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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Third World―  男と女のイロハニホヘト
60/197

Chapter:60 「ヒトバシラヒトバシラヒトバシラ」

 五月がむずかる前に、三人は新しい村に辿り着いた。ここは前の村ほどに警備も厳しくなかった。むしろ、歓迎されたと言っても過言ではない。

「ようこそ、ウォーレイドへ」

 ウォーレイド。それが、この村の名らしかった。

「うあー、久しぶりにのんびりできるな」

 博希が宿屋のベッドに倒れ込む。

「んう――」

 五月が目をこすった。

「五月サン、寝るのでしたら着替えてからになさい。お風呂はいいですか?」

「うん……今日はもう……眠い」

 ずいぶんいろいろなことがありましたからねえ――出流はそう言って、少しだけ、笑った。五月が着替えたのを確認すると、倒れ込みそうな彼を、出流はベッドまで誘導した。

「おやすみ」

「おやすみなさい」

 ぽんぽんと布団を叩くと、五月はスヤスヤと眠った。

「俺も、もう寝るわ。シャワーは明日浴びる」

「そうですか」

 出流は自分だけ、軽くシャワーを浴びると、布団に潜り込んだ。

 三人は平和に眠った。

 平和に。



 ファンフィーヌの城では、あいも変わらず、窓越しの会話が続いていた。

「勇士に逃げられ、執政官はやられた。……ウォーアビスはもう、駄目ね?」

「はっ、すでに村民が独立を果たしておりますれば」

「お前がついていながら」

「……自分のことを信用なさっていなかったのではなかったのですか」

「ふうん……【読心】ね?」

「――!」

 内側の空気が、一瞬、攻撃的なものに変わる。

「信用していないのはお互い様ね。お前を昏倒させた者に、覚えはないの?」

「覚え……いきなり後ろからやられましたので、――なれど――」

 デストダはこの報告をしていいものかどうか、迷った。が、今、ファンフィーヌは自分の主である。この都市で起こったことを逐一報告するは自分の役目。

「あの気配、自分には覚えが――ホワイトキャッスルにて存在した気配と同じでございました」

「――――!?」

 空気が、また、変わった。が、今度は、攻撃的なものではない。どちらかというと、狼狽しているような、そんな空気。

 しばらく、ファンフィーヌ側から、音がしなかった。

「……ファンフィーヌ様? ――いかが、致します」

「お前の邪魔をした者については、私が直接に、レドルアビデ様に確認するわ。お前は――そうね、今、勇士たちはどこにいるの」

「今現在はウォーレイドに滞在している模様にございます」

「ウォーレイド……ですって? ……そう……執政官を呼びなさい!」

「御意」

 デストダはそのまま、飛び去った。部屋の中、ファンフィーヌは、一人、自分の身体を抱きしめて、細かくブルブルと震えた。


  なぜ。

  どうして――邪魔をしたの。

  そんなに私が――、


 ファンフィーヌはそのまま崩れた。首輪をギュッと握りしめると、そこから感じる暖かい流れを、彼女は全身で受け止めた。



 五月は夜中に目を覚ました。

「……ん」

 トイレは一人で行くんですよ、と、出流にクギをさされていたので、ベッドから起き上がると、トイレに向かった。

 その時、――五月は、隣の部屋のヒソヒソ声を耳でとらえた。

「……今度の【人柱】は明後日らしいわ」

「でも……男を人柱として捧げたら、この村は平和でいられるなんて……」

 扉の向こうで、女性らしき人物が二人ほど、一体何の話をしているのか、彼には解らなかった。


  【ヒトバシラ】って何だろう。

  明日、イーくんに聞いてみたら解るかな。


 五月はそっと、部屋に戻った。頭の中で、『ヒトバシラヒトバシラヒトバシラ』と唱えつつ。五月は布団にもぐって、定期的な寝息をたて始めた。

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