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Chapter:42 「ウイルス、侵入――――」

 翌朝、テレビでは、相変わらず、昨日の【電気強奪犯】のニュースを流していた。

「…………」

 珍しく早起きした博希は適当にチャンネルを回した。局によっては、【説得(戦闘)】に当たった少年たちの正体を追跡するつもりであるとの報を流すところもあり、博希は、背筋が寒くなった。

 目の前の映像は、博希たちの姿を如実に映しているものではないが、もし次に誰かがコスポルーダからやってきたら――正体がバレることぐらい、覚悟して鎧装着しなくてはいけないかもしれない。映像的にカッコいいな、とは思えど、わざわざ正体を暴露して差し上げるほど、彼らは親切にできていないのである。

 新聞を開く。どこの局も、二時間の特番を組んでいる。

「うあ」

 顔を少ししかめて、それだけをつぶやくと、博希は朝食をかきこんだ。

 結局、街の電気は、出流が扇を打ち抜くことにより、大多数が街に戻った。スイフルセントに感電させられた人々の中にも、感電死した人はいないらしく、ひどい人でも、二、三日中には、退院が可能になるとのことだった。学校の生徒たちも、半数近くが病院に搬送されたが、即日退院で済んだ者がほとんどだったという。

 学校でも噂にはなっていたが、どうやら博希たちのことはバレていないようで、三人は胸をなでおろすのだった。



 怠惰な午前中の授業が終わって、昼休み。

 屋上で、五月はごろんと横になっている。小さな弁当箱は既にフロシキで包まれていた。

「ねぇ。お姫様、どう、なったかな」

「……皇姫マスカレッタですか……」

「ん。花にされたまま、助けにくる人を待ってるんだよ」

 博希が巻き寿司をもぐもぐとさせながら言う。

「……なぁんでコスポルーダ人は助けに行こうとしねぇんだろうな?」

「……!」

 出流は博希を見た。その言葉は、博希が無意識に放ったものであろうが、今の出流にとっては、ものすごく、大きな意味があるように思われた。

「そうだよね。自分たちのお姫様が、危ないのに。花になりそうなのに」

「…………」

「なぁ、やっぱり、今度の日曜日にでもコスポルーダ戻らねーか?」

 僕もそう言おうと思っていました、と出流は言った。そして続ける。

「恐らくですが、あちらとの時差は相当なもののはずです。こちらの1日があちらの半年くらいでしょう」

「じゃあ、日曜日までで二年くらい経っちゃう!?」

「そりゃヤベーな、んじゃ日曜は朝イチで集合な!?」

 うん。三人は拳をちょんと突き合わせて、決意を新たにするのだった。



 日曜日。朝の七時半を少し過ぎて五月がやってきたことで、三人は学校の温室前に勢揃いした。

 三人は、温室に入り、“ほころび”創出の【声】を発動させた。

「ホールディア!」

 目の前が、少しだけ、ゆがんで――“ほころび”が、できる。

「行くぞっ」

「現在時刻、午前七時四十五分ですっ」

「飛び込むよー!」

 三人は、“ほころび”をくぐっていった。



 ――そのとき一瞬だけ、温室が光った。

 それを職員室の窓から確認した安土宮は、職員室のカーテンを、カシャッ、と閉めた。

 彼は、一人、パソコンに向かった。

 カチッ――と、マウスをクリックする。

「…………」

 画面に、何か、奇妙な語が浮かんだ。

「ウイルス、侵入――――」

 ぽつりとつぶやく。

「ウイルスネーム――――【レドルアビデ】――――」


 唇の端に、ふっ……と、笑みが浮かんだ。

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