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窓の中のWILL―勇士様は高校生! 凸凹トリオが世界を救う―  作者: 担倉 刻
―Third World―  男と女のイロハニホヘト
55/197

Chapter:55 「【雄】でも男は男だと!」

 ホワイトキャッスルに、美しい影が滑り込んだ。鎧を着こんだ、それは女騎士のように見えた。一つに束ねた長い髪がふるんと揺れる。

「お呼びに」

「面白い趣向を――思いついた」

「趣向?」

「パープルウォー総統ファンフィーヌは――多分、【伝説の勇士】を殺すだろう。だが」

 唇の端が奇妙に歪んだ。

「上手く邪魔をしろ。とりあえずは生かしておけ」

「ではそのようにファンフィーヌに」

「言ってもつまらぬ」

 愉快そうに、そばの【花】を、撫でる。

「行け」

「は」

 去りかける女騎士の背に、白磁の肌を持つ支配者――レドルアビデは、言った。

「お前の名は――なんといったか、な」

「……くれないの騎士――リオールにございます」

 レドルアビデは、その言葉に何も返さず、ただ、満足そうに、笑った。

 ホワイトキャッスルの中に、カツン――と、ブーツ音が響いた。

「――成功、だ」



 ――出流は、小窓から差し込む朝の光を、まぶしそうに見た。

 いつの間にか眠っていたらしい。隣では五月が出流のコートまでかぶって、気持ち良さそうに眠っていた。彼は困ったように微笑すると、壁にもたれて、二人が目を覚ますのを待った。

 だがそれより早く、三人分の食事が運ばれてきた。具なしスープの中に、パンらしきモノの切れ端が浮かんでいる。

「ずいぶんな食事ですね」

「ツベコベ言うな」

 出流はスープ皿を受け取ってしまうと、僕らはこれからどうなるのでしょうか、と聞いてみた。食事を持ってきた見張り官は低く笑った。

「ほどなく処分が下るだろうよ」

「処分……どんな?」

「捧げ物になるのさ」

 それだけ言って嫌な笑い方をし、見張り官は檻の前からいなくなった。


  捧げ物? ――まさか。


 出流が息をのんだとき、五月が起きてきた。博希は起きそうにない。出流と五月は先に二人だけで食事を済ませることにした。

「冷めてる」

 スープを一口すすって、五月は心細げにつぶやいた。出流もスープを口にすると、そっと五月の肩を叩く。

「ひとまずは、博希サンが起きるまで待ちましょうね」

 五月はこくん、とうなずいて、すっかりふやけたパンを口の中でもくもくと噛んだ。



 長いマントをひるがえして、ファンフィーヌは城の窓から外を見ていた。執政官らしき風体の女性が、にやにやと嫌な笑みで彼女を見ていた。

「久しぶりの生け贄が、わが村の牢屋にて、拘置状態にございます。……どうされますか」

「どうせ、レドルアビデ様に捧げるものだわ。私が行って、何になるの?」

「それでは?」

「いつもの通りね。……好きにして構わないわ」

 微笑すら浮かべずに言い放つ。執政官は満足げに退出していった。

 直後、ファンフィーヌは窓の外に、一つの気配を認めた。

「デストダね?」

「は」

 室内に入りかけた影を、ファンフィーヌは、その華奢な体つきからは考えられないほどの、凄まじい怒鳴り声で、止めた。

「近づくことは許さないと言ったはずだわね。【雄】でも男は男だと!」

「……承知しております。なれど、自分は……」

「レドルアビデ様の命令で動いていようが関係なくてよ。近寄らないで」

「……は……」

 筋金入りだ。デストダはそうつぶやきたいのをこらえて、黙って、ファンフィーヌの言葉を待った。

「新しい生け贄がやって来たそうね」

「は……奴ら、【伝説の勇士】にございます。その気になれば今すぐにでも奴らを殺せるかと」

 デストダはいち早く、今回の事に関して手を打っていた。それもこれも、自分を『鳥で虫でカッパ』としか呼ばなかった失礼な勇士どもに一泡吹かせたかったわけだが、彼は、レドルアビデの企みについて、完全にノータッチだった。

「……レドルアビデ様の……ご本意は? ……」

「恐らく一網打尽」

「そう……。彼らがもし動いたら、行動に出ることにするわ。黙って捕まっているうちは――私は手を下さない。その前に執政官が手を下すかもね?」

「――では奴らに何らかの動きがありました時は、お伝えいたします」

「そうして」

「御意」

 デストダの気配が消えた。ファンフィーヌは一人、窓にもたれて、深い息をついた。

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