Chapter:40 「警察とマスコミが待ち構えてます!!」
出流は言葉を失った。ちゃんと、五月が戻ってきたときに、かけてあげる言葉を用意していたはずなのに、浮かんでくれないのである。今はただ、五月が戦列に戻ってきたことが、彼にとって嬉しくてたまらなかった。
「電撃を受け止めた――ですって……」
そういう【声】の使い方もあったのか、博希と出流は感心していた。電撃は五月の構えるソードに、蛇のように絡みついて渦を作っていた。
「――君が、スイフルセント?」
電撃を受け止めたまま、五月は聞いた。彼女は、少しだけ顔をしかめて、言った。
「ええ。――そうよ。あなたも、【伝説の勇士】なのね?」
「そうだよ」
五月は言葉少なに言って、スイフルセントを真っ直ぐに見た。ソードを力いっぱい振るって、電撃を彼女のほうへ飛ばし返す。
「この世界は、絶対に壊させないよ! そして、コスポルーダも!」
五月の飛ばした電撃は扇に受け止められてしまった。だが、ようやっと立ち上がれた博希と出流が、武器を持つ手に力をこめる。
「おうさ……五月の言うとおりだぜっ」
「僕らが、ここで負けるわけにはいきません! ――意気衝天!」
出流が素早く、スイフルセントの扇を狙って矢を放った。
「!」
矢は扇の真ん中を正確に貫く。バチバチと音がして舞い上がった扇は、黄色い光を放ちながらくるくると回転していた。
「わ……私の扇が……!」
スイフルセントの顔がとたんにひきつる。博希はこの機を逃さなかった。
「スクランブルデッド!」
博希のソードが、スイフルセントをまっすぐに狙う。彼女はすい、と宙を舞い、避けたつもりであったが、博希の動きはそれより一歩半ほど早かった。
ソードの切っ先が、スイフルセントの腹部をとらえた。
「ぐっ……!」
肉体にめり込む手ごたえが博希に伝わる。
「貫け!」
叫ぶ博希。だが、あと一歩届かない。スイフルセントは更に高く舞った。
「ホールディア……!」
スイフルセントが絶叫した瞬間、ふっ――と、博希たちは懐かしい風を感じた。
「あっ、“ほころび”だ!」
「まさか……」
スイフルセントは出流の言葉に、苦しい表情でふふう……っと、笑った。
「勝負はお預けね、【伝説の勇士】たち……!」
スイフルセントは、“ほころび”をくぐると、その姿を、消した。
「…………くっそおおお!!」
博希が叫んだ。
「ごめんね、ごめんね?」
五月がおろおろと出流を見る。
「ああ、大丈夫です。よく、頑張りましたね。五月サンは僕らのピンチに間に合ったじゃないですか」
五月に、少しの笑顔を見せる出流。くるくると回り続ける扇からは黄色い光がとめどもなく出続け、それぞれ、街の各地に戻っていった。
「吸い込んだ電気が……戻ってるのか?」
「よかったねぇ。これで、元に戻るねぇ」
五月がそう言うのを聞いて、出流は、あたりをハッと見回す。
「いけませんっ! 早く鎧装着を解いて! 警察とマスコミが待ち構えてます!!」
「あっ、そういえば、ラジオでずっと放送してたよ、ヒロくんたちのこと。身元がわかる人は申し出てくれって」
「お前、それで、どうしたんだ!?」
「大丈夫だよ、ぼくなんにも言ってないよ」
マスコミに取っ捕まったらまずい、ということを、三人とも、この時代に生きる高校生として、よくわかっている。ましてや、【電気強奪犯】と【話し合いという名の戦闘】をしていた張本人であることなどが解ればなおさら。
「どどどどどうする!?」
「まず鎧装着を解いて、それから、学校に戻るんです! 今なら、まだ、学校のみんなも感電したままでしょうから、その中に紛れ込んでおきましょう。そうすれば、少しはゴマカシがききます」
三人はとにかく、鎧装着を解いた。
「博希サン。こっちのビル群を使って、できるだけ回り道して、学校の屋上で気絶したフリをしていて下さい。五月サンはこっちです。僕はこっちから行きます。できるだけ、見つからないような道を行くんですよ」
「OK! じゃ、屋上で会おうな」
「うん」
「はいっ」
三人は、ビルとビルとの間を、まるで水溜まりを飛び越えるかのように、ぽんっ、ぽんっ、と、飛び越え、走っていった。
さすがにそこまでは誰も予想できなかったらしい。博希たちは誰にも見つかることなく、屋上で気絶したフリをすることに成功した。




