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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Third World―  男と女のイロハニホヘト
57/197

Chapter:57 「あーあ……」

 逃げた博希たちは、橋の下の小屋にこもった。

「とりあえず脱出には成功したな」

「ただ、このまま、ここにいるわけにもいかないでしょう」

「もう逃げたのバレちゃってるかもだしね」

「せめてなんとか隣村まで行けませんかね……ここよりマシかどうかは解りませんが」

 三人はうーんとうなって天井を見つめた。

「俺わりといい考えがあるんだけど」

「……博希サンの『いい考え』は良かった試しがありません」

「言う前からずいぶんなこと言ってくれるじゃねぇか」

「僕は女装なんて嫌ですからね」

「! ……」

 小屋の隅でいじけて座る博希を見ながら、五月は言った。

「でも、そうしないと、ここから出られないよね」

「それはそうなんですが……」

 女装などという未知の体験、すぐに決断するにははばかられた。しかし五月の言うとおり、男性であるだけで逮捕される現状ではそうするしかない。

 出流は今まで自分が離さなかった財布を出した。スカフィードから預かった、大切な旅費。

「五月サン。これで、女性服と、お化粧の道具を買ってきてください」

「うん。解った!」

 五月は財布をつかむと、そのまま、駆け出していった。



 デストダから「勇士たちが脱走した」という知らせを受けたファンフィーヌは、執政官が報告にあがるより先に彼女の屋敷へ足を踏み入れた。

「生け贄が逃げたそうね」

「ははっ……申し訳ありません」

 ファンフィーヌは冷たい瞳を執政官に向けた。

「で、それは彼らが自分で? それとも、誰かが故意に?」

「……後者、かと。見張り官が何者かに殴り倒されたという報告が上がっております」

「ふうん。……じゃあ、誰が……【伝説の勇士】はいまだ三人のはず……」

「奴ら……【伝説の勇士】で!?」

「ええ。だからなおさら、捕まえなくてはね。厳戒体制をひきなさい! 逃がしては駄目よ。その代わりどんなことをやっても構わないわ、もちろん、殺してもね」

「はっ……!」

 執政官の屋敷から出たファンフィーヌは、大きな木に声をかけた。

「いるんでしょう、デストダ?」

「はっ」

 姿を消したまま、返事だけをする。

「勇士どもを捜しなさい。執政官に手を貸すのです」

「承知……」

 ざ、と、影が動いた。



 五月が買ってきた服と化粧道具を目の前にして、出流は大きなため息をついた。

「ずいぶんと品数が多いようですが」

「カツラはヒロくんがいるかなって思ったの。お化粧、ちゃんとしないとバレるかもだし、いろいろ揃えちゃった」

 さっそく着替え始めて謎にテンションの高い博希を見ながら、出流は仕方ありませんねと五月の頭を撫でた。

 悪戦苦闘しながら着替えを終え、三人はそれぞれ、鏡を見ながら黙々と化粧を始めた。

 数分後、まず博希が「できたーっ」とおたけびを上げる。念のため彼の顔を見た出流は、瞬間、絶句した。

「ヒッ……」

 なにをどうすればそんな化粧になるのか。出流は五月に、絶対博希のほうを見るなと厳命するのだった。

 支度ができたが、一緒にいれば、バレてしまうかもしれない――という出流の提案で、三人は、村の門を目指してそれぞれバラバラに出ることにした。……博希の化粧が、どうやっても直せなかったせいも、ある。

 これを空から見ていたのがデストダである。

「奴らだ! ご丁寧にも女装などしおって……再逮捕させてやる! 覚悟しろよ……」

 五月に続いて、出流までが、村の中に溶け込むのに成功した。三人を捜す女戦士たちがうようよといたが、幸いにも、気づかれていないようだった。

 だが――

「ここに脱獄者がいるぞおおおお!! そっちにも一人!」

「!!」

 そんな叫びが聞こえ、女戦士たちが一斉に出流と五月を取り囲む。出流は慌てて振り返った。一体、誰が!? ――その時背中にぶつかった、布をまとった男が、ニヤリと笑った。

「! あなたは……」

 それがデストダである、ということが出流には知れた。彼は人知れず歯噛みする。

「久しぶりだな、【伝説の勇士】。……おっ……そこにもいるぞ!」

 多分博希の姿を認めてのことだろう、デストダは本当に嬉しそうに、叫んだ。かなり無防備に近づいてくる博希。デストダはそれを、まともに、見た。

「ウッ!!??」

 デストダは絶句したまま、泡をふいて倒れた。

「あーあ……」

 出流が誰に言うともなく声をあげる。

 鎧装着する前に、三人は女戦士たちに拘束されてしまった。

「な、何するんだよ!? 俺は女だぞ!!」

 村の中、さっぱり説得力がない叫びを、博希はひたすらに上げていた。

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