Chapter:45 「今度は俺も気がついた」
博希たちは、フォルシーの背中で、今までゆっくり見ることのできなかったコスポルーダの風景を楽しんでいた。
「あっ、あの道、ぼくらが最初に歩いた道じゃないかなあ」
「なんだ、じゃあもうちょっと近道があったんだなあ。上から見るとよく解らァ」
『グリーンライからイエローサンダまで歩いて旅をなさったと聞きましたが』
「ええ。最初は、スカフィードの家からはるばる歩いて」
『それは凄いですね! 最近はめったにその様なことはしないのに』
「……? じゃどうやって移動すんだ」
『まあ様々ですが――神官様などは自分のような鳥を移動手段にしたり――あとはほとんど車ですね』
「へえ、車があるの? ガソリンで動くの?」
『ガソリン? 何ですかそれは?』
「えっ? んーとね、……」
五月が説明できなくなって困ったところに、出流が言った。
「僕らの世界で、車に使われているエネルギーです。こちらでは違うんですね?」
『はい。【声】で動くようになっています』
「じゃあ、この世界の人たちって、みんな、【声】の魔法を持ってるんだ?」
『そうなりますね』
空は青く澄んでいた。
「フォルシー、イエローサンダはまだ見えない?」
『もうすぐです。スイフルセントの居城のお膝元まで、お送りしましょう』
「お膝元? ということは、城下町ですか?」
「じゃ、グリーンライのときみたいに、大きな村なんだね、きっと」
五月がワクワクする。
「だめですよ、お店を回るなら明日です」
博希までワクワクしだす前に、出流はクギを刺した。すでに、夕方頃となっている。
「ちぇっ」
「ヘタをしたら宿屋さえ探せなくなりますよ」
『では降ります。つかまって』
フォルシーは急降下し、石畳の上に足を落ち着けた。
「今日はここに泊まることになるかな。ありがとうフォルシー」
三人はいたわるように、フォルシーの羽毛をなでた。
『それでは、失礼します。よい旅を。頑張って下さいね』
「そっちも、気をつけて帰ってね」
『はい』
フォルシーは飛び立っていった。
博希たちは、フォルシーと別れた後、村の中心と思われる噴水のところで一休みしていた。
「えらく広くねぇか、ここよぉ」
「そうだね」
まだ夜になりきっていないせいか、石畳には足音が絶えない。多分今から家に帰るのだろう、と思われる母子や、買い物帰りのご婦人などが、忙しく行き交う。
「………………」
五月が、くん、と、出流のシャツを握って引っ張る。
「……気がつきましたか、やっぱり。五月サン」
「今度は俺も気がついた」
「でしょうねえ……」
三人を見る人々の目は、好奇にあふれていた。そう。三人は気がついていた。
この村にも、男がいない!
「スイフルセントのヤロ~~~~! そこまで美少年集めてぇかよ!!」
「でもさ、この村も、美少年ばっかりじゃなかったはずだよね。じゃあ、この村の他の男の人も、どこに行ったのか、調べなくちゃいけないよね」
「とりあえず宿を探しましょう。宿は結構、有力な情報が集まるものです。……この前みたいにね」
三人は村人に、宿屋の場所を聞いた。村には宿屋が一軒しかないということで、三人はそこに泊まることに決めた。
「ごめんください」
ドアを開けると、娘と婦人が立っていた。ちょっと床板がギシギシと音を立てるところがアンティークっぽくてよい。
「いらっしゃいませ。お疲れ様でした」
「部屋をお願いしたいのですが、空いてますか?」
「はい。記帳をどうぞ」




