表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/197

Chapter:48 「人の質問には答えるものですよ」

 スイフルセントの唇が、微笑を形作る。

「デストダ。【伝説の勇士】が動いたようね」

 彼女は【万里の水鏡】を見下ろしながら、くすくすと笑っている。デストダはいぶかしげに尋ねた。

「それで……」

「お誘いしてあげて? わが城へ」

「は!?」

「あら……不服?」

 瞳がきらっ、と光った。

 デストダは少しだけ、ぞくりとした。レドルアビデの見せる瞳に、似ていた。

「いえ、不服などということはありませんが、なぜ、そのような、」

「……レドルアビデ様の心は読めても、私の心は読めないというわけ?」

「えっ?!」

 読めないわけがない。何のためにもらった【読心】の魔法なのか。デストダはしかし、それきり黙って、ひざまずき続けた。

「お行き。時間がないわ」

「ははっ」

 デストダは飛び立った。

 スイフルセントは扇を広げて、くすくすと笑いながら、言った。

「理由なんて簡単よ。早く倒してあげたいじゃない、朝を待たずにね?」



 三人は街灯の下、ひそひそと話をしていた。

「どうする。まっすぐスイフルセントの城に行くか?」

「……でも、しょっぴかれた人たちがお屋敷にいるかもだし……」

 城ならば夜目にもはっきり見えている。三人が判断に迷ったその時だった。

「おい、【伝説の勇士】」

 声がして、闇夜に、すい、と、布がひらめく。声の主がまとっていたものだ、と三人が察するのに、時間はかからない。

「あっ」

 街灯に照らされたその姿に、五月が声を上げた。

「この人! ヴォルシガのお城にきた……」

「ふん、あの時の奴か。その通り、自分の名は……」

「鳥で虫でカッパの人!!」

 五月の半ばはしゃいだ大声が、夜の街に響き渡る。

「違うっ!! 自分は【鳥で虫でカッパ】などという回りくどい名前じゃない!!」

「あなたが次にスイフルセントに仕えるとおっしゃってた方ですか、鳥で虫でカッパの人」

「だから違う! 自分の名前はデストダ! レドルアビデ様の配下だっ!」

「……それで? なにしに来たんだお前?」

 戦うつもりとみた三人は素早くエンブレムを出した。しかし、デストダは冷たい瞳で言い放った。

「スイフルセント様が首を長くしてお待ちでいらっしゃる。お前らを早く倒したいとな」

「!」

 三人は遠くに高くそびえる城を見た。

「なんだそりゃ……挑戦状のつもりかよ」

「自分はスイフルセント様のご命令を遂行しているだけだ」

 デストダはそれだけ言うと、城の方角目指して飛び立った。

「お城、行っちゃう……?」

「ああまであからさまにご招待されているのなら、行くしかないでしょう」

 三人は鎧装着して、スイフルセントの城を目指し駆け出した。

 夜の闇に、足音だけが響く。

 忍び込むつもりでいたが、その必要はなくなった。彼らは城の入り口までたどり着き、その扉をぶち破って殴り込みをかけるつもりだった。

 だが――――

「あんたたちが【伝説の勇士】ね」

 城の正面に、女性が立っていた。スイフルセントではなかった。

「お前、誰だ」

「私? あなたたちがさっきまでいた村の執政官よ」

 博希は静かに武器を出し、剣を肩のところでトントンともてあそびながら、言った。

「へぇ。屋敷ほっといて、こんなところにいていいのかよ」

 五月と出流もそっと武器を出す。

 びりびりと空気が冷えていた。

「なるほどねえ、スイフルセント様のおっしゃる通り、美少年揃いだわね」

「人の質問には答えるものですよ」

「しょっぴいた人たちは、どうしたの。お屋敷にいるの?」

 クスリ、と、笑う唇。

「いいえ」

 彼女は少しだけ肩をすくめると、手からフヒュッ――と、何かを飛ばした。

 博希は反射的に、剣でそれを弾いた。金属的な音がした。

 再び、片手に何かを構える。そのわずかな光を、出流は見逃さない。

「針……?!」

「ヒロくん、アレたぶん危ない!」

「解ってる。俺たちはあんたがたの人形になるつもりはないぜ」

「残念だわ、三人ともとても好みなんだけど」

「男はオモチャじゃねぇぞ。村の男たちはどこだっ!」

「あら遅い。もう、とっくに、スイフルセント様に引き渡したわ」

「引き渡すとか好みとかって、なんかサイテーだあ」

「そう? 私は楽しいけれどね」

「どうせ、いらなくなったら捨てるのでしょう?」

 執政官は言葉に出さず、ただ、フッ、と、笑った。三人はそれで、執政官の返事を悟った。

「お前みたいなヤツが俺ァ一番嫌ェなんだ。男だろうが女だろうが、他人をもてあそんで喜んでるヤツがな」

 執政官が針を投げるのと同時に、三人も武器を構えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ