かが」

「たいした想像力だ」

「なぜ、そんなマネを」

「伝説の勇士たちを――生かしてみたくなったのよ」

「生かしてみたくなった……?」

「そういう理由では、不服か」

「そのために、各都市の総統が、もう二人まで砂となっています。それでも、勇士たちを野放しにしておくと」

 レドルアビデは、少しだけ、口をつぐんだ。そして、しばらくして、窓の外を見ながら、唇の両端に笑みを浮かべた。牙が鈍く光った。

「構わぬ。奴らの強さ、見せてもらおうではないか」

「!」

 ファンフィーヌは黙った。震えそうな瞳で、レドルアビデを見上げると、しっかりと見つめたまま、聞いた。

「では! ……ではもし私が、砂となっても――それは、あなたにとっては、勇士たちの強さの指針としてしか――感じられない、そういうこと、ですね?」

 レドルアビデはふっと、ファンフィーヌの瞳をのぞき込んだ。今何よりも彼女が欲していたのは、言葉だった。

「…………そう、だ」

 レドルアビデはただその一言だけを、ぼそりとつぶやいた。

「――私が、手を下さずとも、次の村が――ウォーレイドが下すかもしれませんわよ?」

「ふん。もしそうなったら――その時は、奴らに俺と戦うだけの【運】がなかっただけであろうよ」

「……そうですか……」

 ファンフィーヌは終始、レドルアビデに近づくことなく、また触れることもなく、静かに頭を垂れて、退出した。

 レドルアビデは窓の外の気配を認めた。

「いるのか」

 デストダが窓より入ってくる。

「聞いておりました」

「……無粋なマネをする」

 レドルアビデは少しだけ笑った。今日は機嫌がややよいらしい、と、デストダは彼の笑顔から悟ったが、それきりレドルアビデが無口になったので、これ以上、自分が何かを言っても仕方がない。彼は飛び立つことにした。



 シャワーを浴びてからしばらくして、博希の様子がおかしいことに、出流はさっきから気がついていた。何か考えごとでもしているのか、珍しいこともあるもんですね――そんなことを考えながら、彼は天井を見つめたままの博希に声をかけた。

「博希サン、朝ごはんですよ?」

「おう」

 食堂に向かい、無言で朝食を口にする三人だったが、ふと、博希がつぶやいた。

「男を人柱に立てて、平和になる村なんて、おかしいよな」

 出流は突然のことに驚きつつ、あたりに気を使ってそっと答える。

「まあ、それは……」

「――な、今日は一日、この村の探索やろうぜ。三方向に分かれりゃ、早いだろ」

 出流はついさっきまでそう言おうと思っていたのである。それを、今日に限って、博希が先に言った。なんだかタダゴトではないような気が、出流はした。

「いつになくマジメなこと言いますね」

 冷静にそう言ってのけたが、心の中は相当動揺している。博希はそんな出流の心を読み取ったのかどうなのか、ちょっとだけ胸を張って、言った。

「ハン、俺だってたまには、――――アレ?」

「ヒロくんっ!?」

 多分自分でも感覚がなかったに違いない。博希は不可思議な顔をしたまま、まるで棒のように倒れた。

「どうしました、博希サン!?」

「わからん……なんか、身体が、熱い……」

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