Chapter:51 「カクセイってヤツか……?」
あたり一面が輝きに支配され、一瞬、全員が視力を奪われる。
「なっ……何っ!?」
スイフルセントの叫び声が遠くで聞こえる。
気づけば、博希たちを縛っていた拘束がすっかり解けていた。
「……いったい……五月サンは……この力は……?」
「アレか……? カクセイってヤツか……?」
「意味わかって言ってますか?」
「いや」
博希がそう言ったとき、パアン! という尖った音がした。
「あああっ!」
光の中、スイフルセントがコントロールを失った紙ひこうきのように、くるくると回転しながら倒れる。彼女を追うように、破れた扇とライフクリスタルの欠片がこぼれて――――
「扇にライフクリスタルが……!」
博希と出流はその様子を呆然と見つめていた。
光が落ち着くとともに、五月の腕からソードがかき消える。
すべての力を使い果たしたかのように、五月はふらりと倒れかかった。
「危ないっ、五月サンっ」
出流がすぐに支えに行く。
「い……イーくん……?」
出流の腕の中で、五月は訳も分からず目をぱちくりさせていた。
五月は出流に支えられる。
「ぼく、どうしたの……? スイフルセントは……?」
「覚えていないのですか――――」
つい、と、出流の視線がスイフルセントのほうに向いた。スイフルセントの指先が、砂に変わりはじめていた。
三人はスイフルセントの側へ急ぐ。聞けるうちに、聞いておかなくては。
「……この都市の村の男性たちを……どうしたんですか。老若問わず奪うとは」
「うふふ。すべてね、レドルアビデ様への【献上品】にしたのよ」
ざらり――腕が崩れる。
「だから私を倒しても、永久に帰ってはこなくてよ。残念ながら無駄骨だったってことね」
スイフルセントが崩れながら高らかに笑うのを、五月はじっと見つめながら言った。
「ムダボネなんて――思わないよ」
その瞳は真剣だった。真剣に、スイフルセントを見つめていた。
「ふうん。それでもいいんじゃないの。いつかはあなたたちも、砂になる運命よ、私のようにね? ホホホホホ!」
足が崩れる――
「ぼくらは絶対、砂になんかならない! ぼくらは……ぼくらは!」
ギュッと、握り拳を固めて、五月は言った。出流は五月を支えながら、肩に優しく手を置くと、スイフルセントに向かい直す。
「僕らは負けるつもりはありませんし、ましてや倒されるつもりもありません。もし倒れるときがくるなら、それは、レドルアビデを倒した後です」
ニッ……と、スイフルセントは最後の笑みをもって、出流を見つめた。
「それは楽しみねえ」
本当に。どこまでやれるものかしら――スイフルセントはそれだけつぶやくと、すべてが砂に還った。
ざっ――と積もった砂に、少し手を触れて、五月はきゅっと唇をかむ。
その時だった。城が大きく揺れだした――――
「またかぁっ!?」
「脱出しますよっ!」
三人は急いで城から出る。直後、城は勢いよく崩れ落ちた。
「……い」
崩れた城を見つめ、五月がなにかしらをつぶやく。
「五月サン?」
「……やっぱり、いい気分はしない」
「……総統を、倒したこと――ですか」
五月はこくんとうなずいた。
「でも、やらなきゃいけない気はしてる。ぼくは絶対砂にはならないし、ヒロくんだってイーくんだって、砂になんかさせない」
博希はそれを聞いて、心底嬉しかった。もちろん出流も嬉しかったが、そんなことは言えない。ただ、博希が照れ隠しに、
「コノー、柄にもないコト言いやがって」
と、五月の頭を小突くのを、微笑ましく見ているだけだった。
長い夜が、明けた。




