Chapter:35 「いい加減に目を覚ましなさい!!」
スイフルセントは空から、博希たちの街を見下ろしていた。
「ここがアイルッシュ。へえ、コスポルーダよりも大きいのね――」
彼女は自分の口を隠していた扇を、ぱちんとたたんだ。そして口から離すと、一気に、ばっ! と広げた。
「レドルアビデ様から頂いた【魔法】――アイルッシュ人よ、あなた方に、見せて差し上げるわ!」
チャイムはいつまで経っても鳴らなかった。それをいぶかしんだ出流がふと目を覚まして時計を見ると、すでに、午後の授業は始まっていた。
「わあ!?」
博希と五月はまだ眠っている。
おかしいですね、チャイムが聞こえないなんて――そこまで熟睡していたというのでしょうか――? 出流はそんなことを思ったが、学校のほうが騒がしいのを感じた。
今は授業中のはずであるのに、変な慌ただしさを感じる。
「博希サン。五月サン。起きて下さい。学校の様子がおかしいんですっ」
「あん?」
「えー?」
二人とも、目をこすりこすり、起きる。騒ぎは二人の耳にも届いた。
「別に――。学校中で体育の授業でもやってるんだろ」
「あー、なるほどー」
「そんなバカなことありますかっ。いい加減に目を覚ましなさい!!」
出流の怒鳴りで、博希と五月の目は完全に開いた。
「降りましょうっ。寝るのはそれからでも遅くありませんっ」
出流がとっとと屋上をあとにする。博希と五月も後に続いた。
教室では――生徒が全員、倒れていた。
「みんなっ?」
「どうしたのっ?!」
博希が思わず生徒の一人を抱え起こす。
「うああっ」
「どうしました!?」
「息はある。だけど――ビリビリするっ」
「あっ、この前、イエローサンダでぼくの背中に落ちたやつ! あれと同じ!?」
出流はそれで状況を察した。
「では――スイフルセントが活動を開始したということですか!?」
「!」
三人は学校の外へ出た。もう、午後の授業がどうとかいっている場合ではない。
「スイフルセントっ。どこにいるっ」
博希がわめく。それを、出流が抑えた。
「落ち着いて下さい博希サン! まだ気を失っていない人がいたらどうするんですっ」
「どうせどっかの銭湯の名前絶叫してるようにしか思われねぇよっ」
「そんなまさか……」
出流は呆れ果てたが、まあそう思ってくれるならそれでいいか、と思い直す。それよりも今は――
「街の方に行ってみますか? もしかしたらいらっしゃるかもしれませんよ――スイフルセントが!」
三人は街のほうへ走った。
その時――
「うあちっ」
「あづづっ」
博希と出流が左手を押さえる。
左手の甲が、熱い! 二人は、一瞬、それがなんであるのかに気がついて、手の甲を見た。
「エンブレム……!」
これで鎧装着できる。博希と出流は顔を見合わせて、うん、とうなずいたが、五月は――ふるふると――首を振った――。
「ぼく……エンブレムが……出てこない……」
「えっ……!?」




